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1952. Re[1951]:層別割付されたデータの解析方法について 投稿者:杉本典夫 [URL] 投稿日:2023/08/07 (Mon) 20:41:41
>悩める開発担当者様
こんにちわ、杉本です。ご質問にお答えします。

> (質問1)
> 層別割付を行った試験でも、層別解析を行なわずに、t検定などの解析だけでいいのでしょうか?
そもそも層別割付は、多元(通常は二元)配置分散分析を適用するために考えられた試験デザインです。そのため層別割付を行ったということは、試験の主目的を検討するためには多元配置分散分析を適用する必要があったということです。残念ながら、このことをしっかり理解している人は――自称「統計学専門家」や「データサイエンティスト」も含めて――少ないようです。

詳しいことは本館の「統計学入門」の次のページをじっくりと読んでみてください。
・玄関>雑学の部屋>雑学コーナー>統計学入門
→1.9 科学的研究のデザイン (4) フィッシャーの3原則 3) xの効果以外に系統的な偏りがあるモデル
http://www.snap-tck.com/room04/c01/stat/stat01/stat0109.html

> (質問2)
> 回帰の有意性がない場合には、共分散分析を行う意味はないので、
> この場合は、例えばt検定やMann-Whitney U Testを実施することでOKでしょうか。
層別割付は、試験薬(または試験食品)以外に試験結果に影響を与える要因(背景因子等)が存在する時、試験薬剤の有無の影響と、その要因の有無の影響をそれぞれ独立に検討し、さらに試験薬剤の有無とその要因の有無の間の交互作用も一緒に検討することができる、二元配置分散分析によってデータを解析するために考えられた試験デザインです。そのため層別因子の影響が無い(連続量の場合は回帰係数が0)時は、そもそも層別割付をする意味がありません。
そして層別因子としてどのような因子を入れるべきかは、検証型試験を実施する前に探索型試験によってしっかりと検討しておく必要があります。探索型試験をしっかりと行わずにいきなり検証型試験を行うのは、安全ネット無しで綱渡りをするようなものです。
医薬品の臨床試験は第I層→第II層→第III層という手順で試験を行い、第III層の検証型試験の前に探索型試験をしっかりと行います。しかし食品の場合はこの手順を踏まず、いきなり検証型試験を行うことが多いようです。そうすると層別因子の回帰直線が有意ではない、つまり層別因子が結果に影響していないという、層別割付の前提に反した現象が起きてしまいます。そのような場合は、厳密に言えば層別因子を代えた再試験が必要です。

> (質問3)
> 回帰の平行性がない場合には、つまり、交互作用がある場合は、共分散分析で共変量の影響を除くことができないので、
> この場合は、例えば、年齢の高低ごとに分けて比較する層別解析を行う必要があるという理解でOKでしょうか。
それは本来の層別割付の目的に反した解析方法なので、検証型試験の場合は「再試験のための探索的な解析」という位置付けになります。
検証型試験は事前に探索型試験をしっかりと行い、得られるであろう結果を理論的に予想して具体的な作業仮説を立てておく必要があります。共分散分析のような多変量解析は本質的に探索的な解析手法なので、探索型試験のデータには適用できても、厳密に言えば検証型試験のデータには適用できません。
それからU検定のようなノンパラメトリック手法は具体的な作業仮説を立てるのが困難なので、やはり探索的な統計手法です。そのため検証型試験のデータを解析するには向いていません。残念ながら、このことをしっかりと理解している人も少ないようです。(~_~)

以上、参考になれば幸いです。