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1923. Re[1922]:多重性に関して 投稿者:杉本典夫 [URL] 投稿日:2023/04/11 (Tue) 09:28:54
>北の大学院生さん
お久しぶりです!(^o^)/

> この時、たとえば、20個の検定ですべてが5%の有意水準で有意になった場合は1つは期待値的に偽陽性であると考えられますが、
> このような場合は実験を繰り返し、同様の結果を確認するまたは、有意水準をより厳しくするなどのことを行ったほうがよいですか。
> そもそも、複数の項目を調べた場合、Bonferroni法などで有意水準を調整する必要はありますか。
多重性のキーワードは”いいとこ取り”です。
複数の検定結果について、1つでも有意になっていれば、それを”いいとこ取り”してファミリーとしての結論――例えば「新薬はプラセボよりも有効である」という結論――を採用する時は、1つ1つの検定について多重性の調整が必要です。
つまり複数の検定が独立なら、新薬とプラセボの有効性が同じでも、検定を20回行えば1回くらいは有意になる、つまり偽陽性になる(αエラーが5%)ので、1回1回の検定の有意水準を5%/20にする必要があるわけです。
しかし複数の検定結果について、1回1回の検定結果を”いいとこ取り”せず、それぞれを独立に評価するのなら多重性の調整は必要ありません。
例えば二元配置分散分析では、要因Aと要因Bについてそれぞれ検定します。その場合、要因A(例えば薬剤の有無)と要因B(例えば性別)の検定結果は独立に評価し、それらを”いいとこ取り”してファミリーとしての結論を採用するわけではありません。そのため要因Aと要因Bの検定に多重性の調整は行いません。

御質問の色々なサイトカインの例では、複数の検定結果を”いいとこ取り”してファミリーとしての結論を採用するのなら多重性の調整が必要です。しかし複数の検定結果をそれぞれ独立に評価し、”いいとこ取り”してファミリーとしての結論を採用するわけではないのなら多重製の調整は必要ありません。
これについては、当館の次のページで紹介している「ワインとソムリエの話」と「名医と藪医者のたとえ話」がわかりやすいと思います。(^_-)
・4.1 多標本の計量値 (1)データに対応がない場合 2) 多重比較
http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat04/stat0401.html

それから多重性の調整は、原則として複数の検定が独立という前提で行います。もし複数の検定が独立ではない時は検定間の相関を考慮して多重性の調整を行う必要があり、それには非常に面倒な計算が必要です。
色々なサイトカインの場合は、それぞれが独立というわけではなく相関があると思います。そのような場合、むしろ多変量解析によって複数のサイトカインの関係を分析し、その結果を検討して総合的に評価した方が良いと思います。
例えば新薬の臨床試験では主要評価項目と副次評価項目があり、それらの間にはたいてい相関があります。そのようなデータを解析する場合、僕が薬業界で生息していた時(^^;)は、それぞれの項目について検定と区間推定を行い、その結果を総合して新薬の有効性を評価していました。
しかし薬業界から足を洗った現在は、原則として検定と区間推定は主要評価項目についてだけ行います。そして主要評価項目を目的変数にし、副次評価項目を説明変数にした重回帰分析を行い、主要評価項目に対する副次評価項目の影響を分析します。それによって主要評価項目と副次評価項目の関係と、それらに対する新薬の効果を総合的に検討することができます。
この方法は多重性の調整が必要ではなく、しかも複数の評価項目の関係を分析して総合的に評価できるので実際的だと思います。

以上、参考になれば幸いです。(^_-)