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1104. 「放射線による発がん」資料について−10 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/07(木) 10:39:42
 用量反応解析で求めた累積正規分布曲線を利用すると、低放射線量被曝の死亡率を推測することができると同時に、集団としての閾値を推測することができます。
 理想的な集団としての閾値は、集団中の個人的な閾値の最低値です。しかし累積正規分布は、被曝量が0Svの非被爆者集団の死亡率を起点として、被曝量が増加するにしたがって死亡率が必ず増加するという前提で計算した曲線です。このためどんなに低い被曝量でも必ず死亡率が増加し、集団としての閾値は理論的に0Svになります。

 そこで相対リスクの値から放射線の影響を判断した時のように、この場合も死亡率の数学的な誤差範囲である信頼区間と、医学的な誤差範囲である許容範囲の両方に基づいて集団としての閾値を求める方が実際的です。
 非被爆群の死亡率は0.174121%ですが、この90%信頼区間を計算すると0.143〜0.205%になります。累積正規分布曲線を利用して、死亡確率がこの信頼区間の上限値である0.205%つまり0.00205になる時の被曝量を逆算すると0.0959Sv(95.9mSv)になります。このことから0.0959Sv(95.9mSv)未満の被曝量については、その影響を判断できないことになります。

 一方、医学的な許容範囲は、例えば次のようにして推測します。0.174121%という死亡率は41年間で1万人あたり17人の死亡があったという意味です。すると1年間では平均して10万人あたり4人の死亡があったことになります。
 このことから、仮に1年間で10万人あたり±1人の死亡数の変動は医学的な許容範囲である、つまりこの程度の増減は医学的には誤差範囲であり、実質的に死亡率の増減はないと仮定します。すると41年間では10万人あたり±41人の死亡、つまり±0.041%の変動は許容範囲ということになります。この許容範囲を非被爆群の死亡率に適用すると、0.174121±0.041%つまり0.133121〜0.215121%の範囲内の変動は実質的に死亡率の増減とはいえないことになります。

 この許容範囲は信頼区間よりも広いので、許容範囲に基づいて医学的な判断をしても良いことになります。累積正規分布曲線を利用して、死亡確率がこの許容範囲の上限値である0.215121%つまり0.00215121になる時の被曝量を逆算すると、0.130418Sv(130.418mSv)になります。このことから集団としての閾値は約0.13Sv(130mSv)であり、これより低い被曝量の時は白血病の死亡率は実質的に増加しないと判断することができます。
 また死亡率の増加が実質的に特に問題となる被曝量は、累積正規分布曲線が急上昇する被曝量以上の時です。1103番の書き込みのグラフから累積正規分布曲線が急上昇するのは1Sv付近であり、これ以上の被曝量の時は特に注意を要することがわかります。

 ただし、くどいようですが、1Svの被曝量の時のガン死亡率の増加は喫煙によるガン死亡率の増加の半分程度であり、受動喫煙と同じ程度のリスクです。したがって500mSv程度の放射線被曝をする危険性がある禁煙場所から、放射線被曝の危険性はないものの、喫煙者がいる避難場所に避難すると、かえってガン死亡のリスクを上げてしまうことになります。(現在は、50mSv以上の被曝の可能性がある場合は避難指示が出されます。これは、この資料の結果から100mSv以下の被曝量ではガンの明確なリスク上昇がないことに基づいていて、100mSvの半分の50mSvを基準値にしたものです)
 放射線被曝を避けるための行動は、こういったことを総合的かつ冷静に判断して行う必要があります。甲状腺被曝を恐れて毒性の強いヨードチンキを飲んだり、飲料水を飲まずに脱水症状になったりと、マスコミ報道に煽られて闇雲に行動するとかえってリスクを上げてしまう結果になりかねません。

1103. 「放射線による発がん」資料について−9(かなり専門的) 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/06(水) 12:06:58
・表4.1について
 この表は被曝量を4段階に分けた時の白血病死亡数と推定過剰死亡数、そして寄与リスク割合を表にし、被曝量とリスクの関係を表したものです。この表を見ると、被曝量が高くなるほど寄与リスク割合の値が大きくなり、被曝量とリスクの間に正比例的な関係があることがわかります。
 ただし寄与リスク割合は累積死亡数が少ないほど大きな値になるので、本来ならば寄与リスク割合ではなく寄与リスクの値、つまり被爆群と非被爆群の累積死亡率の差と被曝量の関係を表にした方が理解しやすいと思います。

 表4.1の被曝量を薬剤の用量と考え、死亡数を反応例数とすれば、これは薬剤の用量と反応の関係を表す「用量−反応関係」になります。そこで薬剤の用量−反応関係を解析するための手法である用量反応解析をこの表に適用し、被曝量と死亡率の関係を解析してみましょう。
 まず非被爆群の被曝量を0Svとし、その累積死亡率を表4.1の合計欄から計算すると{(176-87)/51114}×100=0.174121%になります。そして4段階に分けた各分類の被曝量を、その線量範囲の真ん中の値にすると、最後の「1Sv以上」以外はそれぞれ(0.005+0.2)/2=0.1025Sv、(0.2+0.5)/2=0.35Sv、(0.5+1)/2=0.75Svとなります。最後の「1Sv以上」については、資料の「1.1 原爆被爆者調査(82ページ)」の被曝量に関する説明と図4.5から、ここに分類された人の被曝量は1Sv〜4.5Svであり、しかも高線量ほど人数が少なくなると思われます。そこで、この「1Sv以上」の被曝量を2Svにしてみました。
 これらのデータに用量反応解析を適用すると次のような結果になります。以下の表と図は、死亡率(0〜100%)ではなく死亡確率(0〜1)を表しているので注意してください。
被曝量と白血病死亡確率の用量反応
被曝量(Sv)死亡確率(死亡数/対象者数)
00.00174121(89/51114)
0.10250.00181686(70/38528)
0.350.00425733(27/6342)
0.750.00671533(23/3425)
20.0198652(56/2819)


 上図の赤色の曲線は、被曝量と死亡確率の関係を「累積正規分布」という特殊な関数で近似した「被曝量−死亡確率曲線」です。それに対して青色の直線は、被曝量と死亡確率の関係を一次関数つまり直線で近似した「被曝量−死亡確率直線」です。一見したところ直線の方が近似が良いように見えますが、正確に計算するとどちらもほぼ同程度の近似率です。
 このような用量−反応関係を近似する時、見かけ上の近似よりも、近似する関数を理論的に導いた方が合理的です。そしてそれは、次のような考えから導くことができます。
 ある人が白血病で死亡する最低の被曝量を、その人の白血病死亡に関する個人的な「閾値(しきいち)」といいます。例えばある人がお酒を呑んで酔いつぶれる量も、お酒に関する個人的な閾値です。この閾値は、たった1合で酔いつぶれてしまう”お酒に弱い人”もいれば、1升飲んでも大丈夫という”酒豪”もいるというように、人によって様々です。それと同様に、白血病死亡に関する個人的な閾値も人によって様々だと思われます。

 表4.1の0.005〜0.2Svの欄の死亡した70人の被爆者は、個人的な閾値が浴びた放射線量以下だった人であり、死亡しなかった38458人の被爆者は、個人的な閾値が浴びた放射線量よりも高かった人のはずです。つまり死亡した70人の閾値は、0〜0.2Svの範囲の色々な値だと思われます。(閾値が0Svという人は放射線を浴びなくても死亡する人、つまり放射線以外の要因で白血病死亡する人であり、非被爆群の死亡者は全員がこれに相当します)
 同様に、次の0.2〜0.5Svで死亡した27人の閾値は0〜0.5Svの範囲の色々な値であり、0.5〜1Svで死亡した23人の閾値は0〜1Svの範囲の色々な値のはずです。そうすると、例えば0.5〜1Svの死亡数23というのは、0.5〜1Svの放射線を浴びた被爆者3425人のうち、個人的な閾値が0〜1Svまでの人を合計した数ということになります。このことから、表4.1の4分類の対象者の背景因子がほぼ同じなら、被曝量が高くなるにしたがって死亡率は必ず増加または横ばいになり、減少することはないと予想されます。
 そこで被曝量と死亡率の関係ではなく、個人的な閾値と死亡率——実際には対象者の中の同じ閾値の人の割合——の関係を考えることができます。そしてこの個人的な閾値と死亡率の関係がある関数で近似できれば、被曝量と死亡率の関係はその関数を累積したもの、つまりその関数を積分した関数になるはずです。逆に言えば、被曝量と死亡率の関数を微分すると、個人的な閾値と死亡率の関数になるはずです。

 その考えからすれば、被曝量と死亡率の関係を直線で近似した時は、個人的な閾値と死亡率の関係は定数になる、つまり個人的な閾値は被曝量とは無関係に常に一定の割合であり、それを累積するから被曝量と死亡率の関係が直線になる、ということになります。これは、個人的な閾値が0.001Svの人の割合も、0.1Svの人の割合も、1Svの人の割合も全て同じということであり、常識的にはあまり考えられません。
 例えばお酒に関する個人的な閾値は人によって様々でしょうが、たった1合でつぶれてしまう”お酒に弱い人”の割合や、1升飲んでも大丈夫という”酒豪”の割合は比較的少なく、平均的な閾値付近の人の割合が最も多いでしょう。それと同様に、白血病死亡に関する閾値も、平均値的な閾値付近の人の割合が最も多く、それよりも小さい閾値の人の割合も、それよりも大きい閾値の人の割合も徐々に少なくなっていくと考えられます。

 その様子を理論的な関数で表したものが、「正規分布」と呼ばれるベル型の曲線です。そしてその正規分布を積分した関数が累積正規分布であり、S字状の曲線(シグモイドカーブ)になります。次の図10.3の赤色の曲線が累積正規分布であり、図10.4の赤色の曲線が正規分布です。(→当館の「統計学入門・第10章 ロジスティック回帰分析 第2節 各種のシグモイド曲線 図10.3と図10.4」参照)

 累積正規分布曲線は、死亡率(図10.3では出現率)が非常に小さい部分は傾きが小さい直線で近似でき、死亡率が急に上昇する部分は二次曲線(放物線)で近似でき、死亡率がだいたい0.2(20%)〜0.8(80%)の部分は傾きが急な直線で近似でき、全体として0.5を中心にして点対称(0.5を中心にして回転すると同じ形になる)になっています。

 資料の図4.7で、皮膚がんの線量反応関係を3種類のモデル(関数)で近似しています。この中の線形モデルは累積正規分布曲線の死亡率が非常に小さい部分を直線で近似したものに相当し、二次モデルは累積正規分布の死亡率が急上昇する部分を放物線で近似したものに相当し、スプラインモデルは累積正規分布曲線の死亡率が非常に小さい部分と、死亡率が直線的に増加していく部分を2種類の直線で近似したものに相当します。
 資料ではプロットとモデルの見かけ上の近似性だけを検討していて、個人的な閾値のことは検討していません。個人的な閾値のことを考えると、線形モデルも二次モデルもスプラインモデルも、個人的な閾値の理論的関数である正規分布のある部分だけを近似したモデルになり、どのモデルも部分的に近似するだけで、全体的に近似するわけではないことがわかります。つまり個人的な閾値の関数から被曝量と死亡率の関数を理論的に導くと累積正規分布になり、3種類のモデルは全て累積正規分布の部分的な近似モデルであることがわかると思います。
 またこの図4.7は被曝量と相対リスクの関係をプロットしていますが、相対リスクは死亡率が直線的に変化すると双曲線的に変化するので、被曝量−反応関係を解析するには適していません。やはり被曝量と死亡率そのものをプロットした方が適切です。

1102. Re[1100]:遠藤未希さん 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/04(月) 12:57:17
>山本直樹先生

>>遠藤さんの場合、町役場の末端職員などという考えはなく、住民の安全の責任を
>>負った最高の 公職者のように行動した。
>>彼女の行為を見ると、果たして公職者とはどういう存在かと考えさせられる。

 本当に感動的で、考えさせられるエピソードですね。今回の大震災では同じような感動的なエピソードが沢山あると思います。被災地でも原発事故現場でも、遠藤未希さんのような現場の人達が必死になって働いていて、それによって日本という国が支えられているということが良くわかります。

>>悲嘆の中でもしっかりと耐える日本人こそ、
>>「アモールファティ(amor fati)」、>すなわち 「運命を愛する」という、
>>2500年前のストア哲学の神髄を内面化した人たちだという気がする。

 これと同じような言葉として、海外のニュースで、日本に長く住んでいた日本文化研究者が、日本の被災者の冷静さとモラルある態度について次のようなことを言っていました。

「日本人は、人間は自然に生かされている存在だと考え、自然を恐れ敬い、自然崇拝的な宗教である神道を信奉している。そのため自然が与える恵も災いも全て運命として受け入れ、しかもそれを悲観的ではなく前向きに捉えている。こうした考え方が、今回のような自然災害に対する冷静さと、モラルある態度を生み出している要因だと思う。日本人は”悲観的ではない運命論者”であるといえる」

 この”悲観的ではない運命論者”という表現には、成る程と思いました。

 それから僕は基本的にマスコミ嫌いですが、日本のマスコミはインパクトのある記事を狙いながらも、被災地や被災者について報道する時は、あまりにも悲惨な情景(例えば被災者の遺体等)は極力写さないような気配りをしていて、これについては感心しています。

 色々と迷いましたが、海外のマスコミの報道例としてニューヨークタイムズの震災写真集をあえて紹介させていただきます。この写真集を見ると、被災現場の厳しさと被災者の苦悩や悲嘆、そしてその悲惨な現場で黙々と救援活動をされている多くの人達の大変さがひしひしと伝わってきて、ただただ頭が下がります。遺体の収容や埋葬の様子も含まれるこの写真集を見るのは非常に辛いので、精神的に自信のない方は見ない方が良いと思います。

・ニューヨークタイムスの震災写真集…http://ow.ly/4lyoc/

1101. 「放射線による発がん」資料について−8 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/04(月) 12:52:01
・図4.2について
 この図は被爆者群の累積死亡数と、その中で放射線による死亡と考えられる割合を棒グラフで表したものです。疫学分野では被爆群の累積死亡率と非被爆群の累積死亡率の差を「寄与リスク(attributable risk、AR)」といい、寄与リスクを被爆群の累積死亡率で割った値、つまり被爆群の累積死亡数の中で放射線による死亡と考えられる割合のことを「寄与リスク割合(attributable risk percent、AR%)」いいます。
 図4.2の説明には「原爆被爆者におけるがん死亡者中の放射線に起因する割合(寄与リスク)」と記載されていますが、これは実際には寄与リスク割合のことです。被爆群の累積死亡数の中で放射線による死亡と考えられる数とは、「放射線による発がん」資料について−4で計算した過剰死亡数のことですから、結局のところ寄与リスク割合は被爆群の過剰累積死亡数を累積死亡数で割って100を掛けた値になります。このことは表4.1と表4.2の「0.005〜0.2Sv」の欄の「放射線に起因する死亡割合」の右側に、(10/70)と(63/3391)と計算方法が記載されていることからもわかります。

