データが名義尺度の時には、度数を利用した分散分析相当の手法を適用します。 やはりここでもデータに対応がない場合から説明しましょう。
表4.1のデータを120mmHg未満を「正常」、120mmHg以上を「異常」と分類して、対応のない分類データにしてみましょう。
| 群内No. | A剤投与群 | B剤投与群 | C剤投与群 |
|---|---|---|---|
| 1 | 正常 | 正常 | 正常 |
| 2 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 3 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 4 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 5 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 分類 | 正常 | 異常 | 計 |
|---|---|---|---|
| A剤投与群 | 1 | 4 | 5 |
| B剤投与群 | 5 | 0 | 5 |
| C剤投与群 | 5 | 0 | 5 |
| 計 | 11 | 4 | 15 |
表4.25は3群のデータを2種類に分類した「3×2分割表」ですので、3.4節で説明したχ2検定を適用して、理論度数と実現度数の食い違いを検討することができます。 そこでも説明しましたように、一般にm群のデータをn種類に分類した「m×n分割表」には「m×nのχ2検定」を適用し、次のよう検定します。
χo2は理論度数と実現度数の食い違いを要約する値であり、同時に分散分析における要因A(例題の場合は薬剤)の平方和SAに相当する値でもあります。 この場合の寄与率は、全例数をN、mとnのうち小さい方をsとすると次のようになります。 (注1) (→3.4 2標本の計数値)
| 寄与率R2= | χo2 ―――― N(s-1) |
有意水準5%として、表4.22の例題について実際に計算すると次のようになります。
m×nのχ2検定でもボンフェローニ型とシェッフェ型の多重比較を行うことができます。 ボンフェローニー形の多重比較を用いて例題について実際に計算すると、次のようになります。 (注2)
これらの結果に対する注意点も分散分析と同様で、A剤投与群の異常率が80%であるのに対して、B、C剤投与群の異常率が0%であるということが医学的にみても異常率が低いと評価できれば、
今度は表4.6のデータを120mmHg未満を「正常」、120mmHg以上を「異常」と分類して、対応のある分類データにしてみましょう。
| 人 | 投与前 | 投与1週後 | 投与2週後 |
|---|---|---|---|
| 1 | 正常 | 正常 | 正常 |
| 2 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 3 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 4 | 異常 | 正常 | 正常 |
| 5 | 異常 | 正常 | 正常 |
このデータは人を要因A、時期を要因Bとした2元配置分散分析と同じデータ構造をしていますので、人をブロック因子として個人差を誤差から取り除き、時期によって異常率が変動するかどうかを検定することができます。 その手法を「コックラン(Cochran)のQ検定」といい、表4.26のデータを順位が2つだけの順序分類データと考えてフリードマンの検定を適用したものに相当します。 コックランのQ検定では検定統計量Qを求めます。 この値はフリードマンの検定におけるχo2に相当し、次のようにして検定します。 (注3)
| 要因Bの寄与率RB2= | χo2 ――― φT |
この検定は順位が2つだけの時のフリードマンの検定に相当しますので、時期数が2つの時は、フリードマンの検定と同様に順位が2つだけの時のウィルコクソンの1標本検定つまりマクネマーの検定に相当し、χ2値の平方根がz値に対応します。 (→4.2 多標本の計数値 (注5))
有意水準5%として、表4.26の例題について実際に計算すると次のようになります。
対応のある順序データと同様、対応のある分類データも医学・薬学分野ではあまりお目にかかりませんので、コックランのQ検定はほとんど知られていません。 またマンテル・ヘンツェル検定とブレスロー・デイ(Breslow-Day)検定を利用すると、繰り返しのある二元配置分散分析に相当する分析を行うことができます。 しかしこの手法はコックランのQ検定よりも知られておらず、研究現場でお目にかかることはほとんどありません。 あえてここで説明したのは、「こんな手法もありますよ」という紹介と同時に、統計学の各手法間には密接な関係があり、一見、別の手法に思えるものもデータの条件によっては同一の手法になり、原理は全て同じだということを説明したかったからです。 (注4)
| 分類 | B1 | … | Bj | … | Bn | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A1 | x11 | … | x1j | … | x1n | X1 |
| : | : | … | : | … | : | : |
| Ai | xi1 | … | xij | … | xin | Xi |
| : | : | … | : | … | : | : |
| Am | xm1 | … | xmj | … | xmn | Xm |
| 計 | Y1 | … | Yj | … | Yn | N |
帰無仮説は、



全体の変動はAの各群とBの分類が完全に対応する時の要因Aの変動になりますから、Aiに属するXi例が全てBjに分類され、他のカラムは0例である時のχo2値になります。 ところがmとnは等しいとは限りません。 仮にm≦nとしますと、Aiのうち(n-m)個の群については0ではないカラムが2個以上存在することになります。 したがって全体の変動を表すχo2値をχT2としますと、この値は次のようになります。


AとBは対等な名義尺度ですので、どちらが小さくてもχT2を同じように計算することができます。 したがってmとnのうち小さい方をsとしますと、寄与率R2は次のようになります。
表4.25の例題について実際に計算してみましょう。


