玄関
>
会議室
館内案内図
第1展示室
第2展示室
第3展示室
第4展示室
特別展示室
会議室
管理室
他館への連絡通路
会議室
この会議室はパソコン通信と同様のオンライン掲示板です。 どんな話題でもかまわないので気軽にじゃんじゃん書き込んでください。
閲覧
投稿
過去ログ倉庫
[書き込み削除]
1818 番の書き込みのパスワードを入力してちょ!
1818.
感染症数理モデル-6
投稿者:
杉本典夫
[
URL
] 投稿日:2020/04/14 (Tue) 17:39:05
βとγは、多くの観測データを用いて、統計学的に求める必要があります。しかし「1人の感染者が隔離(または回復または死亡)するまでの間に、何人の人を感染させたかを表す値」は、発見された感染者の行動を詳細に調べ、その人と接触した人が感染したかどうかを調べれば、ある程度はわかります。そのため、ある時点tにおいて、この方法で求めたR0のことを「効果的再生産数Rt(Effective reproduction number)」と言います。Rtは時点tごとに変化する値であり、流行が始まってから終わるまでの間のRtを平均するとR0になります。
感染の初期段階で、I(t)の観測データを用いてポアソン回帰分析などで(β-γ)を求め、感染者の行動からRtが求められれば、次のようにしてβとγの推測値を求めることができます。
Rt=β/γ → β=Rt・γ
(β-γ)=a ← I0・exp{(β-γ)t}=I0・exp(a・t)より
(Rt・γ-γ)=(Rt-1)γ=a → γ=a/(Rt-1) → β=a+γ
これらの推測値を使うと、感染の初期段階でS(t)、I(t)、R(t)の今後の推移を予想することができます。そしてその予想に基づいて、感染予防対策を色々と検討することができます。
このように感染症数理モデルと疫学的調査を併用すると、合理的な感染予防対策を検討することができます。その具体的な内容は、厚労省対策推進本部クラスター対策班の押谷仁先生が作成された、「COVID-19への対策の概念」を御覧ください。(^_-)
https://www.jsph.jp/covid/files/gainen.pdf
I(t)の近似関数の両辺を対数変換すると、次のように1次式(直線)になります。
・ln{I(t)}≒ln(I0) + (β-γ)t
そこでI(t)を対数変換して直線回帰分析を行えば、回帰係数(β-γ)を求められると考えがちです。しかしI(t)はカウントデータ(count data)ですから、「0(感染者なし)」というデータがあり、これが重要な意味を持ちます。そのためI(t)を対数変換して、直線回帰分析を行うのは不適切です。このような場合は、ポアソン分布と最尤法を利用した、ポアソン回帰分析を適用する必要があります。ポアソン回帰分析については、僕のウェブサイトの次のページをご覧ください。(^_-)
http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat15/stat1501.html
言わずもがなの蛇足ですが、上記の説明から、今後の感染者数の推移を予想するには、βとγを推測する必要があることがわかると思います。しかしβとγを正確に推測するには、流行が始まってから終わるまでの感染者数の推移データが必要です。感染の初期段階では、(β-γ)のラフな推測値しか得られません。でも感染者の行動を詳細に調べて、Rtを推測することができれば、初期段階でもβとγのラフな推測値が得られます。
ところが僕を含めて一般のデータ解析屋が、Rtを推測することはほとんど不可能です。そのため、どうしても(β-γ)のラフな推測値から、今後の感染者数の動向を予測することになります。つまりRtのデータを持っていないデータ解析屋が予想した、今後の感染者数の推移予想は、僕のものも含めてσ(^^;)、あまり信用できないということです。日本でRtのデータを持っているのは、現在のところ、「新型コロナウイルス感染症対策会議」だけなのです。