 相対リスクは被爆者群の累積死亡率と非被爆者群の累積死亡率の比であるのに対して、寄与リスクは被爆者群の累積死亡率と非被爆者群の累積死亡率の差です。このため非被爆群の累積死亡率が小さくても、相対リスクのように大きな値にはなりません。また相対リスクは非被爆群の累積死亡率が0%の時、つまり死亡者がひとりもいない時は無限大になってしまい計算することができませんが、寄与リスクは計算することができます。これらの特徴から、一般人にとっては寄与リスクの方が放射線のリスクをより正確に理解することができると思います。このことは図4.1と図4.2——特に棒グラフ全体の長さと過剰死亡数の長さ(濃い灰色の部分)——を見比べればわかっていただけると思います。
 相対リスクと寄与リスク割合の間には次のような関係があり、相互に値を変換することができます。この関係と図4.2から、寄与リスク割合は被爆者群の累積死亡率が小さいと相対的に大きくなる値であり、相対リスクと同様に一般人がリスクの大きさを正確に理解するには不向きな指標であることがわかると思います。

  寄与リスク割合:AR%={(RR−1)/RR}×100
  相対リスク:RR=1/(1−AR%/100)

 この変換式を利用して、図4.1の寄与リスク割合から相対リスクを求めると次のようになります。

  白血病:RR=1/(1-0.49)=1.96
  白血病以外の全ガン:RR=1/(1-0.07)=1.08
  胃ガン:RR=1/(1-0.05)=1.05
  結腸ガン:RR=1/(1-0.12)=1.14
  肺ガン:RR=1/(1-0.1)=1.11
  乳ガン:RR=1/(1-0.25)=1.33
  泌尿器ガン:RR=1/(1-0.13)=1.49

 図4.1の相対リスクの値と比べると、これらの相対リスクの値はかなり小さくなっています。これは、図4.1が1Svの放射線を被曝した人だけに限った時の相対リスクなのに対して、この値が5mSv以上の全ての被爆者についての相対リスクだからです。

 図4.2には描かれていませんが、寄与リスクについても信頼区間を計算することができます。信頼区間を計算するためには被爆群だけでなく非被爆群のデータも必要ですが、仮に被爆群と非被爆群の対象者数が同じとして、表4.1と表4.2のデータを用いて白血病と白血病以外の全ガンの寄与リスクとその90%信頼区間、さらに相対リスクとその90%信頼区間を求めると次のようになります。

○白血病
群 生存例数( % ) 累積死亡例数( % ) 合計( % )
--------------------------------------------------------------
非被爆群 51025( 99.8) 89( 0.2) 51114(100.0)
被爆群 50938( 99.7) 176( 0.3) 51114(100.0)
--------------------------------------------------------------
合計 101963( 99.7) 265( 0.3) 102228(100.0)

・寄与リスク AR=0.170208%
 寄与リスクの90%信頼区間:下限=0.115941% 上限=0.224474%
・相対リスク RR=1.97753
 相対リスクの90%信頼区間:下限=1.59704 上限=2.44867

○白血病以外の全ガン
群 生存例数( % ) 累積死亡例数( % ) 合計( % )
--------------------------------------------------------------
非被爆群 45765( 91.3) 4348( 8.7) 50113(100.0)
被爆群 45426( 90.6) 4687( 9.4) 50113(100.0)
--------------------------------------------------------------
合計 91191( 91.0) 9035( 9.0) 100226(100.0)

・寄与リスク AR=0.676471%
 寄与リスクの90%信頼区間:下限=0.376901% 上限=0.976042%
・相対リスク RR=1.07797
 相対リスクの90%信頼区間:下限=1.04293 上限=1.11418

 この結果を見ると、信頼区間の幅が図4.1よりもかなり狭いことがわかります。これは被爆者全員を対象にして計算しているので、例数が多いせいです。また白血病の相対リスクが図4.2の寄与リスク割合から求めた値とわずかに違いますが、これは寄与リスク割合の値が整数に丸められているからだと思います。

1100. 遠藤未希さん 投稿者:山本直樹 投稿日:2011/04/04(月) 07:55:38
杉本さん
冷静な記載の中でこのような感傷的な文章を記すことをお許しください。
今回の震災で亡くなられた 遠藤未希さん、25才という若さで亡くなられた役場職員の感動エピソードがあるので、ご紹介します。
「早く逃げてください」−−。街全体が津波にのみ込まれ約1万7000人の人口のうち、約1万人の安否が分からなくなっている宮城県南三陸町は、町役場が跡形もなくなるなど壊滅した。多くの町職員や警察官、消防職員が行方不明となったが、その中に津波に襲われるまで防災無線放送で住民に避難を呼びかけた女性職員がいた。「娘は最後まで声を振り絞ったと思う」。同町の遠藤美恵子さん(53)は、避難先の県志津川高校で涙を浮かべた。娘の未希(みき)さん(25)は町危機管理課職員。地震後も役場別館の防災対策庁舎(3階建て)に残り、無線放送を続けた。難を逃れた町職員(33)によると、地震から約30分後、高さ10メートル以上の津波が町役場を襲った。助かったのは10人。庁舎屋上の無線用鉄塔にしがみついていた。その中に未希さんはいなかった。

パク・ヒョジョン・ソウル大教授・倫理教育科

運命は選択できないが、運命に対する姿勢は選択できる。 自然による大災難の前に
茫然自失しながらも、悲しみを胸の奥深くに抑える日本人を見ながら感じることだ。
悲嘆の中でもしっかりと耐える日本人こそ、「アモールファティ(amor fati)」、すなわち 「運命を愛する」という、2500年前のストア哲学の神髄を内面化した人たちだという気がする。 逆境は感動を生むという。 いま多くの感動ストーリーが出てきているが、最近メディアに報道されたある 公職者の死は特に心を引きつける。 宮城県南三陸町の町役場危機管理課職員、遠藤未希さんだ。 遠藤さんは津波が押し寄せてくる時、「早く逃げてください。 6メートルの波があります」と最後まで放送を続け、 結局、津波にのまれた。 25歳の最も美しい年齢で、住民を救おうとマイクを放さず最期を遂げたという 遠藤さんの哀切な話は、一つの静かな感動だ。 日本が地震による大災難を乗り越えて立ち上がるのは時間の問題だ。 円高が維持されているからでもなく、日本政府が莫大な資金を供給しているからでもない。 混とんの中でも落ち着きと節制を失わない市民の精神が生きていて、住民のためにマイクを 最期まで放さない公人精神が残っているということ、これ以上の災難克服意志を示す証拠はない。 遠藤さんの場合、町役場の末端職員などという考えはなく、住民の安全の責任を負った最高の 公職者のように行動した。 彼女の行為を見ると、果たして公職者とはどういう存在かと考えさせられる。 国は違うとしても、自分の共同体のために最善を尽くさなければならないという義務感においては何も変わらないからだ。

1099. 「放射線による発がん」資料について−7(かなり専門的) 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/02(土) 10:56:26
 図4.1の信頼区間を見ると、直腸ガン、膵臓ガン、前立腺ガン、悪性リンパ腫の左端が0.1のところまで伸びていて、不自然なグラフになっています。対数スケール上の信頼区間は左右対称のはずですから、これは信頼区間の下限を0.1まで伸ばすことによって、これらのガンには放射線の影響がほとんどないことを強調したかったのではないかと思います。
 しかし相対リスクが0.1ということは、被爆群の死亡率が非被爆群の死亡率の10分の1ということですから、これでは「放射線が好影響を与えている可能性がある」という意味になってしまいます。放射線の影響がないと判断するためには、相対リスクの信頼区間が医学的な許容範囲にすっぽりと入っているかどうかを検討する必要があるので、このように信頼区間の下限を0.1まで伸ばすのはよろしくありません。

 また83ページの「調査結果」の部分には、「胃がん、肺がん、結腸がん、肝臓がん、乳がん、卵巣がん、甲状腺がん、皮膚がんには、統計的に有意なリスクの上昇が見られるが、直腸がん、膵臓がん、子宮がん、前立腺がん、悪性リンパ腫には、統計的に有意なリスクの増加は認められていない」と記述されています。
 ところが図4.1の信頼区間を見ると、白血病を除くガン合計は別にして、上述の説明以外に食道ガン、泌尿器ガン、多発性骨髄腫も信頼区間に1が入っていないため、有意水準10%で有意になると思われます。そしてこれらのガンは、上述の説明の有意なガンにも有意ではないガンにも含まれておらず、説明が省略されています。

 実は医学分野では普通は信頼係数を95%にし、有意水準を5%にするのが普通です。95%信頼区間は「この区間内に95%の確率で本当の相対リスクの値が入る」わけですから、当然、90%信頼区間よりも幅が広くなります。理論的には90%信頼区間の幅を左右とも約1.2倍にすると、95%信頼区間になります。そうすると目分量ですが、説明が省略されたガンの信頼区間には全て1が入りそうです。
 つまり説明を省略したガンは、有意水準5%では有意ではないものの、有意水準10%ならば有意になるようなのです。したがってこの資料では、リスクの上昇については有意水準5%で判断し、リスクが上昇しないことについては有意水準10%で判断し、その間に入ったガンは判断を保留しているようです。
 これは「有意」ということを「リスクが上昇する」つまり「放射線が悪影響を与えている」と解釈し、「有意ではない」ということを「リスクは上昇しない」つまり「放射線は影響を与えていない」と解釈していることに相当し、あまりよろしくありません。信頼区間を90%にしたのなら有意水準は10%にし、その条件で有意なガンについては、相対リスクの値を医学的に評価して放射線が実質的な悪影響を与えているかどうかを判断し、有意ではないガンについては、信頼区間が医学的な許容範囲にすっぽりと入っているかどうかを検討して、放射線が実質的な影響を与えていないかどうかを判断するべきです。

 医学分野ではたいていは信頼係数を95%、有意水準を5%にします。しかし薬剤の効果のような好影響については、信頼性を高くするために信頼係数を大きく——つまり有意水準を小さく——して判断し、薬剤の副作用のような悪影響については、信頼性が多少低くても、あえて悪影響があると判断するといったように、本来は状況に応じて適当に変更すべきです。
 そのため放射線の影響を検討する時に、信頼係数を90%にすること自体には賛同できます。そして「有意=影響あり」と判断するのではなく、有意の時は相対リスクの値を医学的に評価して影響の有無を判断することを前提にした上で、好影響についての有意水準は10%にし、悪影響についての有意水準はその倍の20%にするのが妥当だと、個人的には思っています。

1098. 「放射線による発がん」資料について−6(かなり専門的) 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/01(金) 15:18:20
 図4.1の「●」は相対リスクの推測値を表し、その左右に描かれた横線は90%信頼区間を表します。「信頼区間(Confidence Interval、CI)」とは、相対リスクを推測する時の誤差幅のことです。
 資料の1.1節(82ページ)に記載されているように、データには必ず誤差(バラツキ)——個人差や測定誤差等——があります。その誤差のせいで放射線量にも死亡率にも誤差が含まれ、相対リスクにも誤差が含まれます。そこでその誤差の大きさを基にして、相対リスクを最も低く見込んだ時の下限値(横線の左端の値)と、一番もっともらしい値(●の値)、最も高く見込んだ時の上限値(横線の右端の値)を計算することができます。
 この下限値と上限値の幅が信頼区間であり、相対リスクを推測する時の誤差幅になります。そして「90%信頼区間」とは、「この区間内に90%の確率で本当の相対リスクの値が入る」という意味であり、この「90%」のことを信頼係数といいます。

 図4.1を見ると、白血病を除くガン合計のように信頼区間の幅が狭いものと、多発性骨髄腫のように信頼区間の幅が広いものがあることがわかると思います。信頼区間の幅が狭いということは相対リスクに含まれる誤差が小さいということであり、それだけ相対リスクの値が信頼できることになります。その反対に信頼区間の幅が広いと相対リスクに含まれる誤差が大きく、それだけ相対リスクの値が信頼できなくなります。
 原則として、信頼区間の幅は例数の平方根に反比例して小さくなります。つまり死亡例が多いと信頼区間の幅が狭くなり、死亡例が少ないと信頼区間の幅が広くなるわけです。これはデータ数が多いほど信頼性の高い結果が得られることを意味していて、常識的にも当然のことです。白血病を除くガン合計の信頼区間が狭いのは、ガン合計のため死亡例が多いからであり、多発性骨髄腫の信頼区間が広いのは、これが非常に稀な疾患(2009年の統計では3.2人/10万人/年)だからです。

 90%信頼区間の定義から、白血病のように信頼区間の中に「1(図4.1の中央の縦線の値)」が入っていないと、その相対リスクは90%以上の確率で1よりも大きい(または1よりも小さい)ことになります。相対リスクが1よりも大きいということは、非被爆群の死亡率よりも被爆群の死亡率の方が高いということですから、放射線がそのガンの死亡率に悪影響を与えることになります。その反対に相対リスクが1よりも小さいと非被爆群の死亡率よりも被爆群の死亡率の方が低く、放射線がそのガンの死亡率に好影響を与えることになります。(放射線がガンの死亡率に好影響を与えるはずがない!…と思うかもしれませんが、放射線をガン細胞に照射することによってガンの治療をする「放射線療法」が現に行われています)
 したがって90%信頼区間の中に1が含まれていないと、放射線がそのガンに悪影響を与えるのか好影響を与えるのか、相対リスクの値によって90%以上の確率で判断できることになります。この状態のことを「有意水準10%で有意」または「危険率10%で有意」といいます。有意水準または危険率は100%から信頼係数を引いた値であり、相対リスクの値によって放射線の影響を判断した時の、判断ミスの確率を表します。つまり「有意水準10%で有意」ということは、「判断ミスの危険性が10%程度はあるが、相対リスクの値によって放射線の影響を判断することができる」という意味です。

 それに対して子宮ガンのように信頼区間の中に1が入っていると、相対リスクは1よりも大きいかもしれないし、1よりも小さいかもしれないということになり、放射線がそのガンに悪影響を与えるのか好影響を与えるのか、相対リスクの値によって判断できないことになります。この状態のことを「有意水準10%で有意ではない」といいます。これは「判断ミスの危険性が10%以上あるので、相対リスクの値によって放射線の影響を判断することはできない」という意味であり、平ったくいえば「判断ミスの危険性が高いので判断を保留する」という意味です。

