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1815. 感染症数理モデル-3 投稿者:杉本典夫 [URL] 投稿日:2020/04/14 (Tue) 17:37:02
 「感染症数理モデル-2」で説明した仮定から、SIRモデルにおいて、単位時間あたりの各区画の増減人数を各区画の変化速度vと考えると、次のような微分方程式が成り立ちます。

・S区画の変化速度:vs=dS(t)/dt=-β・S(t)・I(t) … S区画の人は単位時間あたりβ・S(t)・I(t)だけ減少する
・R区画の変化速度:vr=dR(t)/dt=γ・I(t) … R区画の人は単位時間あたりγ・I(t)だけ増加する
・I区画の変化速度:vi=dI(t)/dt=-vs-vr=β・S(t)・I(t)-γ・I(t) … I区画の人は単位時間あたり{β・S(t)・I(t)-γ・I(t)}だけ増加(β・S(t)・I(t)>γ・I(t))、または減少(β・S(t)・I(t)<γ・I(t))する

 これらの連立常微分方程式を解けば、時間tによる各区画の人数の変化を表す関数S(t)、I(t)、R(t)を決定することができます。しかしこれらの連立常微分方程式はS(t)、I(t)、R(t)に関して線形ではないので、解析的に解くのは困難です。そこで普通は、直接観測することができるI(t)とR(t)の時系列データを用いて、ルンゲ・クッタ(Runge-Kutta)法などの数値計算手法によって近似的に解いたり、I(t)を特定の確率分布――例えばポアソン分布や対数正規分布――で近似し、それに基づいてS(t)とR(t)を決定して、最尤法などの確率論的な手法を使って近似的に解いたりします。
 そのようにして近似的に解いた結果に基づいて、βとγの値を色々と変えた時のS(t)、I(t)、R(t)の値をプロットすると、色々な場合を想定した時の感染者数の推移をシミュレーションすることができます。
 図2は、インフルエンザの解析結果を参考にして、β=0.48、γ=0.29(1/γ=3.5)、R0=β/γ=1.7の時の感染者の推移をシミュレーションしたものです。このグラフを見ると、S(t)、I(t)、R(t)の形が何となくわかると思います。そしてI(t)のグラフは、疫学調査で用いられる感染症の流行曲線――1日あたりの感染者数を時系列的にプロットしたグラフ――とほぼ同じものになります。
 ちなみに、上記の連立常微分方程式における比例定数βとγは、単位時間あたりの率(rate)を表し、[1/単位時間]という単位を持ちます。このような比例定数は、感染症モデルだけでなく、薬物動態モデルでも、放射性元素の崩壊モデルでも登場し、速度定数(rate constant)とか、崩壊定数(decay constant)とか、時定数(time constant)などと呼ばれています。

※図2は、「感染症流行の予測:感染症数理モデルにおける定量的課題」西浦博、稲葉寿、統計数理(2006)・特集「予測と発見」から引用させていただきました。