玄関マンガと映画の部屋作品紹介コーナーお気に入りのアニメ

題名をクリックしても、残念ながらアニメは観れません。(^^;)

【お気に入りのアニメ】

○「ペンギン・ハイウェイ」(石田祐康監督、日本、2018年)

ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。 毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。 一日一日、ぼくは世界について学んで、昨日の自分よりもえらくなる。

今日計算してみたら、ぼくが二十歳になるまで、三千と八百八十八日かかることがわかった。 そうするとぼくは三千と八百八十八日分えらくなるわけだ。 その日が来たとき、自分がどれだけえらくなっているか見当もつかない。 えらくなりすぎてタイヘンである。

みんなびっくりすると思う。 結婚してほしいと言ってくる女の人もたくさんいるかもしれない。 けれどもぼくはもう相手を決めてしまったので、結婚してあげるわけにはいかないのである。 もうしわけないと思うけれども、こればかりはしょうがない。

この作品は、そんなぼくと、ぼくが大好きなお姉さんの不思議な体験を、森見登美彦という人が小説にし、それを石田祐康監督がアニメーションにしたものである。 この作品をみると、胸のおくのところがキュンキュンして泣きそうになるけど、ぼくは五歳の時から泣かないことにしているんだ。

○「夜は短し歩けよ乙女」(湯浅政明監督、日本、2017年)

読者諸兄、ごきげんよう!

本作は、”先輩”こと私と、”黒髪の乙女”こと私が密かに思いを寄せる後輩女性の恋の顛末を、森見登美彦なる輩が小説にし、それを湯浅政明監督がアニメ化したものである。 これは、ついに主役の座を手にできずに路傍の石ころに甘んじた私の苦渋の記録であり、我と我が身に叱責の言葉を投げつける次第である。

恥を知れ! しかるのち死ね!

とはいえ、その苦渋の記録を元にして、本作のようなポップでキュートでシュールな作品が生み出されたことは、身に覚えのない度重なる日頃の善行がついに功を奏したと、むしろ喜ぶべきかもしれない。

本作は、1年間の永きに渡る記録を魔術的手練によってわずか一夜の話にまとめながらも、杏仁豆腐の味にも似た原作の妙味を損なうことなく再現して間然する所がなく、何よりもその精神において原作の完璧なアニメ化であると断言できる。

諸君、異論があるか。 あればことごとく却下だ。

憚りながら、これは”黒髪の乙女”こと私と、私が数日に1度は奇遇で出逢う”先輩”の恋の顛末を、森見登美彦様が小説にしてくださり、それを湯浅政明監督がアニメ化してくださったものです。 これは、私にとってはお腹の底が温かくなるような経験であると同時に、恥じらいで頬が火照るような経験でもありました。

豆ッ恥、豆ッ恥。

もし皆様方が京都先斗町界隈を散策されることがあれば、背中には錦鯉の張りぼてを背負い、首には達磨の首飾りをかけ、右手にクレープ、左手に林檎を持った私が、むんと胸を張り、二足歩行ロボットのようにほてほてと歩いているところを見かけるかもしれません。 その時は莞爾と笑い、次のようにお声をかけてください。

こうして出逢ったのも、何かの御縁。
夜は短し、歩けよ乙女。

○「東京ゴッドファーザーズ」(今敏監督、日本、2003年)

最近観たアニメの中ではずば抜けて面白く、完成度の高い作品です。 今敏は「PERFECT BLUE(1997)」、「千年女優(2002)」と、なかなか鋭いセンスの作品を発表していたので、以前から注目していましたが、この作品でついに独自の個性を完成させた感じです。 「PERFECT BLUE」におけるテンポの良い演出と切れ味鋭いサスペンス、「千年女優」におけるギャグセンスと泣かせのテクニックがうまく融合され、ハラハラドキドキの中に適度にギャグを交えて笑わせながら、最後にホロリとさせる、完成度の高い作品に仕上がっています。 声優も江守徹などの芸達者を揃えていて、変に受け狙いのトーシロータレントを入れていないので、シラケずに楽しめます。

今敏のアニメセンスは、押井守ほど鋭くはないもののかなりシャープであり、ミステリータッチを得意とするところなどはよく似ています。 今敏の師匠である大友克洋は、マンガのセンスは抜群なのに、アニメのセンスはお世辞にも良いとは言えず、弟子である今敏にさえ及びません。 それとは対照的に押井守や宮崎駿は、マンガのセンスはひどいのにアニメのセンスは抜群です。 こういったことを考えると、マンガとアニメは似て非なるセンスが必要だということがよくわかります。