 ここで注意していただきたいのは、「有意」ということは「相違リスクの値によって放射線の影響を判断できる」という意味であり、「放射線の影響があるという意味ではない点です。放射線の影響があるかどうかを判断できるのは、相対リスクの値を医学的に正しく評価できる知識を持った人、つまり医学分野の専門家だけです。
 1096番の「放射線による発がん」資料について−4で説明したように、白血病の相対リスクが5.5であるのに対して、白血病以外のガン合計の相対リスクは1.2ですが、実際の過剰死亡数つまり1Svの放射線を浴びることによって増加する死亡者数は、白血病以外のガン合計の方が2倍も多いのです。このことを理解した上で、さらに1年間で1万人あたり2人または4人の過剰死亡例があるということが、医学的に見て強い影響なのか、それとも弱い影響なのかということを判断できなければ、相対リスクの値を医学的に正しく評価できるとはいえません。

 また「有意ではない」ということは「判断ミスの危険性が高いので判断を保留する」という意味であり、「放射線の影響はないという意味では決してありません。相対リスクの値によって放射線の影響がないことを判断できるのは、やはり相対リスクの値を医学的に正しく評価できる知識を持った医学分野の専門家だけです。
 「有意ではない」時は相対リスクの値そのものが信頼できず、1以下なのか1以上なのかさえわからないのです。これではいくら医学分野の専門家でも正確に判断するのは難しく、とりあえず判断を保留することになります。ただし信頼区間の下限値と上限値が医学的な許容範囲——この範囲内ならば医学的に放射線の影響はないと判断できる範囲、例えばあるガンについては相対リスクが0.9〜1.1の範囲——にすっぽりと入っている時は放射線の影響はないと判断でき、その時に限って放射線の影響はない」と判断することができます。
 「判断保留」とは、何となくあやふやで非科学的な感じがすると思います。しかし誤差の多い不確かなデータから得られた結果を解釈する時は、確定的なことを断言する方が実は非科学的なのです。これは地震という不確定要素の多い自然現象を相手にしているにもかかわらず、「原発は地震が起きても絶対安全です!」と非科学的なことを断言してきた、某電力会社の現在の惨状を見ればわかると思います。(^^;)

 放射線が健康に与える影響について書かれた資料を科学的に正確に解釈するには、以上のような統計学的知識と医学的専門知識の両方を兼ね備えていなければなりません。
 僕がこれまでに読ませていただいたウェブサイト等の資料のうち、医学分野以外の分野——例えば物理学、化学、工学等——の専門家が書かれた放射線の健康被害に関する説明は、残念ながら統計学的に正確とは言いかねるものが少なからずありました。専門家は専門分野のことを正確に理解する難しさを十二分にわかっているだけに、専門外の分野のことは最も安全側に立って解釈することが多く(もちろん、これは科学者として当然の態度です)、ややもすると放射線が健康に与える影響を過大評価しがちな傾向があるように思います。

1097. 「放射線による発がん」資料について−5(やや専門的) 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/04/01(金) 09:31:24
 疫学分野では単位時間あたりの死亡率と、ある期間の累積死亡率を区別し、普通は1年あたりの死亡率を「人年」単位の死亡率といいます。そして被爆者群の累積死亡率と非被爆者群の累積死亡率の比を「相対リスク」といいます。それに対して、被爆群の人年単位の死亡率と非被爆群の人年単位の死亡率の比を「率比(rate ratio)」と呼んで区別します。
 一方、統計学分野、特に生命表解析分野では単位時間あたりの死亡率のことを「瞬間死亡率」といい、ある期間の累積死亡率と区別します。そして単位時間を1年にした時の瞬間死亡率が、人年単位の死亡率に相当します。またある時点における被爆群の瞬間死亡率と非被爆群の瞬間死亡率の比を「ハザード比(hazard ratio)」といい、率比に相当します。
 生命表解析ではハザード比を全期間について平均した値を相対リスクと同じような指標として用いますが、これは途中で被験者の脱落がなければ相対リスクと一致します。「ハザード」はリスクと同義語であり、相対リスクは被爆者群と非被爆群のリスク比(risk ratio)ですから、ハザード比のことをリスク比または相対リスクと呼んでもいいはずですが、脱落があると微妙に異なるので別々の名前で呼んでいます。
 長期間にわたる研究では、放射線とは無関係な死亡や転居などによって被験者の追跡が不可能になることがあり、これを「脱落(dropout)」といいます。相対リスクの計算ではこれらの脱落例は計算から除外されますが、生命表解析では脱落するまでのデータは有効利用します。そのため長期間にわたる研究では、生命表解析を用いた方が正確で信頼性の高い結果が得られます。

 図4.3は被爆群における被爆後の白血病と固形ガン(胃・肺など)のリスク、つまり人年単位の死亡率の変化を模式的に表したものです。この模式図を見ると、白血病のリスクは最初の10年間くらいが高く、以後は低くなっていくのに対して、固形ガンのリスクは時間が経つにつれて高くなっていくことがわかります。
 生命表解析を利用すれば、これと同じグラフを実際のデータから描くことができます。生命表解析ではある時点の瞬間死亡率をデータから求め、それに基づいて累積死亡率の経年変化を表す「累積死亡率曲線」を描きます。そのため累積死亡率の代わりに瞬間死亡率の経年変化を描けば、それが図4.3のようなグラフになります。そのグラフのことをハザード曲線(ハザード関数)といいます。

1096. 「放射線による発がん」資料について−4 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/31(木) 11:16:10
 非被爆群の死亡率を最も簡単に推測する方法は、一般的な死亡率から推測する方法です。例えば国立がん研究センターがん対策情報センター(http://ganjoho.ncc.go.jp/)の資料によると、日本における2009年の白血病の年間死亡率は0.0063%(6.3人/10万人/年)です。(→http://ganjoho.ncc.go.jp/data/public/statistics/backnumber/2010/files/data03.pdf)
 この死亡率に図4.1の1Sv以上の白血病の相対リスク5.5をかけると0.03465%になり、それが被爆群の年間死亡率の推測値になります。そして被爆群の年間死亡率と非被爆群の年間死亡率の差は0.02835%になり、この値を100で割ってから1万をかけると2.835になります。
 この値が1万人あたりの年間過剰死亡数になり、1066番の書き込みで説明した、1Svの放射線とタバコの健康被害を比較した時のガン発生の増加人数に相当する値になります。つまり1Svの放射線を浴びると、白血病で死亡する人が1年間で1万人あたり約3人増えると考えられるわけです。

 この方法は簡単で応用範囲の広い方法ですが、せっかく資料があるので、次は資料のデータを利用して非被爆群の死亡率を推測してみましょう。後で詳しく説明するつもりですが、疫学分野で相対リスクを計算する場合は、観測期間中の累積死亡者数(死亡者数合計)を観測対象者数で割った「累積死亡率」を用います。図4.1は文献8、10から引用しているので、1950〜1990年の41年間の累積死亡率を用いて相対リスクを計算していると思われます。
 また表4.1には(5mSv以上被曝した寿命調査対象集団:1950〜90)と注釈がついているので、被爆群の41年間の白血病累積死亡数を表にしたものだと思われます。そして「合計」欄を見ると、対象者数が51114例、白血病死亡数が176例、推定過剰死亡数が87例になっています。
 これらの数字から、仮に非被爆群の対象者数が被曝群と同じ51114人とすると、白血病死亡数は176-87=89人になり、非被爆群の累積死亡率は89/51114×100=0.1741206%と推測できます。この非被爆群の累積死亡率0.1741206%に白血病の相対リスク5.5をかけると0.9576633%になり、これが被爆群の累積死亡率の推測値になります。
 これら2つの累積死亡率の差を求めると0.7835427%になり、この値を100で割ってから対象者数をかけることによって過剰死亡数を求めることができます。例えば1万人あたりの過剰死亡数を計算すると78.35427人になり、これを41年間で割って1年あたりにすると78.35427/41=1.91108人になります。つまり1Svの放射線を浴びると、白血病で死亡する人が1年間で1万人あたり約2人増えると考えられるわけです。
 この値は2009年の年間死亡数から推測した値と少し違いますが、白血病の死亡数は非常に少ない上に、時期も対象者の条件も異なるため、この程度の違いがあっても不思議ではありません。

 これと同じ計算方法で表4.2から白血病以外の全てのガンについての各種の値を推測すると、非被爆群の累積死亡率が8.676391%、被爆群の累積死亡率が10.41167%、それらの累積死亡率の差が1.735278%になり、1万人あたりの過剰死亡数が173.5278人、1年あたり1万人あたりの過剰死亡数が4.232386人になります。つまり1Svの放射線を浴びると、白血病以外のガンで死亡する人が1年間で1万人あたり約4人増えると考えられるわけです。
 このように白血病の相対リスクが5.5であるのに対して、白血病以外のガンの相対リスクは1.2であり、見かけ上はかなり小さいのに、実際の過剰死亡数は白血病以外のガンの方が多く、白血病の約2倍になります。このことから、相対リスクを正しく評価することの難しさがわかると思います。

1095. Re[1093]:[1092]:自衛のための勉強 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/30(水) 16:39:06
>とものりさん

 諸々のデータ解説ありがとうございます。

 前述の武田先生のコラム中にある「他の原発のほうが危険・・」まったくもってその通りだったので、ビックリというか、関西広域もいつ原発事故に巻き込まれても不思議でないのに、驚愕です。

 昔読んだSF小説のように、ガイガーカウンターと共に生活する日も近そうです(ーー;;

 http://takedanet.com/2011/03/41_70dc.html


>>>通りすがり(^^;;さん
>>
>>>>自衛するために勉強・・なのですが、放射線・病理・・・正直わからないことだらけ・・です(^^;;
>> 「非常時には、頭の軟らかい人の頭はますます軟らかくなり、頭の固い人の頭はますます固くなる」という言葉があります。災害のような非常時には、柔軟な思考ができる人は生き延びるために色々と工夫し、何とかして災害から立ち直るのに対して、柔軟な思考ができない人は、それまでの常識が通用しない事態に直面して立ち往生し、付和雷同して被害を益々大きくしてしまうという意味だと思います。
>>
>> わからないことに対して不安になるのは本能的な防衛反応であり、当然のことです。でもその不安を抱えたままでいると、専門家の言うことよりもマスコミ報道を信じたり、根拠の無いデマを信じたりしてしまいがちです。
>> パンドラの箱と同じで、本能的な防衛反応である不安を無視するのではなく、不安の原因である「わからないこと」を徹底的に勉強し、正しい知識に基づく正しい対処法を学び、錯綜する情報を冷静かつ客観的に判断して、不安をコントロールするのが最善の策ではないかと思います。
>> 我々”圧倒的多数の庶民(^^;)”が今回の大災害に対して頭を柔軟にして向き合い、正しい知識と対処法を身につけ、災害から立ち直るように努力すると同時に、この災害から将来のための教訓をできるだけ多く読み取るようにすれば、長い目で見て災害を抑える大きな力になると思います。
>>

1094. 「放射線による発がん」資料について−3 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/30(水) 12:17:35
・図4.1について
 このグラフは色々な文献に引用され、1Svあたりのガン発生リスクの目安として利用されています。このグラフで用いられている「相対リスク(relative risk、RR)」とは、被爆群の死亡率と非被爆群の死亡率の比であり、被爆群が非被爆群の何倍の死亡リスクがあるかを表す指標です。
 このグラフを見ると、1Svあたりのガン死亡リスクは白血病が非被爆群の5.5倍程度で最も高く、白血病を除くその他のガン合計の死亡リスクは非被爆群の1.2倍程度であることがわかります。一方、喫煙によるガン死亡のリスクには諸説ありますが、最も高い咽頭がんや肺がんが10〜50倍程度であり、その他のガン合計では1.5〜2倍程度です。このことから、1Svのガン死亡のリスクは喫煙のリスクの半分程度であることがわかります。
(ちなみに、このグラフの横軸は対数表示になっているため、相対リスクの値を読み取るのに少し苦労すると思います。統計学上、相対リスクは「被爆群と非被爆群の対数死亡率の差」として計算するため、このように対数でグラフ表示することがよくあります。こうすると、信頼区間が左右対称になって見やすいのです)

 相対リスクは、非被爆群の死亡率が低いと相対的に大きな値になりやすい値です。例えば非被爆群の死亡率が1%で被爆群の死亡率が5%の時、つまり被爆群の方が100例あたり4例死亡例が多い時、相対リスクは5になります。ところが非被爆群の死亡率が50%で、被爆群の死亡例が100例あたり4例多くて54%の時、相対リスクは1.08にしかなりません。そもそも非被爆群の死亡率が50%以上の時、相対リスクは2以上にはなり得ません。
 医師は一般的な疾患の発症率やガンの死亡率を知っていますし、いつも目の前で患者を看ているため、リスクの大きさを皮膚感覚で理解していて、相対リスクを正しく評価することができます。しかし一般人は「病気になるリスクが10倍!」とか「通常量の100倍の放射能!」などと言われると、驚いてビビッてしまうでしょう。
 つまり相対リスクという指標は、医師が患者に警告を与えたり(^^;)、マスコミが世間にインパクトを与えたりするためのものであり、一般人にリスクの大きさを正確に理解させるためのものではないのです。
 このためもし僕が、「原爆後遺症の悲惨さを訴えたいのでデータが欲しい」とか、「原子力発電所の建設に反対したいのでデータが欲しい」と相談されたら、迷わずこの相対リスクのグラフを使用するようにお薦めするでしょう。(^_-)

 相対リスクを正しく評価するためには、1091番の書き込みで山本先生が小児甲状腺ガンについて示されたように、被爆群と非被爆群の実際の死亡率と死亡例数を知る必要があります。ところが図4.1にはそれらのデータは明記されておらず、本文にも記載されていません。原論文にはそれらが明記されていると思いますが、この資料からはわからないため、それらを強引に推測してみましょう。

1093. Re[1092]:自衛のための勉強 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/30(水) 11:06:23
>通りすがり(^^;;さん

>>自衛するために勉強・・なのですが、放射線・病理・・・正直わからないことだらけ・・です(^^;;
 「非常時には、頭の軟らかい人の頭はますます軟らかくなり、頭の固い人の頭はますます固くなる」という言葉があります。災害のような非常時には、柔軟な思考ができる人は生き延びるために色々と工夫し、何とかして災害から立ち直るのに対して、柔軟な思考ができない人は、それまでの常識が通用しない事態に直面して立ち往生し、付和雷同して被害を益々大きくしてしまうという意味だと思います。

 わからないことに対して不安になるのは本能的な防衛反応であり、当然のことです。でもその不安を抱えたままでいると、専門家の言うことよりもマスコミ報道を信じたり、根拠の無いデマを信じたりしてしまいがちです。
 パンドラの箱と同じで、本能的な防衛反応である不安を無視するのではなく、不安の原因である「わからないこと」を徹底的に勉強し、正しい知識に基づく正しい対処法を学び、錯綜する情報を冷静かつ客観的に判断して、不安をコントロールするのが最善の策ではないかと思います。
 我々”圧倒的多数の庶民(^^;)”が今回の大災害に対して頭を柔軟にして向き合い、正しい知識と対処法を身につけ、災害から立ち直るように努力すると同時に、この災害から将来のための教訓をできるだけ多く読み取るようにすれば、長い目で見て災害を抑える大きな力になると思います。

1092. 無題 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/29(火) 23:30:19
レスありがとうございます。
諸氏の解説。的確でわかりやすく、助かっています。

自衛するために勉強・・なのですが、放射線・病理・・・正直わからないことだらけ・・です(^^;;

研究者・医療関係者は仕事で放射線とつきあっているので、まあ大丈夫だよ・・と経験則で物を言われることが多いと思うのですが。。。

さて、今回チェルノブイリを基にした算定の比較が取り上げられますが、チェルノブイリでの避難(手当て)はわが国のそれほど遅くなかったと思われますし、核燃料の量の単純計算では福島のほうが10倍ほどの量ですので、単純に比較はできないと考えるのですが、いかがでしょう?

