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1823. 感染症数理モデル-11 投稿者:杉本典夫 [URL] 投稿日:2020/04/14 (Tue) 17:42:15
 ダイヤモンド・プリンセスのデータは、数理モデルを当てはめるのに適しているので、少し詳しく説明しましょう。このクルーズ船では、2020年2月5日に最初の感染者が発見され、2月15日前後に1日あたりの感染者数がピークになり、2月27日に流行が事実上終息しました。最終的な累積感染者数は696人/3,777人=約1,876人/1万人で、約19%の人が感染しました。
 「感染症数理モデル-4」で説明したように、感染の初期段階では、I(t)つまり1日あたりの感染者が指数関数的に増加し、すこし経つと爆発的患者急増(overshoot)段階になります。しかし、それに応じて感染者が増え、S(t)つまり未感染者が減るため、I(t)の増加速度は次第に遅くなり、やがてピークを経てから減少し始め、最終的に流行は自然に終息します。I(t)がピークになる条件は、次の微分方程式から求めることができます。

・I区画の変化速度:vi=dI(t)/dt=β・S(t)・I(t)-γ・I(t)

I(t)の変化速度vi=0になる時、I(t)がピークになるので、
 vi=dI(t)/dt=β・S(t)・I(t)-γ・I(t)=0 → β・S(t)-γ=0
ここでS(0)=1とし、時点tにおける感染者の割合をpiとすると、
 β・S(t)=β(1-pi)=γ → 1-pi=γ/β=1/R0 → pi=1-1/R0
 R0=β/γ:基本再生産数(1人の感染者が隔離・回復・死亡するまでの間に、何人の人を感染させたかを表す値)

 このことから、感染者の割合piが(1-1/R0)になった時、I(t)がピークになり、その後は次第に減少することがわかります。このpiのことを、「臨海免疫化割合」と呼ぶことがあります。例えばR0=2の時は次のようになり、感染者の割合が50%になった時、1日あたりの感染者数がピークになり、その後は減少します。

 pi=1 - 1/2=0.5

 一方、S(t)は、癌の解析に用いられる生存時間解析に登場する、累積生存率関数S(t)とよく似た変化をします。そこで、S(t)が近似的に指数関数的に減少すると仮定すると、流行終息時の感染者の割合は、近似的に次のようになります。この式を「最終規模方程式(Final size equation)」といい、これをグラフ化したものが、下図の「流行強度(最終規模)のR0応答」です。

 1-pi≒exp(-pi・R0)
 ∴pi≒1-exp(-pi・R0)

 世界各地のデータから、COVID-19のR0はだいたい2前後と考えられています。そこで「流行強度(最終規模)のR0応答」グラフで、R0=2の時のpを見ると約0.8です。つまりR0=2(1人の感染者が2人の人を感染させる)の時、集団の50%の人が感染した時、1日あたりの感染者がピークになり、80%の人が感染すると流行が終息する、ということになります。
 COVID-19について、「感染予防対策を何もしない時、全人口の60〜80%が感染して免疫を持てば、流行が終息する」という予想を、どこかで目にしたことがあると思います。この予想は、上記の数式から導かれたものです。
 これを日本に当てはめると、累積感染者数が約6,350万人になった時、1日あたりの感染者数がピークになり、1億160万人になった時、流行が終息するという、恐ろしいことになります。世界中の感染専門家が、COVID-19を恐れた理由がわかると思います。

※上図の「流行強度(最終規模)のR0応答」は、東京大学大学院・数理科学研究科・稲葉寿教授の、「感染症の数理」から引用させていただきました。