この方法は試験の計画段階で指定した特定の2群の比較だけを行う特殊な方法で、一般には用いるべきではありません。 しかし統計学の解説書に載っていたり、統計学ソフトに組み込まれていたりしますので、一応、紹介しておきます。
m×nのχ2検定の結果が有意という条件付きで、2種類以上の2群比較にフィッシャー型多重比較を用いる手法を「PLSD(Protected Least Significant Difference)法」と呼ぶことがあります。 しかしこの手法は、3群以上になると多重性の調整が不十分なものになるので使用すべきではありません。


ボンフェローニの不等式を利用し、個々の2×nのχ2検定の有意確率に検定回数をかけたものを多重比較の有意確率にするだけという、極めて単純で基本的な手法です。 個々の2×nのχ2検定の代わりにフィッシャー型の多重比較の計算式を用い、それで得られた有意確率に検定回数を掛けてもかまいません。
個々の検定は独立であり、それらをORで結合して得られる結論をファミリーとしての結論にするという非常に緩い条件の手法なので、個々の検定の有意水準が小さくなって有意になりにくい反面、応用範囲が広いという特徴があります。 どのような多重比較手法を用いれば良いかわからない時とか、多重比較手法がまだ開発されていない特殊な検定について多重比較を行いたい時は、とりあえずこの手法を用いておけば良いでしょう。
最も汎用性が高く、したがって最も有意になりにくい手法です。 2群比較の場合はこの手法よりもボンフェローニ型の方が検定効率が高いので、普通はボンフェローニ型を用いた方が良いでしょう。
ボンフェローニ型を用いて表4.25の例題について実際に計算してみましょう。


| 要因 | B1 | … | Bj | … | Bb | 計 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| A1 | y11 | … | y1j | … | y1b | T1. |
| : | : | … | : | … | : | : |
| Ai | yi1 | … | yij | … | yib | Ti. |
| : | : | … | : | … | : | : |
| Aa | ya1 | … | yaj | … | yab | Ta. |
| 計 | T.1 | … | T.j | … | T.b | TT |
この場合の帰無仮説は次のようになります。




zjの平方を合計して自由度の修正をしたものは、近似的に自由度(b-1)のχ2分布をします。
全体の変動は、ブロックごとのデータの並びが全て一致した時の要因Bの変動と等しくなります。 例えばB1だけが1で他は0の場合を考えますと、次のようになります。
表4.26のデータを順位が2つだけの順序分類データと考え、フリードマンの検定を適用しますと次のようになります。










表4.26の例題について実際に計算してみましょう。



| 群\分類 | 0(無) | 1(有) | 計 |
|---|---|---|---|
| A1 | xk10 | xk11 | nk1 |
| : | : | : | : |
| Ai | xki0 | xki1 | nki |
| : | : | : | : |
| Aa | xka0 | xka1 | nka |
| 計 | Xk0 | Xk1 | Nk |
これらb個のa×2分割表に一般化拡張マンテル検定を適用すれば、群と2分類データの共通性と異質性を検定することができます。 この場合の共通性の検定は、b個のa×2分割表に共通して存在する群と2分類の関連性の有無、つまり群によって出現率に違いがあるかどうかを検定します。 この検定は、繰り返しのある二元配置分散分析の要因Aの検定に対応します。 そして異質性の検定は、群による出現率の違いが時期によって異なっているかどうかを検定します。 この検定は、繰り返しのある二元配置分散分析の交互作用の検定に対応します。
この場合、時期つまり要因Bはブロック因子になり、時期によって出現率が異なるかどうかの検定つまり要因Bの検定は行いません。 時期の検定を行いたい時は時期を要因Aに、群を要因Bにして、群ごとに時期と分類データをクロス集計してa個のb×2分割表を作成する必要があります。
群数aが2つだけの時は、一般化拡張マンテル検定の代わりに順序数cが2つだけの拡張マンテル検定を適用することになります。 しかしその場合はマンテル・ヘンツェルの検定を利用したより正確な手法があり、その手法の方がよく用いられます。 まず時期kの2×2分割表についてマンテル・ヘンツェル検定のχMk2を計算すると、次のようになります。



b個の2×2分割表を総合してnk11を正規近似すると、次のようになります。




実は拡張マンテル検定はこの検定を順序データに拡張した手法であり、順序数cが2つの時の共通性の検定はこの検定の連続修正をはずした式と一致します。 異質性の検定は次のような方法で計算することもでき、こちらの方が多少正確になります。 この手法はブレスロー・デイ(Breslow-Day)の検定と呼ばれています。








ブレスロー・デイの検定は、表内度数の合計Σxk10、Σxk11、Σxk20、Σxk21のどれかが0の時は計算できません。 そこで各表の表内度数に0がある時は、表内度数に0.5を加え、それに応じて周辺度数にも1を加えて計算します。 これは、次に説明するオッズ比を用いた検定におけるウールフの修正と同じ目的の修正です。
マンテル・ヘンツェルの検定と同じような分析を、3.4 2標本の計数値 (注7)で説明したオッズ比を用いて行うことができます。 ただしマンテル・ヘンツェルの検定よりもオッズ比の検定の方が若干ラフな検定ですから、この手法は少しラフな結果になります。 この場合も各表の表内度数に0がある時は、表内度数に0.5を加えるウールフの修正を施します。