また今回はまだまだ未公表データ(測定されてない(--;;データ)がありますし、これから収束が長期間・・になると思われれば、累積被爆量は想定ほど低くないと思われますが。。。

http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/kek07-2.pdf
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110323/plc11032317390009-n1.htm
http://www.chosunonline.com/news/20110328000014

1091. マスコミ 投稿者:山本直樹 投稿日:2011/03/29(火) 22:43:48
ヨウ素、セシウムについて、特にヨウ素についての健康被害の代表である小児甲状腺癌についてですが、チェルノブイリでの経験に基づく推算では、1000mSv(小児・甲状腺)では2〜5倍の発生率を示していました。また、この発生リスクの上昇は量-反応関係があり、たとえ1mSvでも発生の危険性が上昇します。ただし、統計的に有意差が出るのは200mSvほど以上とみられています。 これに基づいて計算すれば、 小児甲状腺癌の自然発生率は2.2/100万人。 現在の作業員を除いた最悪の条件下での推定被曝量(実測値に基づく)(内部・外部被曝あわせ)は5mSv(一般・全身・20日・南相馬市)程度と推算できます。甲状腺については、これに組織荷重係数(0.04)を乗算すべきとは思いますが、仮に被曝が全て甲状腺に集合したとすると0.75%のリスク上昇を認めます。 これにより、最悪の条件下に全福島県の小児全約40万人がいたとして、0.007人の甲状腺ガンの過剰発生が発生すると推測されます。 実際には実測値は既に低下を始めており考えにくいですが、もし最悪の観測値が1年間続いたとすると、0.11人の増加となります。
もちろん、世の中はわかりません。別の計算ですれば30万〜600万分の1の確率で過剰な甲状腺癌になると推定されますので、ジャンボ宝くじの2等〜3等レベル(100万 〜333万分の1)と同等のリスク増となります。 そのリスクを回避するには、やはり距離をとって退避し、汚染食品を忌避することが有効でしょう。不安がぬぐえないのは当たり前です。明らかに爆発している建屋の中に猛毒物が納まっているのですから。 無理に絶えずとも、不安を吐露していただくのは全く普通のことです。
必要なら、逃げるべきでしょう。リスクは0ではありませんから。 周囲もこの不安に対して十分に対応していくことが必要でしょう。 だからたとえ科学的に安全であっても安易に「安全だ」などと意見表明するのは、心理社会学的には軽率と私は思います。 科学的な部分と心理社会的な部分をごっちゃにしている人たちが少なからずいらっしゃるようです。 今後、原発がどうなっていくのか、私も不安です。だから色々勉強しています。 また、作業環境として現状の原発は最悪です。この状況ではミスの発生率は極めて高いです。 この難局を乗り切るには医学的配慮をすべき状況です。 マスコミのように不安を流布し、扇動し、何の解決も生まない責任追及、陰謀説等のデマ。そういうようなことをされる方がいることが今の私の最大の懸念です。

1090. Re[1089]:[1086]:疾患と人種差について−蛇足 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 22:04:08
東北大学では1962(昭和37)年に米国NCIとの共同研究として、日系米人(ハワイ、カリフォルニア)と本国人(主として宮城、広島、愛知)を対象とする胃、食道、結腸、肺癌の研究に着手し、瀬木教授退官後は愛知県がんセンターに引き継がれました。標本抽出による健常者を対象とする食生活、喫煙歴などの面接調査、患者・対照調査、病理組織学的研究等を含む大規模な研究でした。移民のがんデータを解析することの大きな利点の一つとして、発がんの要因の1つである遺伝要因は移民に伴う環境変化の影響を受けにくいことです。逆に、環境要因が大きな比重を占める発がんの場合には、がんの発生率やリスクが移民により有意に影響されることになります。日本人がアメリカへ移民することによって変化したがんのパターンは概ね次のようにまとめることができました。
移民によって減ったがん:
 食道がん、胃がん、肝臓がん、胆嚢・胆管がん
移民によって増えたがん:
 結腸がん、直腸がん、白血病、前立腺がん、
 精巣がん、乳がん、子宮体部がん、卵巣がん
移民によっても不変のがん:
 膵臓がん、肺がん、膀胱がん、腎臓がん
この研究によって生活習慣が、個々人におけるそれ以降のがんの発生パターンに強く影響を与えるのだろうと結論付けられています。

1089. Re[1086]:疾患と人種差について−蛇足 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 21:06:45
>通りすがり(^^;;さん
 またまた蛇足レスで失礼します。(^^)ゞ

>>専門外ですが、たとえば白血病などの発症について、欧米人と日本人は
>>異なります。被爆の病理も別と考えるのが普通だと思われるのですが、いかがでしょう。

 疾患と人種差の関係について、遺伝子研究者のデータ解析をお手伝いしたことがありますよ。
 疾患にもよりますが、一般に遺伝的な人種差よりも生活環境の差の方が大きいようですね。特にガンを含めた生活習慣病では、人種差よりも生活環境の差の方が何倍も大きいようです。
 実際、生活習慣病では、欧米で暮らす日本人と欧米人の差よりも、欧米で暮らす日本人と日本で暮らす日本人との差の方が断然大きいのです。「生活習慣病」だから、これは当然のことです。

 放射線に対する人体の反応に人種差があるとは思えませんが、たとえあったとしても、おそらく人種差よりも生活環境に依存する自然放射線の多少による差の方が大きいと思いますよ。(^_-)

1088. Re[1085]:たばこ、低用量放射線 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 18:19:43
>山本直樹先生

 横入りレスで、失礼します。m(..)m

 低放射線領域における放射線量とガンとの関係については、「放射線による発がん」資料に関連して説明するつもりですが、少しだけ前振りしておきます。(^_-)
 低放射線領域における放射線量とガンとの関係を複雑にしている要因のひとつに、自然放射線の存在があります。人間は自然放射線を1年間で2.4mSv(世界平均)ほど浴びているため、例えば50歳の人は単純計算で120mSvの放射線をすでに浴びていることになります。

 一般にガンの発症率は中年以後に高くなりますから、ガン患者は100mSv程度の放射線を浴びている可能性が高いことになります。このため放射線量とガンとの関係は、実はベースとして100mSv程度の放射線を浴びた上で、追加の放射線量とガンとの関係を計算していることになります。
 つまり地球上で観測している限り、人間を対象にした100mSv以下の領域における放射線量とガンとの関係は見つけられないことになりますし、100mSv〜500mSvあたりの放射線量とガンとの関係には不確定要素が多く含まれることになります。
 低放射線領域における放射線量とガンとの関係について諸説あるのは、このことが原因のひとつだと思います。

1087. Re[1086]:[1083]:[1082]:今晩から死の国。。。 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 18:10:55
通りすがり様
http://www.cdc.gov/cancer/hematologic/leukemia/statistics/race.htm
を見てください。
Leukemia
Incidence Rates* by Race/Ethnicity and Sex, U.S., 1999–2007
の図を見ていただければ白血病の罹患率、死亡率の人種差が分かります。
しかし放射線感受性に関する民族差は理論的になさそうですし、多分ないと思います。
病理については
Epidemiology and Pathology of Atomic Bomb Irradiation-induced Leukemia
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/18850/1/RR40_4_348.pdf
を参照してください。日本人でのそれぞれの種類に対する絶対危険率、相対危険率が
記されています。

1086. Re[1083]:[1082]:今晩から死の国。。。 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/29(火) 15:19:18
RESありがとうございます。
武田先生の提言はおっかけています。
専門外ですが、たとえば白血病などの発症について、欧米人と日本人は
異なります。被爆の病理も別と考えるのが普通だと思われるのですが、いかがでしょう。
まあ、いずれも、今となっては・・ということばかりだと思うのですが。。
ps
http://ninomiya-m.net/Dr.RobertGerl%5B1%5D.pdf
には掲載されていませんが、たしか
「原発事故作業員の自己幹細胞の事前採取と保管」
を提言されていましたが大きくリリースされてないのにも理不尽さを感じます。
参考)
http://blogs.yahoo.co.jp/tankou_2008/34413464.html

>山本直樹さん

>>通りすがり様
>>以下は武田先生の記述からです。先生の記述には一部医学的には間違えもありますが以下の記述はほぼ正しいと考えて良いと思います。
>>1965年のアメリカで起こった事故で、その時には25名の人が酸化プルトニウムの微粒子を吸い込んでいます。吸い込んだ量は、放射線の作業をする人として認められている許容値のさらに10倍程度であり、かなりの量を被曝しています。この時の酸化プルトニウムの粒径は0.21ミクロンから0.37ミクロンです。0.21ミクロンとは210ナノメートルですから、所謂“ナノ粒子”の領域です。微粒子としてもかなり小さい方に属します。当時、プルトニウムは非常に毒性が強いと言われていたので、この25人は直ちに肺癌になると予想されていました。しかし、事故後20年たった1985年の健康診断でも健康上の被害は認められていません。このほかに事故例は10ぐらいありますが、いずれも軽度の被曝で重篤な症状は見られていません。原理的に言えば、酸化プルトニウムの微粒子が呼気とともに肺に入ると、沈着しα線をだして周囲の細胞を痛めると考えられます.また半減期が長く、水に溶解しないので、一旦、肺に入った酸化プルトニウムは除去ができないと考えられます。しかし、それは机上の考えであり、事故例を見ますと、酸化プルトニウムの化学的、生理学的なダメージは小さく、α線による放射線障害が主でしょうプルトニウムの毒性が極めて強いのではないかという危惧があるのはわかりますが、あくまでも、わたくしたちは「正しい科学的な知識」によって行動を決めなければいけません。

1085. たばこ、低用量放射線 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 11:11:39
低放射線レベルの影響の程度が線形なのか否かが問題ですが、癌と放射線量との関連は”linear no-threshold (LNT) model”で説明されているようです。http://www.units.muohio.edu/ehso/radiationtraining/biologicaleffects/Risk.htm
それでも以下の表を見てください。たばこの害と放射線の害に大きな違いがあります。
マイアミ大学のHPからです。
Health Risk
Estimated Life Expectancy Lost
Smoking 20 cigarettes a day     6 years
Overweight by 15%           2 years
Alcohol (US average) 1 year
all accidents 207 days
All natural hazards 7 days
Occupational dose of 300 mrem/year 15 days
SI単位系に切り換わる以前はレム (rem) が使われており、次のとおりに換算できます。
1 Sv = 100 rem = 100,000 mrem (ミリレム)


1084. 「放射線による発がん」資料について−2 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 10:32:10
・評価項目(endpoint)——疫学用語では帰結(outome)——について
 この資料では、放射線が人体に及ぼす影響の評価項目を各種のガンによる死亡にしています。これについては、ガン発生の把握が難しいので、ガン死亡を代用評価項目(surrogate endpoint)にしたと説明されています。
 しかし「endpoint」とは元々は死亡のことであり、疾患による死亡が真の評価項目(true endpoint)であり、その代用評価項目として疾患の発症や症状の発症を用いるのが普通です。このため、ガン死亡は真の評価項目といえます。
 しかしガン死亡を評価項目にしたため、評価可能な例数が少なくなり、適用できる統計解析手法が限られ、結果の信頼性も少し低くなっているのは確かです。
 例えば例数が沢山必要な多変量解析を適用することが難しくなり、背景因子の影響を補正することができなくなります。

 またこれだけ長期間にわたって被験者の生死を観測したのなら、普通は生命表解析(生存時間解析)手法を用いてリスクを分析します。しかしこの研究が開始された頃はまだ生命表解析は一般的ではなかったので、この資料では用いられていません。
 実は疫学分野では慣習的に生命表解析は利用されず、現在でもあまり用いられません。以前、疫学研究者の方の研究のお手伝いをしたことがありますが、生命表解析のことは知識としては知っていても、実際に利用したことはないということでした。
 もし僕がこの研究のデータ解析を手伝う立場にいたとしたら、必ず生命表解析を薦めたと思います。

1083. Re[1082]:今晩から死の国。。。 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/29(火) 07:32:30
通りすがり様
以下は武田先生の記述からです。先生の記述には一部医学的には間違えもありますが以下の記述はほぼ正しいと考えて良いと思います。
1965年のアメリカで起こった事故で、その時には25名の人が酸化プルトニウムの微粒子を吸い込んでいます。吸い込んだ量は、放射線の作業をする人として認められている許容値のさらに10倍程度であり、かなりの量を被曝しています。この時の酸化プルトニウムの粒径は0.21ミクロンから0.37ミクロンです。0.21ミクロンとは210ナノメートルですから、所謂“ナノ粒子”の領域です。微粒子としてもかなり小さい方に属します。当時、プルトニウムは非常に毒性が強いと言われていたので、この25人は直ちに肺癌になると予想されていました。しかし、事故後20年たった1985年の健康診断でも健康上の被害は認められていません。このほかに事故例は10ぐらいありますが、いずれも軽度の被曝で重篤な症状は見られていません。原理的に言えば、酸化プルトニウムの微粒子が呼気とともに肺に入ると、沈着しα線をだして周囲の細胞を痛めると考えられます.また半減期が長く、水に溶解しないので、一旦、肺に入った酸化プルトニウムは除去ができないと考えられます。しかし、それは机上の考えであり、事故例を見ますと、酸化プルトニウムの化学的、生理学的なダメージは小さく、α線による放射線障害が主でしょうプルトニウムの毒性が極めて強いのではないかという危惧があるのはわかりますが、あくまでも、わたくしたちは「正しい科学的な知識」によって行動を決めなければいけません。

1082. 今晩から死の国。。。 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/29(火) 00:35:24
プルトニウムの内部被曝についての調査資料ってどこかにないでしょうか??

1081. 「放射線による発がん」資料について−1 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/28(月) 17:25:08
・寿命調査集団について
 寿命調査集団の内訳は被爆者群と非被爆者群(対照群)が同数であり、しかも性と年齢が一致するように選択されています。

 本来の前向きコホート研究では、被験者を無作為に同数の2群に分け、一方に放射線を照射し、もう一方には放射線を照射しないという無作為割付を行います。そしてさらに被験者も観測者も、誰が放射線を照射され、誰が照射されなかったかをわからない状態にする、二重盲検試験にするのが理想です。
 しかし放射線が人体に及ぼす影響を調べる研究では、このような厳密な試験方法は倫理的に行うことができません。これはこの種の研究の特徴であり、それによって研究方法に制約が生じ、結果の信頼性に一定の制限が生じます。
 こういった制約条件下では、被爆者群と非被爆者群の背景因子——集団を特徴付ける因子であり、結果に影響を及ぼす可能性がある——をできるだけ均等にするために、性と年齢が一致するように被験者を選択するということを、次善の策として行います。
 性と年齢は被験者集団を特徴付ける最も重要な背景因子であり、これらが2群で均等ならば、他の背景因子——例えば、がん発生に強く影響すると考えられる喫煙率——も均等になる可能性が高いからです。

 この方法は最近の医学研究では常識になっていますが、寿命調査が開始された1950年当時にこの方法を用いたのは驚異的です。医薬品の承認許可規準に二重盲検による比較対照試験(対照群を置いた比較試験)が必須になったのは1967年からであり、それ以前は「三段論法」ならぬ「雨乞い三タ論法(^^;)」による試験(症例研究試験)でも医薬品は許可されていました。
 「雨乞い三タ論法」とは、「雨乞いをした→雨が降った→雨乞いが効いた」という似非三段論法であり、これを応用した症例研究試験では、対照群を置かず、薬剤を使用した群だけで試験を行い、「薬剤を使用した→病気が治った→薬剤が効いた」という結論を強引に導き出すことができます。

 困ったことに現在でも、民間療法や健康食品では、この「雨乞い三タ論法」による試験結果が大手を振ってまかり通っています。(~o~)

1080. 「放射線による発がん」資料について−前置き 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/28(月) 12:26:16
>山本先生

 紹介していただきました「放射線による発がん」の資料について、統計学に関係した事柄を解説させていただきます。釈迦に説法的な説明も多々あると思いますが(^^;)、医学研究者以外の人にもある程度は理解できるように、常識的な事柄もあえて説明することにします。
 なおこの文献は暗号化されている上にセキュリティがかかっていて、印刷することもコピー&ペーストをすることもできません。そして81ページから89ページまでしかないようですので、そのことを前提にして説明します。

 まず最初に、1945年に広島、長崎で被爆した原爆被爆者を中心にした12万人もの寿命調査集団を、1950年から現在まで辛抱強く追跡調査されている原爆傷害調査委員会・放射線影響研究所(以後、放影研)の研究者並びにスタッフの方々の熱意と努力に、最大級の敬意を表したいと思います。
 この資料を見ていると、多くの被爆者の犠牲から得られた貴重なデータを、是が非でも人類のために役立てなければならないという関係者の方々の並々ならぬ熱意と執念が感じられ、頭が下がります。
 この貴重なデータと比べるのはおこがましい限りですが、現在、産婦人科学界が5年間かかって集めた28万例の妊産婦のデータ解析のお手伝いをしているので、こういった大規模かつ長期間の研究の大変さが多少はわかるような気がします。
 そういった敬意を常に払いながらも、できるだけ客観的かつ科学的に内容を検討していきたいと思います。

1079. 当館のスタイルシートを一部変更 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/27(日) 21:39:49
 当館のスタイルシートを一部変更し、行間を少し広くしてみました。これは、老眼のせいで、これまでの行間では目がチラチラするようになったからです。(^^;)
 行間を広くすると、文章は読みやすくなるものの、長い文章を読む時にやたらとスクロールしなければなりません。もし不都合があるようでしたら、遠慮なく文句を書き込んでください。老眼の許す限り、対応させていただきます。m(^^;)m

1078. Re[1076]:放射線による発がん 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/27(日) 20:43:23
>山本直樹先生

 貴重な資料を紹介していただき、ありがとうございました。

 この資料の内容や図表は放射線被害に関する各種の文献で引用されていて、”二次資料は信用するな、必ず一次資料にあたれ!できれば生データを調べろ!!”という鉄則に従い、僕も原論文を探していたところでした。

 これから内容を拝見し、僕にわかる統計学用語があれば解説させていただきます。

 疫学分野の論文は臨床分野の論文とは異なる用語を使用し、異なる統計手法を使うため、臨床分野の研究者の方にはわかりづらいところがありますよね。(^^;)

                            とものり
P.S.
 ”二次資料は信用するな、必ず一次資料にあたれ!できれば生データを調べろ!!”という鉄則に従わなかったばっかりに、何度も痛い目にあってきたせいで、僕は二次資料どころか三次資料以下の情報であるマスコミ情報はほとんど信用していません。

 自分で一次資料を引用する時でも、著者の主張は無視して、自分に都合の良いところだけを引用することが多々ありますもんね。(^^;)

1077. Re[1075]:寺田寅彦 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/27(日) 20:34:25
>山本直樹先生

 大変興味深い寺田寅彦の随筆を紹介していただき、ありがとうございました。m(..)m

 ドクトル・マンボウやムツゴロウが理学部の学生の教養科目だとすれば、寺田寅彦は物理学や数学専攻の学生の専門課程でして、物理学志向が強かった僕は彼のファンでした。

 だから彼の随筆はけっこう読んだつもりでしたが、紹介していただいた「天災と国防」と「災難雑考」は、恥ずかしながら読んだ記憶がありませんでした。

 そこで大昔に読んだ寺田寅彦の随筆集を探し出して調べたところ、「災難雑考」は収載されていませんでしたが、「天災と国防」はちゃんと収載されていました。この随筆集を読んだのは学生時代であり、当時はやはり科学関係の事柄に興味を持っていたので、この随筆のことはすっかり忘れていたようです。

 今、あらためて読んでみて、寺田寅彦の慧眼と深い洞察力にただただ敬服するばかりです。学生時代に彼の作品を読んで、生意気にも彼の言わんとしていたことがわかったような気になっていた自分が恥ずかしい限りです。

 彼ほどの深い洞察力と透徹した思考の持ち主が書いた文章は、僕のような青二才が読んでさえ教えられることが多々ありますが、人生経験をつめばつむほどより味わい深くなるのでしょうね。

 山本先生のおかげで、この年になってあらためて寺田寅彦の偉大さを再認識し、二度惚れして大ファンになりました。どうもありがとうございました。m(..)m

 ちなみに「天災と国防」の全文は、青空文庫の次のページで読むことができます。大震災で世間が騒然としている今こそ、鋭い先見性と深い洞察力に溢れたこの作品をみんなに読んでもらいたいですね。

・青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/index.html)
 →寺田寅彦→178. 天災と国防(新字新仮名、作品ID:2509)

  http://www.aozora.gr.jp/cards/000042/card2509.html

                            とものり

1076. 放射線による発がん 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/27(日) 11:12:51
杉本さん
広島、長崎の被爆者の方々の疫学調査から得られたデータです。(一次資料に近いと思います。)所々統計学的に難しい言葉が入っているのでこの文献の解説をお願いできましたら幸いです。
http://www.iryokagaku.co.jp/frame/03-honwosagasu/337/337_4.pdf

1075. 寺田寅彦 投稿者:山本直樹 投稿日:2011/03/27(日) 09:37:11
杉本さん
いつもいろいろ教えていただいて感謝です。先日申し上げたように図書館で寺田寅彦随筆集を読んでいました。御存じのように寺田寅彦は,理学博士でありながら夏目漱石との親交が深く,多くの随筆を残した文学者でもあります。寅彦の随筆は,科学者として森羅万象に興味を示すとともに,人間味あふれる感性で,多くのファンを持っています。物理学者、随筆家、俳人として知られる寅彦は、 災害や防災にも多くの著作を残している。進まない地震予知、手遅れになりがちな災害への対応を見なおすため、古くて新しい寅彦の視点がいま甦るようです。
「天災と国防」より長くなりますが以下引用します。
 戦争はぜひとも避けようと思えば人間の力で避けられなくはないであろうが、天災ばかりは科学の力でもその襲来を中止させるわけには行かない。その上に、いついかなる程度の地震暴風津波洪水が来るか今のところ容易に予知することができない。最後通牒も何もなしに突然襲来するのである。それだから国家を脅かす敵としてこれほど恐ろしい敵はないはずである。

 人類が進歩するに従って愛国心も大和魂もやはり進化すべきではないかと思う。砲煙弾雨の中に身を賭して敵の陣営に突撃するのもたしかに貴い日本魂であるが、○国や△国よりも強い天然の強敵に対して平生から国民一致協力して適当な科学的対策を講ずるのもまた現代にふさわしい大和魂の進化の一相として期待してしかるべきことではないかと思われる。天災の起こった時に始めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫や鳥獣でない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である。
この随筆が書かれたのは1934(昭和9)年11月。年表をひもとくと、満州事件(1931)、五・一五事件(1932)、国際連盟脱退・滝川事件(1933)、そして陸軍パンフレット事件(「国防の本義と其強化の提唱」というパンフレットにより陸軍が政治に介入)(1934)といった事件が続いています。そうした軍国主義の風潮への批判に加えて、この随筆を書く直接のきっかけとなった事件は、1934年9月の室戸台風だと思います。室戸岬では瞬間最大風速84.5m/sという日本気象観測史上最高記録を記録し、死者2702名、行方不明者334名をだした超大型台風です。実は室戸測候所ではこの途方もない台風の襲来を連絡しようとしますが、唯一の通信手段である郵便局の有線が停電で使用できませんでした。軍事優先のために防災システムがお粗末だったのです。これは人災でもあります。こうした事実を知ると、寺田寅彦の冷静ではあるが大変強い怒りに満ちた筆致が印象に残ります。彼はおそらくこう言いたかったのではないでしょうか。「天災への対策を講ぜず、不合理な戦争を熱狂的に支持する日本国民は昆虫や鳥獣と同等の存在である。」 昆虫・鳥獣に失礼な言い方だという留保はつけますが… 当時の軍国主義的な風潮に対する、これほど合理的で痛烈な批判にはなかなかお目にかかれません。
「災難雑考 第3回 寺田寅彦」(昭和十年七月、中央公論)
古いシナ人の言葉で「艱難(かんなん)汝(なんじ)を玉にす」といったような言い草があったようであるが、これは進化論以前のものである。植物でも少しいじめないと花実をつけないものが多いし、ぞうり虫パラメキウムなどでもあまり天下泰平だと分裂生殖が終息して死滅するが、汽車にでものせて少しゆさぶってやると復活する。このように、虐待は繁盛のホルモン、災難は生命の醸母であるとすれば、地震も結構、台風も歓迎、戦争も悪疫も礼賛(らいさん)に値するのかもしれない。日本の国土などもこの点では相当恵まれているほうかもしれない。うまいぐあいに世界的に有名なタイフーンのいつも通る道筋に並行して島弧が長く延長しているので、たいていの台風はひっかかるような仕掛けにできている。また大陸塊の縁辺のちぎれの上に乗っかって前には深い海溝(かいこう)を控えているおかげで、地震や火山の多いことはまず世界じゅうの大概の地方にひけは取らないつもりである。その上に、冬のモンスーンは火事をあおり、春の不連続線は山火事をたきつけ、夏の山水美はまさしく雷雨の醸成に適し、秋の野分(のわき)は稲の花時刈り入れ時をねらって来るようである。日本人を日本人にしたのは実は学校でも文部省でもなくて、神代から今日まで根気よく続けられて来たこの災難教育であったかもしれない。

1074. Re[1073]:[1065]:[1063]:[1062]:福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/26(土) 03:16:34
すべてはあとで歴史として検証される・・と思うのですが、モノの買い占めで現れたように、真実はより醜い・・状態を生むのかな・・です。
どちらの道が正しいのか。。。
まさにパンドラの箱ですね。。

1073. Re[1065]:[1063]:[1062]:福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:山本直樹 投稿日:2011/03/24(木) 19:55:48
通りすがり様、皆様
”高揮発性のため、水に含まれたヨウ素は煮沸することで幾分取り除くことができる”、と言いましたが、固体状のヨウ素分子(I2)の場合でした。水中に存在するヨウ素では、揮発効果はほとんどないため、煮沸はお勧めできません。お詫びの上、訂正させて頂きます。申し訳ありませんでした。なお、家庭用の浄水器の効果も、ほとんどないと言えるでしょう。水をペットボトルなどで取り置きし、放射線性ヨウ素の半減を待つくらいして手はないと思います。

1072. 放射線の害とタバコの害−蛇足 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/24(木) 15:44:14
 1070番の「放射線の害とタバコの害」と1071番の「パンドラの箱」について、蛇足を少々。(^_-)

 これらの書き込みを読んで、もしかすると僕が原子力発電所賛成論者だと誤解する人がいるかもしれません。

 そうではなく、マスコミの過剰報道に煽られて感情的に付和雷同するのはやめて、正確なデータをできるだけ沢山手に入れ、公平かつ客観的な目でそれを検討して、冷静に判断した方がいいですよ、と言っているだけです。

 僕自身は、技術的にも社会的にも、原子力発電所を完璧にコントロールする方法がまだ確立されていないのなら、それが確立されるまで原子力発電所を大規模に利用するのは待った方が良いと思います。そして人類の知恵ではそれが永遠に確立できないことがわかったのなら、核兵器と同様に全面的に廃絶した方が良いと思います。

 それと同様にタバコについても、タバコの害を十分に理解した上で、冷静に判断して喫煙する人はそれでかまわないと思います。しかし本人は吸いたくないのに、喫煙者による受動喫煙で健康被害を受ける人がいるのは理不尽です。

 だから完璧な分煙社会を確立すべきだと思いますし、人類の知恵ではそれが永遠に確立できないようなら、核兵器と同様に、タバコの生産と販売を全面的に廃絶した方が良いと思います。(^^;)

 今回の原発事故に対するマスコミの過剰報道と、それに対する世間の反応を見ていると、放射線の害に関する公平かつ客観的な理解が社会に普及し、電力会社が原子力発電所の情報を公明正大に公開し、みんなが原子力発電所の是非について冷静に判断できるようになるまでは、原子力発電所の大規模な利用は止めておいた方が良いような気がしますね。(~_~)

                            とものり

1071. Re[1068]:パンドラの箱? 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/24(木) 12:16:47
>えちごやさん

 えちごやさん、久しぶり!(^o^)/

 タイムリーな書き込みをありがとうございました。m(..)m

>>マスコミ、政府、企業、〇〇専門なんとか教授、等々、情報が錯綜しているように思います。

 放射線の専門家にも医学分野、物理学分野、化学分野、工学分野等々、色々な分野の人がいます。

 マスコミ報道は論外として、基本的に、放射線による健康被害については医学分野の専門家の方の意見が最も信頼性が高く、放射性物質や放射線の物理学的性質については物理学分野の専門家の方の意見が、化学的性質については化学分野の専門家の方の意見が、原子炉の構造については工学分野の専門家の方の意見が、福島第一原子力発電所の構造については、原発内に自主的に残って事故処理をされているFukushima50の人達の意見が最も信頼できます。

 一般の人が心配しているのはやはり健康被害でしょうから、医学分野の専門家の意見を信頼してください。

 特に、場所的に福島原発に近く、原発で事故処理作業をした人や、放射線被害を心配している人達を受け入れて治療にあたっている、自治医科大学医学部の専門家の方の意見が最も信頼できます。

 その専門家の人達の意見については、1058番の書き込みで山本先生に紹介していただいた、自治医科大学の研修会の動画を是非ご覧ください。(^_-)


 えちごやさんが言うように、原子力はパンドラの箱です。人類がこのパンドラの箱を開けてしまったからには、もう二度と箱を閉めて忘れ去ることはできません。

 そうなった以上、原子力の性質を徹底的に研究し、どのような有効性と危険性があり、どのように取り扱うべきかを徹底的に検討すると同時に、そのことを世界中の人達に周知徹底し、人類の手で完璧にコントロールする方法を学ぶ以外には対処法はありません。

 そのためにも原発に対する批判や怒りはとりあえず脇に置いて、一刻でも早く原発事故の処理が終了し、原発騒ぎが終息するようにみんなで協力すべきです。

 そしてこの原発事故から得られた貴重なデータを元にして研究を重ね、将来のための教訓をできるだけ多く読み取るように努力しましょう。

 東京電力と行政に対する批判は、その後でじっくりすれば良いことです。(^_-)

                            とものり

1070. 放射線の害とタバコの害 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/24(木) 11:47:03
 1066番に書き込んだ内容の追伸として、放射線の害とタバコの害を比べてみましょう。

 ご存知のように、タバコは喫煙者本人だけでなく、その周囲で間接的にタバコを吸わされる受動喫煙者にも害を及ぼします。

 受動喫煙は、喫煙者が吐き出すタバコの煙——主流煙が吐き出された呼出煙——を吸わされるだけでなく、タバコから漂う煙——副流煙——も吸わされます。副流煙はフィルターを通していないため、主流煙よりも危険だといわれています。

 しかし、とりあえず受動喫煙によるリスクを喫煙によるリスクの半分以下と仮定すると、ちょうど1Svの放射線と同じ慢性毒性(発ガン性)になります。

 1年間の累積被曝量が1Svということは、1日あたりの被曝量は1000mSv/365日=約3mSvになります。普通の喫煙者は24時間ぶっ続けでタバコを吸っているわけではないでしょうから、1日あたり1時間タバコを吸っているとすると、喫煙中は3mSv/hr=3000μSv/hrの放射線を周囲の人間に浴びせていることに相当します。

 つまり喫煙者は3mSv/hr=3000μSv/hrの放射線を放出している放射性物質と同じであり、本人と周囲の人間にそれだけの健康被害を与えていることになります。

 このことからすると、原発から50マイル(約80キロメートル)外に避難したアメリカ軍の行動が理にかなっているとお考えの方は、喫煙者の周囲80キロメートルには近づかないようにし、喫煙者の周囲80キロメートル以内で取れた野菜や牛乳や水を摂取しないようにした方が良いでしょうね。

 またそのような方には、人間が23人以上集まる場所の周囲80キロメートル以内にも近づかないようにすることもお勧めします。(^_-)

 要は社会不安や集団パニックが起きなければ良いのですから、このデータに基づいて喫煙者の周囲80キロメートル外に避難する人がいても、周囲の人を巻き込んで慌てて行動するのではなければ、僕はあえてその行動を止めませんよ。(^_-)

                            とものり

1069. Re[1067]:公表データとマスコミ報道 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/24(木) 11:22:12
>通りすがり(^^;;さん

>>ただ、公表されているデータが正しいければ・・・という前提条件つきですが。。。

 公表されているデータよりも、むしろマスコミが報道しているデータの方がいい加減ですね。(^^;)

 マスコミは、インパクトを与えるために、常に放射線量や放射能量の最大値を報道します。

 例えば1061番の書き込みで紹介したMonreal教授のスライドの、17ページ目の左側のグラフを見てくだい。

 このグラフは公表された放射線量のデータに基づいて作成されたものですが、所々に鋭いピークがあることがわかると思います。これは原発の建屋の爆発や火災が発生し、原子炉から周囲に放射性物質が放出された時に検出された放射線量を表します。マスコミが発表するのは、このピーク時の値なのです。

 しかし周囲に放出された放射性物質はすぐに拡散して薄められるため、放射線量はすぐに低下します。そして放射線量を減少しつつ空気中に漂い、最終的には地面に落ちて土壌を汚染します。しかし放射性ヨウ素の放射能はすぐに低下し、放射性セシウムだけが、最大で人間23人分(^^;)の放射線量である0.5μSvを30年間ほど放出し続けます。

 しかしこのグラフのデータを観測した時点では、まだ原子炉からは持続的に微量の放射性物質が放出され続けていたため、放射線量のピークが落ちた後でも、0.1mSv=100μSv程度の放射線が観測され続けています。

 現在、原子炉で行われている放射性物質の封じ込め作業が成功すれば、放射性物質の放出は止まり、その後は土壌に残された放射性セシウムが放出する放射線だけが問題になります。

 土壌や野菜から検出されたと報道された放射能量も、これと同様に最大値です。

 放射能量の測定は、色々な場所の土や野菜を少量サンプリングして行い、その結果を公表します。放射性物質の汚染濃度には必ず濃淡がありますから、色々な値が公表されますが、マスコミが発表するのは必ずその最大値です。

 つまりマスコミが発表する放射線量や放射能量は、瞬間最大風速のようなものだと思えば良いでしょう。

 アメリカに住むMonreal教授が放射線量のグラフを作成できたように、これらのデータは常に公表されています。しかしけしからんことにマスコミは、インパクトを与えるために、あえてその中の最大値しか報道しないのです。

 今回の原発騒ぎが終息して世間が冷静になったら、おそらくマスコミは、自らが過剰報道によって社会不安を煽り立てたことなど知らん顔をし、世間の過剰反応が社会不安と集団パニックを招き、被災者に被害をもたらしたことを指摘し、その原因をインターネットなどによるデマやチェーンメールのせいにして批判するでしょう。

 第二次世界大戦の時も、愛国心を煽り立てて、国民を戦争に向かわせた張本人はマスコミであるにもかかわらず、敗戦後は掌を返したように「戦争は間違いだった」と指摘し、戦争を起こした犯人を軍部のせいにして批判し、自らは報道規制による犠牲者だと主張しました。

 だから僕は、マスコミが大嫌いなのです。凸(-"-)

                            とものり

1068. パンドラの箱? 投稿者:えちごや 投稿日:2011/03/24(木) 09:53:46
えちごやです、

マスコミ、政府、企業、〇〇専門なんとか教授、等々、情報が錯綜しているように思います。

一修理屋の私としましては、なんとも高度過ぎて理解が追い付けないところです。^^;

しかし、単純に「使いこなせない道具は持つべきではない」とゆう事ぐらいは判ります。


また、兄夫婦と義姉一族が福島第一原発より100kmぐらい離れた宇都宮市近辺に住んでおりますので、
少々数十年後への影響を心配してはいます。
(当人達はのんきに構えてますが・・・^^;;;

※リアルタイムな情報としては、

福島第一原発ライブカメラ(放射線は見えませんのであまり意味が無いです)

http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/camera/index-j.html


文部科学省、原子力安全課、空間放射線量率一覧

http://www.bousai.ne.jp/vis/index.php

が直接知ることの出来るデーターでしょうか、(便利な世の中ですね)
なぜか福島第一・第二原発のモニタリングポストは事故より数日前からの
調整中になっているままです。


参考に下記URLの情報も気にしてはいます。

中部大学教授 武田邦彦氏の意見
http://takedanet.com/

失敗学会HP掲載 日本システム安全研究所 吉岡律夫氏の意見
http://www.shippai.org/shippai/html/index.php?name=news559


最後に、
東北地方太平洋沖地震の被害に遭われた全ての皆様へ、心よりお見舞い申し上げます。
一日も早い御復興をお祈り申し上げます。

1067. Re[1066]:[1063]:放射性物質による土壌の汚染 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/24(木) 02:15:34
的確な解説ありがとうございます。
よりオープンなページで告知したいですね。

ただ、公表されているデータが正しいければ・・・という前提条件つきですが。。。

※都合よく基準値30倍ですから。。ね。。

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001558e-img/2r9852000001559v.pdf


>とものりさん

>>>通りすがり(^^;;さん
>>
>> すでに山本先生が的確なレスをされていますが、僕も蛇足を少々。(^^;)
>>
>> 現在、マスコミで報道されているところでは、福島県の土壌から検出された放射性セシウムの放射能は、最大で163kBq/kg——例によってマスコミは、騒ぎを煽るためにこれを16万3千ベクレルと報道しています凸(-"-)——です。
>>
>> 放射性ヨウ素も検出されていますが、放射性セシウムの半減期——放射能が半分になるまでの時間——が30年に対して、放射性ヨウ素の半減期は8日ですから、とりあえず放射性セシウムによる土壌の放射能汚染だけを考えることにしましょう。
>>
>> 放射性セシウムを1Bq食べて体内に取り込んだ時に、体内被曝する放射線量は0.019μSvです。そして1mの距離に1Bqの放射能を持つ放射性セシウムがある時の放射線量は、0.0000055μSvです。
>>
>> 放射性セシウムを含んだ土を1kgも食べる人はいないでしょうから(^^;)、後者の値を計算に用いると、163kBqの放射能を持つ土1kgから受ける放射線量は163×1000×0.0000055=0.8965μSvになります。
>>
>> 放射線量は距離の2乗に反比例して減少し、放射性セシウムによる汚染は表面から数センチ程度ですから、1kgの土というのはかなり広い範囲の土地になるはずです。
>>
>> まあキリが良くて覚えやすいように、163kBq/kgの放射能を持つ土の上に立っている人間が受ける放射線量は、多くても約0.5μSvとしておきましょう。
>>
>> 1062番の書き込みに書いたように、人体は約4kBqの放射能を帯びています。つまり人体そのものが放射能を持っているわけですから、同じような計算をすると0.022μSv程度の放射線を放出していることになります。
>>
>> ということは、自分の周囲に23人ほどの人間が集まっていると、163kBq/kgの放射能を持つ土の上に立っているのと同じ約0.5μSvの放射線を浴びることになります。
>>
>> アメリカ軍が50マイル外に避難したのは、おそらく福島原発周辺で事故処理作業をしている勇敢な日本人の人口密度がアメリカに比べて異常に高く、人体から放射される放射線量が高くなることに恐れをなしたからでしょう。(^^;)
>>
>>
>> 1058番で山本先生が紹介された自治医大の資料を観ていただくとわかりますが、人体は100mSv程度の放射線を浴びても健康被害は出ません。
>>
>> これは、人体が放射線で受けた組織の損傷を短時間で修復してしまうからです。この修復作用のお陰で、放射線だけでなく薬物にも閾量——この値以下の量の放射線または薬物を体内に取り込んでも影響が全く表れない量——というものが存在します。
>>
>> もちろん長期間にわたって持続的に放射線を浴びたり、持続的に薬物を使用してしていると身体に障害が発生します。これを「慢性毒性」といい、その閾量は普通の閾量の10〜100分1程度になります。
>>
>> 放射線の場合、1年間の累積放射線量が1Sv=1000mSv以上になると慢性毒性が表れると言われています。その慢性毒性は主に発ガン性であり、1年間で1万人あたり2〜5人程ガンの発生が増加します。
>>
>> 例えば肺ガンは1年間で1万人あたり12人くらい発生しますが、喫煙によって発ガンのリスクが2〜10倍ほど増加し、1年間で1万人あたり12人くらいガンの発生が増加します。
>>
>> つまり1Svの放射線の慢性毒性は、タバコの慢性毒性の半分以下ということになります。マスコミがまるで致命的な被害のように大騒ぎをしている「健康被害」というのは、実はこの程度のことなのです。
>>
>> 以上のことから、放射性セシウムによる土壌の放射能汚染では、放射線による健康被害はないことがわかると思います。
>>
>> 土壌の放射能汚染が問題になるのは、この土壌で育ったほうれん草などの植物が放射能を含み、その量が基準値を超えてしまう可能性があるからです。
>>
>> 1062番の書き込みに書いたように、放射能が基準値程度の食品を1年間食べ続けても健康被害はなく、基準値の20倍以上の放射能を持つ食品を1年間食べ続けない限り、健康被害はありません。
>>
>> しかし放射能が基準値を超えると出荷できず、農家には経済的な被害があります。
>>
>> そしてもっと憂慮すべき問題は、マスコミの過剰報道に煽られて社会不安が増大し、集団パニックによる二次災害を誘発し、いわれなき差別を生む恐れがあるということです。
>>
>> 事実、福島県の被災者に援助物資を運ぶトラックの運転手が、放射線を恐れて援助物資を運ぶことを拒否するという事態がすでに発生しています。これによって被災者が受ける被害は、放射線による幻の被害と違って現実のものであり、まさに二次災害と呼ぶべきものです。
>>
>> このような事態を回避するには、放射線に関する正しい知識を世間に広めて、マスコミによる過剰報道に煽られず、みんなが冷静に事態に対処できるようにすることです。
>>
>> そのことにわずかでも助けになればと思い、今、放射線に関する一連の書き込みをしています。
>>
>> 僕としては、せめてこの会議室の常連さんの中からは、集団パニックによる二次災害の加害者や被害者を出したくないですからね。(^_-)
>>
>>                            とものり
>>

1066. Re[1063]:放射性物質による土壌の汚染 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/23(水) 22:40:25
>通りすがり(^^;;さん

 すでに山本先生が的確なレスをされていますが、僕も蛇足を少々。(^^;)

 現在、マスコミで報道されているところでは、福島県の土壌から検出された放射性セシウムの放射能は、最大で163kBq/kg——例によってマスコミは、騒ぎを煽るためにこれを16万3千ベクレルと報道しています凸(-"-)——です。

 放射性ヨウ素も検出されていますが、放射性セシウムの半減期——放射能が半分になるまでの時間——が30年に対して、放射性ヨウ素の半減期は8日ですから、とりあえず放射性セシウムによる土壌の放射能汚染だけを考えることにしましょう。

 放射性セシウムを1Bq食べて体内に取り込んだ時に、体内被曝する放射線量は0.019μSvです。そして1mの距離に1Bqの放射能を持つ放射性セシウムがある時の放射線量は、0.0000055μSvです。

 放射性セシウムを含んだ土を1kgも食べる人はいないでしょうから(^^;)、後者の値を計算に用いると、163kBqの放射能を持つ土1kgから受ける放射線量は163×1000×0.0000055=0.8965μSvになります。

 放射線量は距離の2乗に反比例して減少し、放射性セシウムによる汚染は表面から数センチ程度ですから、1kgの土というのはかなり広い範囲の土地になるはずです。

 まあキリが良くて覚えやすいように、163kBq/kgの放射能を持つ土の上に立っている人間が受ける放射線量は、多くても約0.5μSvとしておきましょう。

 1062番の書き込みに書いたように、人体は約4kBqの放射能を帯びています。つまり人体そのものが放射能を持っているわけですから、同じような計算をすると0.022μSv程度の放射線を放出していることになります。

 ということは、自分の周囲に23人ほどの人間が集まっていると、163kBq/kgの放射能を持つ土の上に立っているのと同じ約0.5μSvの放射線を浴びることになります。

 アメリカ軍が50マイル外に避難したのは、おそらく福島原発周辺で事故処理作業をしている勇敢な日本人の人口密度がアメリカに比べて異常に高く、人体から放射される放射線量が高くなることに恐れをなしたからでしょう。(^^;)


 1058番で山本先生が紹介された自治医大の資料を観ていただくとわかりますが、人体は100mSv程度の放射線を浴びても健康被害は出ません。

 これは、人体が放射線で受けた組織の損傷を短時間で修復してしまうからです。この修復作用のお陰で、放射線だけでなく薬物にも閾量——この値以下の量の放射線または薬物を体内に取り込んでも影響が全く表れない量——というものが存在します。

 もちろん長期間にわたって持続的に放射線を浴びたり、持続的に薬物を使用してしていると身体に障害が発生します。これを「慢性毒性」といい、その閾量は普通の閾量の10〜100分1程度になります。

 放射線の場合、1年間の累積放射線量が1Sv=1000mSv以上になると慢性毒性が表れると言われています。その慢性毒性は主に発ガン性であり、1年間で1万人あたり2〜5人程ガンの発生が増加します。

 例えば肺ガンは1年間で1万人あたり12人くらい発生しますが、喫煙によって発ガンのリスクが2〜10倍ほど増加し、1年間で1万人あたり12人くらいガンの発生が増加します。

 つまり1Svの放射線の慢性毒性は、タバコの慢性毒性の半分以下ということになります。マスコミがまるで致命的な被害のように大騒ぎをしている「健康被害」というのは、実はこの程度のことなのです。

 以上のことから、放射性セシウムによる土壌の放射能汚染では、放射線による健康被害はないことがわかると思います。

 土壌の放射能汚染が問題になるのは、この土壌で育ったほうれん草などの植物が放射能を含み、その量が基準値を超えてしまう可能性があるからです。

 1062番の書き込みに書いたように、放射能が基準値程度の食品を1年間食べ続けても健康被害はなく、基準値の20倍以上の放射能を持つ食品を1年間食べ続けない限り、健康被害はありません。

 しかし放射能が基準値を超えると出荷できず、農家には経済的な被害があります。

 そしてもっと憂慮すべき問題は、マスコミの過剰報道に煽られて社会不安が増大し、集団パニックによる二次災害を誘発し、いわれなき差別を生む恐れがあるということです。

 事実、福島県の被災者に援助物資を運ぶトラックの運転手が、放射線を恐れて援助物資を運ぶことを拒否するという事態がすでに発生しています。これによって被災者が受ける被害は、放射線による幻の被害と違って現実のものであり、まさに二次災害と呼ぶべきものです。

 このような事態を回避するには、放射線に関する正しい知識を世間に広めて、マスコミによる過剰報道に煽られず、みんなが冷静に事態に対処できるようにすることです。

 そのことにわずかでも助けになればと思い、今、放射線に関する一連の書き込みをしています。

 僕としては、せめてこの会議室の常連さんの中からは、集団パニックによる二次災害の加害者や被害者を出したくないですからね。(^_-)

                            とものり

1065. Re[1063]:[1062]:福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/23(水) 19:28:11
通りすがり様
ヨウ素131の放射能は8日で半分、16日で4分の1になります。ですから日持ちが良いもの、流通や加工で食卓に届くまで時間を要するものに関しては、健康面に害を与えません。ヨウ素131は高揮発性のため、原発から離れたところまで到達します。(東京の浄水場で検出された理由でしょう)高揮発性ということは、水に含まれたヨウ素131は煮沸させることで幾分取り除くことができます。気体となったヨウ素はすぐ拡散します。たとえ呼吸によって取り込んでも、経口摂取するよりは被ばく線量を低くすることができます。ただし、寿命の長い放射性セシウムは残っています。食物に含まれる「放射能(Bq:ベクレル)」が、それを摂取する私たちにどれだけ「被ばく量(Sv:シーベルト)」を与えるかは、放射性物質の種類、取り込み方(吸引か経口か)、私たちの年齢などによって変わります。これらを考慮すれば「放射能(Bq)」から「被ばく量(Sv)」に変換できますCs-134(セシウム134)は、3月16日8時に福島市で水道水中に1kgあたり25Bq(ベクレル)観測されました。それ以降は観測されていません。被ばく量に変換するためのCs-134(セシウム134)の「変換係数」は、大人で0.019μSv/Bqです。つまり、1Bq(ベクレル)で、0.019μSv(マイクロシーベルト)の被ばく量であると計算できます。この「変換係数」は、私たちの年齢などによって変わります。では、3月16日8時に福島市での水道水を2リットル飲んだとしましょう。体内には50BqのCs-134が取り込まれます。「変換係数」を使うと0.95μSv(マイクロシーベルト)の被ばくです。同様にCs-137では、0.86μSvの被ばくです。両方足し合わせると、1.81μSvです。ちなみに私たちは日頃から食物に含まれる放射性K(カリウム)による被ばくを受けています。それは1年で100〜200μSv(マイクロシーベルト)と推定されています。今推定したCs(セシウム)の被ばく量は、放射性物質を一度摂取したことによって70歳になるまでに蓄積されるであろう被ばく量を表します。もちろん年齢による代謝や食生活の違いによって個人差も生じると考えられます。ここで推定されたCs(セシウム)の被ばく量は少ないように見えますが、食品衛生法上の暫定(ざんてい)規制値を越えているのも事実です。規制値を越えた食物の流通を管理することで、国民の安全が確保されると考えています。


1064. Re[1063]:[1062]:福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/23(水) 19:22:57
通りすがり様
史上最大の放射事故であるチェルノブイの原発事故では、白血病など、多くのがんが増えるのではないかと危惧されましたが、実際に増加が報告されたのは、小児の甲状腺がんだけでした。なお、米国のスリーマイル島の事故では、がんの増加は報告されていません。放射性ヨウ素は、甲状腺に取り込まれます。これは、甲状腺が、甲状腺ホルモンを作るための材料がヨウ素だからです。なお、普通のヨウ素も放射性ヨウ素も、人体にとっては全く区別はつきません。物質の性質は、放射線性であろうとなかろうと同じだからです。ヨウ素は、人体には必要な元素ですが、日本人には欠乏はまず見られません。海藻にたっぷり含まれているからです。逆に、大陸の中央部に住む人では、ヨウ素が足りたいため、「甲状腺機能低下症」など、ヨウ素欠乏症が少なくありません。チェルノブイリ周囲も、食べ物にヨウ素が少ない土地柄です。こうした環境で、突然、原発事故によって、ヨウ素(ただし、放射性ヨウ素)が出現したので、放射性ヨウ素が、住民の甲状腺に取り込まれることになりました。ヨウ素(I2)は水に溶けやすい分子です。原発事故で大気中に散布されたヨウ素は、雨に溶けて地中にしみ込みます。これを牧草地の草が吸い取り、牛がそれを食べるという食物連鎖で、放射性ヨウ素が濃縮されていったのです。野菜より牛乳が問題なのです。結果的に、牛乳を飲んだ住民の甲状腺に放射性ヨウ素が集まりました。放射性ヨウ素が出す“ベータ線”は、高速の電子で、X線やガンマ線とちがって、質量があるため、物とぶつかるとすぐ止まってしまいます。放射性ヨウ素(I-131)の場合、放射されるベータ線は、2ミリくらいで止まってしまいますから、甲状腺が“選択的”に照射されるわけです。放射性ヨウ素(I-131)を飲む「放射性ヨウ素内用療法」は、結果的には“ピンポイント照射”の一種だと言えます。子供たちは、大人よりミルクを飲みますし、放射線による発がんが起こりやすい傾向があるため、小児の甲状腺がんがチェルノブイリで増えたのでしょう。ただし、I-131の半減期は約8日です。長期間、放射性ヨウ素を含む牛乳のことを心配する必要はありません

1063. Re[1062]:福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:通りすがり(^^;; 投稿日:2011/03/23(水) 14:31:44
ご無沙汰しております。
今回の震災、原発事故。。心が痛むばかり・・です。

さて、山本先生、とものりさんの放射線量などについての書き込み。
勉強になります。

ただ、いずれの見解の中にも、この事態が収束するのに1年+ほどの期間がかかり、その間高濃度の線量下もしくはキセノンなどで汚染された土壌、海洋の中で暮らした場合を前提とされていません。

米軍が50マイル外から活動していることのほうが理にかなっているような気もするのですが。。。

>とものりさん

>> 1058番の書き込みで山本先生に紹介していただいた自治医科大学の研修会で、講師の先生が、
>>
>> 「原子力発電所の正門前は最大でも1mSv/hr(1000μSv/hr)程度の放射線量であり、100時間そこにいても被害は無い被曝量だから、事故処理のために原発内で働いている人達のために、政治家は正門前で炊き出しをしてその人達に暖かい食事でも提供し、そこで閣僚会議を開くべきだ!」
>>
>>と提唱されています。
>>
>> この提案には全面的に賛成ですね。\(^o^)
>>
>> 閣僚会議だけでなく、原子力安全・保安院の会議も東京電力の会議も、その結果を発表する記者会見も、全て原子力発電所の正門前で行うべきです。
>>
>> そうすれば、政府による住民の避難指示は、あくまでも不測の事態に対処しきれない危険性を回避するための措置であり、現在の放射線量が健康被害を与える恐れがあるからではないことを強くアピールすることができるはずです。
>>
>> そしてその会議では、福島産の牛乳やほうれん草を用いた弁当を食べるのが良いと思います。(^_-)
>>
>> 現在、「福島産の原乳から基準量の10倍の放射性ヨウ素が検出された!」などと、大げさに報道されています。
>>
>> 放射性ヨウ素の基準値300Bq/kgというのは、牛乳1kg中に含まれる放射性ヨウ素の放射能が300Bqあるということです。この基準値は、この放射能を持つ牛乳を1年間飲み続ける(!)と、甲状腺の累積被曝量が50mSv/yearになることに基づいた値です。
>>
>> 300Bq/kgの放射能が放出する放射線量は6.6μSv/hrであり、この10倍の放射能を持つ牛乳を200cc飲んでも、その被曝量はわずか13μSv/hrにすぎません。
>>
>> これはラジウム温泉が放出する放射線量と同程度の量であり、ラジウム温泉ではこの程度の微量の放射線は身体に良いと宣伝しています。(^^;)
>>
>> また人体には微量の放射性カリウムが含まれていて、その放射能は約4kBq(=4000Bq)であり、夜光時計の自然発光塗料には400kBq〜3MBq(=3000kBq)の放射能があり、蛍光灯のグローランプには4kBq程度の放射能があります。
>>
>> 人間は環境からこういった自然放射線を常に浴びていて、自然状態で2〜3mSv/yearの放射線を常に浴びています。
>>
>> したがって1mSv/hr程度の放射線を浴びて数時間の会議をしても、3kBq/kg程度の放射能のある牛乳を飲んでも大したことはありません。
>>
>> それを恐れて会議に出席しない政治家は民衆の支持を失い、記者会見に出席しない記者は大切な記事を取り逃してしまうことになるので、実に効果的だと思います。(^_-)
>>
>>                            とものり
>>

1062. 福島第一原発正門前での閣僚会議 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/22(火) 20:42:48
 1058番の書き込みで山本先生に紹介していただいた自治医科大学の研修会で、講師の先生が、

 「原子力発電所の正門前は最大でも1mSv/hr(1000μSv/hr)程度の放射線量であり、100時間そこにいても被害は無い被曝量だから、事故処理のために原発内で働いている人達のために、政治家は正門前で炊き出しをしてその人達に暖かい食事でも提供し、そこで閣僚会議を開くべきだ!」

と提唱されています。

 この提案には全面的に賛成ですね。\(^o^)

 閣僚会議だけでなく、原子力安全・保安院の会議も東京電力の会議も、その結果を発表する記者会見も、全て原子力発電所の正門前で行うべきです。

 そうすれば、政府による住民の避難指示は、あくまでも不測の事態に対処しきれない危険性を回避するための措置であり、現在の放射線量が健康被害を与える恐れがあるからではないことを強くアピールすることができるはずです。

 そしてその会議では、福島産の牛乳やほうれん草を用いた弁当を食べるのが良いと思います。(^_-)

 現在、「福島産の原乳から基準量の10倍の放射性ヨウ素が検出された!」などと、大げさに報道されています。

 放射性ヨウ素の基準値300Bq/kgというのは、牛乳1kg中に含まれる放射性ヨウ素の放射能が300Bqあるということです。この基準値は、この放射能を持つ牛乳を1年間飲み続ける(!)と、甲状腺の累積被曝量が50mSv/yearになることに基づいた値です。

 300Bq/kgの放射能が放出する放射線量は6.6μSv/hrであり、この10倍の放射能を持つ牛乳を200cc飲んでも、その被曝量はわずか13μSv/hrにすぎません。

 これはラジウム温泉が放出する放射線量と同程度の量であり、ラジウム温泉ではこの程度の微量の放射線は身体に良いと宣伝しています。(^^;)

 また人体には微量の放射性カリウムが含まれていて、その放射能は約4kBq(=4000Bq)であり、夜光時計の自然発光塗料には400kBq〜3MBq(=3000kBq)の放射能があり、蛍光灯のグローランプには4kBq程度の放射能があります。

 人間は環境からこういった自然放射線を常に浴びていて、自然状態で2〜3mSv/yearの放射線を常に浴びています。

 したがって1mSv/hr程度の放射線を浴びて数時間の会議をしても、3kBq/kg程度の放射能のある牛乳を飲んでも大したことはありません。

 それを恐れて会議に出席しない政治家は民衆の支持を失い、記者会見に出席しない記者は大切な記事を取り逃してしまうことになるので、実に効果的だと思います。(^_-)

                            とものり

1061. Re[1058]:自治医大での研修会の資料 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/22(火) 16:56:52
>山本直樹先生

>>自治医大での研修会の資料です。御参考になさってください。
>>http://lib-stream0.jichi.ac.jp/contents/all/201100000029-2.asx

 非常に有意義な講演資料を紹介していただき、ありがとうございました。

 1051番の「福島原子力発電所事故に思う」に書いたように、原発事故が日本の社会に与える影響は、実際の健康被害よりも集団パニック的な社会不安の方がよっぽど大きいと思います。

 その意味で、放射線医学の専門家がこういった活動を行って正確な情報を発信することは、民衆の不安を取り除き、冷静な対応を引き出す上で非常に役に立つと思います。

 この研修会の中でも説明されていますが、マスコミは「1ミリシーベルト」をわざわざ「1000マイクロシーベルト」と表現したり、「通常量の100倍」などと表現しますね。

 これは988番の「統計のマジック」という書き込みでも説明したように、マスコミがインパクトを与えるための常套手段ですが、この非常事態にこんな常套手段を使って民衆の不安を煽り立てるマスコミは、全く言語道断ですよね。凸(-"-)

 これと同じような趣旨で行われたカリフォルニア大学のMonreal氏による講演のスライドを、日本の研究者の方が翻訳されて発表しているのでそれを紹介します。

○福島原発の放射能を理解する(2011年3月18日、バージョン1)

 http://ribf.riken.jp/~koji/jishin/zhen_zai.html

製作者:カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB) 物理学科 Ben Monreal教授

翻訳者:野尻美保子(高エネルギー加速器研究機構/東京大学IPMU)、久世正弘(東京工業大学理工学研究科)、前野昌弘(琉球大学理学部)、衛藤稔・石井貴昭・橋本幸士(理化学研究所仁科加速器研究センター)、並びに素粒子原子核分野の研究者/院生の皆さん(敬称略)

 この資料の中に、

・1Sv(シーベルト)=1000mSv(ミリシーベルト)の放射線を被曝することは、運転中に携帯メールを打つ危険と同じ程度のリスク

という、面白い表現があります。こういった表現は、素人にもわかりやすいのではないかと思います。

 またこの資料の中にも「故障した原子炉の最後の防衛:50人の作業員」という表現でFukshima50の人たちの事が出てきます。そしてこの資料のまとめの中に次のような表現があります。

・チェルノブイリにおける最悪の一般公衆への影響は抑圧と恐怖であった。教育と情報周知に失敗した。

・我々は情報を持っている。mSvを数えてどのように対応するか決めよう。

・津波被災者と50人の福島原発の作業従事者のためにみんなのエネルギーを集中しよう。


 紹介していただいた自治医大の研修会で使用された資料も、このような形でPDF等にまとめて、誰でも利用できるように公表していただけると非常に役立つと思いますよね。

                            とものり

1060. Re[1057]:Fukushima 50 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/22(火) 13:01:08
>山本直樹先生

>>「Fukushima 50」という名前が、われわれ日本人が知らない間に海外で大きく知られる存在になっている。

 実はこの事実を知っていたので、1051番の「福島原子力発電所事故に思う」という書き込みは、原子力発電所の関係者に少々同情的な内容になりました。

 以前働いていた薬業界にも、原子力発電所と似たようなところがあります。経営者は副作用情報を隠したがり、社内で内密に処理しようとするのに対して、医療現場と接している社員や研究開発担当の社員は、何とか正確な情報を社外に伝えようとします。

 しかし経営陣からの圧力を受けて、社内から正確な情報を発信することが難しいため、真面目な社員は内部告発を考え、中にはそれを実行する人もいます。特にクレーム処理のように社外からの声に直接接している部署の人間は、どの会社でも一度や二度は内部告発を考えたことがあるそうです。

 これまでにも原子力発電所を所有する電力会社で、内部告発によって原発事故の発生が明るみに出たことがしばしばありました。そんな様子を見ていると、電力会社の社内の状態と、社内で真面目に仕事に取り組んでいる人達の存在が何となくわかるような気がするのです。

 今回、命懸けの行動が話題になったレスキュー隊の最大被曝量規準が30mSv/hrであるのに対して、原子力関係の従事者の最大被曝量規準は50mSv/yearです。

 そしてFukushima50の人達は、事故直後から自主的に原発に残って危険な作業を行っているので、おそらく50mSvをはるかに超えた被曝をすでに受けているのではないかと思います。

 日本のマスコミでは、今はまだ「Fukushima 50」のことは敢えて話題にしませんが、事態が無事に終息したら争って取り上げるような気がします。

                            とものり

1059. Re[1056]:毎日新聞の子供用の記事 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/22(火) 12:19:07
>山本直樹先生

 大変良い記事を紹介していただき、ありがとうございました。

 マスコミにしては驚くほどまともな内容ですから(^^;)、おそらく災害援助関係の専門家が助言や監修をしているのでしょうね。

>>被害のなかった人は慌てることはありません。冷静に暮らしましょう。
>>電気やガソリンのむだ遣いも、被害を受けた人に回る分がそれだけ少なくなります。

 節電を呼びかけたポスターの標語に、「いま一番早く届く救援物資は、電気です」というものがありました。

 関東地区の住民が節電するということは、被災地に電気という救援物資を送ることになりますから、まさに今すぐ誰にでもできる援助活動ということになりますよね。

 けしからんことに、自分達の利益と娯楽のために、その貴重な援助物資を横取りして、ナイターまで含めたプロ野球の興行試合を強行しようとしている人達がいるのは、実に腹立たしい限りです。凸(-"-)

 また各種のクラブ活動の大会を中止して、被災地の手伝いをしたり、募金などのボランティア活動をしている高校生が沢山いるというのに、被災地から寄付金とガソリンとバスを横取りして、単なるクラブ活動にすぎない高校野球大会を強行しようとしている人達がいるのも、実に情けない限りです。

 これらの開催については、賛否両論があったそうです。しかし娯楽とかグラブ活動などというものは、みんなから賛同され、応援されてこそ行う意義があるものであり、反対意見が沢山あるという事実だけで即中止すべきものだと思います。

>>「出かけて、直接に何かをしたい」という気持ちは大切です。でも、鉄道や道路はずたずたです。この地震の被害から立ち直るには、長い長い時間がかかりそうです。
>>半年、1年たって手伝いに行っても、十分に役に立つはずです。その時に備え、体を鍛えましょう。

 ボランティア活動には「心は熱く(情熱を持って)、頭は冷たく(冷静に)」ということが要求されますよね。

 阪神大震災の時は、沢山の「心も頭も熱い人達(^^;)」がボランティアとして被災地に押しかけたため、ありがた迷惑だったということが多々ありました。

 訓練も受けず、準備もしていない人間が被災地に入ると、被災者が食べるはずだった食事や援助物資を横取りし、被災者が使うはずだったトイレを横取りし、被災者が寝るはずだった場所を横取りし、あげくは被災者が受けられるはずだった医療を横取りしてしまいます。

 この反省から、ボランティアは”自己完結型”といって、食事もトイレも寝る所も全て自分で用意し、自分の身を自分で守った上で、他人も助けることができる技能と体力を持った、自己完結型の準備と訓練をした人でなければならない、ということが基本になっています。

 そして現在は、自己完結型ボランティアの訓練や組織作りをしているNPOやNGOがあり、それらの組織と各地方自治体の社会福祉協議会が連携してボランティアの募集や活動を行っています。

>>避難所で生活する人は着るものにも食べるものにも不自由しています。洋服や食料を送ることもできますが、タイミングとやり方が大切です。
>>今、直接送るのはかえって迷惑になるだけです。

 阪神大震災の時、マスコミが被災地で不足しているものをやたらと報道し、感情的に援助を訴えました(今回もまた、マスコミは懲りずに同じ愚を犯していますが…(~o~))。また暴力団が援助物資を横取りし、その一部を被災地に送るという偽善行為に騙されたマスコミが、それを美談のように取り上げたりしました。

 それらの報道に煽られて、やはり沢山の「心も頭も熱い人達(^^;)」が援助物資を被災地に送ったため、かえって迷惑だったということが多々ありました。

 これについても、やはり災害援助専門のNPOやNGOが社会福祉協議会や日本赤十字社と連携して、必要な時に必要な物を必要な場所に送る活動をしています。

 我々普通の庶民ができることは、義援金に協力して、それらの活動の後方支援をすることです。

 お金は送る手間が簡単で、腐ることも傷むこともなく、どのような援助物資にも姿を変えられ、援助活動の資金にもなる、大変便利な発明品です。大いに利用したいものですね。v(^_-)

                            とものり

1058. Re[1055]:[1054]:危機的状況の中の希望 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/20(日) 16:49:54
杉本先生
自治医大での研修会の資料です。御参考になさってください。
http://lib-stream0.jichi.ac.jp/contents/all/201100000029-2.asx

1057. Fukushima 50 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/20(日) 15:16:19
杉本先生
先ほど知った記載です。

「Fukushima 50」という名前が、われわれ日本人が知らない間に海外で大きく知られる存在になっている。

 これは、福島原発で残って作業する東京電力や関連作業員たちの呼称だ。文字通り命がけで戦っている50人のチームに対しての賛辞の報道が、海外メディアでは多く見られる。もちろん、日本では報じられることがないのは残念な限りだが。

 詳しく知りたい人は、すでにウィキペディアでも、「Fukushima 50」の項目が作成されているくらいだから、一読してみると良いだろう。

 英BBC、米ABC、CBSなどのテレビでは、灯りのない原発施設の中で、白い防護服を着用して原子炉の爆発を防ぐための作業に従事していると報道されている。

 まさしく「名もなき英雄」。勇敢な作業員たちに「Fukushima 50」の名前が付けられ、そう呼ばれている。いつ終わるともわからない戦いが続く英雄たち。私心を捨てて取り組む姿には、同じ日本人として誇らしい限りだ。

1056. Re[1055]:[1054]:危機的状況の中の希望 投稿者:山本直樹 [URL] 投稿日:2011/03/20(日) 14:20:18
杉本先生
連日いろいろ教えていただき感謝です。
毎日新聞の子供用の記事に興味深い記載がありましたので転載します。

東日本大震災:被災地のため、今何ができる? ジュニア解説「教えて!デスク」
東北などに大きな被害を出した地震から、1週間以上がたちました。大勢の人が家族や友だちをなくしたり、家が壊れたりしました。これからの生活は大変です。無事だった人は何ができるでしょうか?

 ◇まとめ買いやめ冷静に 本当に必要な人に届けるために
 困ったことが今、起きています。大丈夫だった地域のコンビニやスーパーでインスタント食品や水、生活用品などが少なくなっているのです。一人一人が買いだめやまとめ買いをすると品不足になり、ものを本当に必要としている場所には何も届かなくなります。

 被害のなかった人は慌てることはありません。冷静に暮らしましょう。電気やガソリンのむだ遣いも、被害を受けた人に回る分がそれだけ少なくなります。

 ボランティアはまだ早すぎます。

 「出かけて、直接に何かをしたい」という気持ちは大切です。でも、鉄道や道路はずたずたです。この地震の被害から立ち直るには、長い長い時間がかかりそうです。半年、1年たって手伝いに行っても、十分に役に立つはずです。その時に備え、体を鍛えましょう。

 ◇お小遣い寄付して手助けも 洋服や食料送るのはタイミングが大切
 交通費をかけて行くのならば、その分を募金に寄付した方がいいでょう。

 寄付したお金は、生活に必要なものや食べものなどに使われ、ひどい被害を受けた人が再出発するのに役立ちます。

 日本赤十字社や被害にあった県が受け付けており、毎日新聞でも寄付ができます。100円や500円の少ない額でも構いません。お小遣いや、入学や進級のお祝いにもらったお金の一部を寄付するのは、簡単にできる手助けです。

 避難所で生活する人は着るものにも食べるものにも不自由しています。洋服や食料を送ることもできますが、タイミングとやり方が大切です。今、直接送るのはかえって迷惑になるだけです。

 1995年の阪神大震災の時は、たくさんのものが送られてきましたが、中身を確かめたり整理したりするのに人手と時間がかかり、必要な仕事ができないこともありました。

 ◇世界が見つめる日本のがんばり
 この地震でびっくりし、うれしかったのは世界各国の人が日本と日本人をほめて、励ましてくれていることです。

 アメリカの新聞は、阪神大震災の時に東京支局長だった人が「日本の人々には本物の忍耐力がある」とたたえ、「これからの日本に注目すべきだ。間違いなく学ぶべきものがある」と書きました。

 「どなり合いもけんかもない」「本当に強い国だけがこうした対応ができる」と書いたのはベトナムの新聞です。

 イギリスの新聞は1面トップで日の丸の赤い円の中に「がんばれ、日本。がんばれ、東北。」と日本語の大見出しの紙面を作りました。「日本は津波の被害から立ち上がろうとたたかっている」と書いています。

 この地震は日本人すべてにとって、とても大きな困難です。でも、みんなの力を合わせて乗り越えられれば、日本はもっと住みよい国になるでしょう。

 少しの力が大きな動きになります。今、1カ月後、半年後、1年後に何ができるか。家族や友だちとまず話し合ってみましょう

1055. Re[1054]:危機的状況の中の希望 投稿者:とものり [URL] 投稿日:2011/03/19(土) 22:40:37
>山本直樹先生

>>だが、全てを失った日本が得たものは、希望だ。大地震と津波は、私たちの仲間と資源を根こそぎ奪っていった。
>>だが、富に心を奪われていた我々のなかに希望の種を植え付けた。だから私は信じていく。

 村上龍らしい、感動的な文章ですね。

 国が危機に瀕すると国民が団結するので、政治家は常に仮想敵国を作って愛国心を煽り立てようとしますね。例えば2001年の同時多発テロの時、アメリカ政府はアフガニスタンやイラクを無理矢理犯人に仕立てて因縁をつけ、愛国心を煽り立てて一方的に戦争を仕掛けましたよね。

 しかし日本は昔から自然災害が起きるたびに民衆が一致団結して助け合い、”困った時はお互い様”という助け合いの精神を育んできました。

 自然を恐れ敬い、民衆がお互いに助け合う”困った時はお互い様”という精神こそが、仮想敵国を必要としない日本独自の愛国心であり、それは欧米の国家主義的ナショナリズムとは別物だと思います。

                            とものり

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