玄関小説とエッセイの部屋エッセイコーナー専業主夫の過労なる1日

【専業主夫の過労なる1日】

カミさんが40度近い高熱でダウンしたため、今日1日、専業主夫をしました。 以下はその赤裸々なる生活の記録です。(^_^;)

○午前6時 起床

午前6時頃覚醒。喉がかなり痛く、咳も少々出る。 これはひょっとすると、僕も何年かぶりで風邪をひいたのかもしれない。 30分ほど布団の中でグズグズしていた後、意を決して6時30分頃起床。 カミさんは高熱で寝息が荒い。 額に手をあててみるとものすごく熱く、39度以上はある様子。 典型的なインフルエンザの症状だと頭では十分理解しているものの、やはりちょっと心配。

○午前6時〜9時 朝食とその片付け

夕べ電気炊飯器を仕かけてなかったことに気付き、大急ぎで米をかし、御飯を炊く。 こりゃあ間に合いそうもないなぁ、インスタント・ラーメンでも作るか……。

続いて二人の子供を起こしまくり、急がせまくって、登校準備と朝食。 子供達にインスタント味噌汁(お湯をそそいで、かき回すだけで出来上がり! いやぁ、便利な物ですなぁ〜!(^o^))を渡し、自分で作って食べるように言う。 右往左往しているうちに、子供達が相次いで出発。 結局、御飯も間に合わず、ラーメンを作っている余裕もなく、二人とも味噌汁を一杯飲んだだけで登校。 まあ、少しぐらい腹が減ったところで死ぬことはあるまい。

カミさんの様子を見にいくと、もう目を覚ましており、喉が渇いたと言う。 砂糖水とゼリーを少々食べさせ、薬を服用させる。 解熱剤が含まれているから、そのうちに熱が下がるはず。 そうこうしているうちに、御飯が炊けたのでお粥を作る。 まだ朝食を食べていないことに気付き、お粥を作りながら適当に食べる。 何を食べたのかほとんど記憶にない。 朝食の後片付けをしてようやくテーブルに落ち着き、時計を見ると、もう9時近かった。

○午前9時〜11時 洗濯

そこらへんに脱ぎ散らかしてある服をやみくもに洗濯機に放りこみ、洗濯開始。 昨日の夕方、家の中に取り込んでおいた洗濯済みの服と混ざり合い、洗濯前か後かわからなくなったものもあるが、まあ2度続けて洗濯しても、洗濯せずに2度続けて着ても大して違いはあるまい。 それにしても、全自動洗濯機を買っておいて本当に良かったとしみじみ思う。 何と言っても、服を放りこんでスイッチON!だけだから、実に簡単なもんである。

……ん? 待てよ、スイッチON!の前に何かしなくちゃいけないような気が……あッ! しまったァ、洗剤入れるの忘れちまったーッ!!

大急ぎで洗剤を放りこむ。すすぎの前に気が付いて幸いだった。 洗濯をしている間に昨日の洗濯物を整理する。 自分の物だけはかろうじて判別がつくものの、カミさんと娘達の物はほとんど判別がつかない。 結局、整理を断念。各自、自分の物は自分で探してもらうことにする。

そのうちに洗濯が終わったので、物干し竿や、ハンガーや、何という名前だかわからないがムカデの化け物や、 タコの化け物のようなものに洗濯物を吊るそうとするが、どこに何を干せばいいのかほとんど見当が付かない。 さんざん試行錯誤したあげく、何とか全部干すことに成功。 これは正に位相幾何学的パズル問題だ。

家の中でホッと一息ついていると、庭の方から大声で呼んでいる声がする。 ハッと外を見ると、あろうことかなかろうことか雨が降っているではないか! 慌てて庭に飛び出してみると、近所の奥さん達が雨が降り出したことを知らせ合い、留守の家の洗濯物を軒下に取り込んでやっている。 洗濯物を家の中に放りこみながら、奥さん達の見事な連携プレーに感心することしきり。

さて、洗濯物を家の中に放りこんだはいいが、どこに干せばいいのかしばし茫然自失。 専業主夫をからかうために、天がわざと雨を降らせたとしか思えない。 結局、部屋の中のありとあらゆる出っ張りにハンガーを引っ掛けて、適当に吊るす。 洗濯物が何枚も重なってしまっているところもあるが、初心者に完璧を期待する方がどだい無理というもんである。

○午前11時〜午後12時 買い物

カミさんに買い物リストを書いてもらい、近くのスーパーマーケットに行く。 いつも土・日はカミさんの買い物に付き合っているお陰で、迷いまくりながらも何とか所期の目的達成。 しかし、わずか10個ばかりの買い物に1時間近くもかかってしまうとは、我ながら情けない。

○午後12時〜2時 昼食とその片付け

スーパーで買ってきた焼きそばで昼食。 カミさんも、お粥ぐらいなら食べられるかもしれないと、起きてきてお粥を食べる。 カミさんはノドをやられてしまってほとんど声が出ないため、いつになく静かな食事である。 ふと、娘二人が嫁いで行ってしまった後の老後の生活を連想する。

「……お茶でも飲もうか、バアさんや…?」
「……そーしましょうかねぇ、おジイさん…」

あぁっ、ヤダヤダッ! 慌てて妄想を振り払う。

面倒だったため、夕食後に一緒に洗うことにして、食器類を流しに溜めておく。

○午後2時〜3時 パソ通と休息

午後2時頃、ようやく一息つくことができたので、草の根ネットにアクセスする。 オートダウンして書き込みを読んだものの、激しい睡魔に襲われてレスをつけるのを断念、しばし休息を取る。 仕事とパソ通で徹夜した時には何ともなかったのに、専業主夫半日でこのていたらくとは何たるこっちゃ!!

○午後3時〜5時 子供の世話と情報収集

午後3時頃、下の娘が小学校から帰宅。 帰ってくるなり、やれ服がビショビショだの、腹が減った、お菓子はないかだの、やたらと騒ぎまくる。 少しぐらい雨に濡れよーが、少しぐらい腹が減ろーが、その程度のことで死ぬようなことはないから心配するなと言うと、 見放したような目で父親のことを見てから、洗濯済みの服の山から着替えを探し出し、勝手にお菓子を見つけ出して、さっさと自分の部屋に入ってしまう。

なるほど、親は無くとも子は育つものである。

やっと手がすいたので新聞に目を通す。 フムフム、金丸被告がワリバシを購入したため、賭けマージャンに負けて、16億円もの金を払ったらしいとな? 16億円もの金があるなら、どーして専業主夫のために天気を良くしようとしないのだ、部屋中洗濯物だらけでうっとーしーだろーがぁ〜! ……疲れのせいか、思考回路がメチャクチャになっている。 いまいち記事に集中できないので、途中で読むのを止める。

○午後5時〜6時 娘の中学校に傘を届ける

カミさんに注意されて、上の娘が傘を持って行ってないことに気付く。 カミさんは、中学校まで傘を届けてやって欲しい、傘は娘の下駄箱の上に置いておけばよいのだが、その場所が僕には絶対わからないだろうから、適当に生徒か先生をつかまえて尋ねろと言う。 それはちょっと無理な話だと思いながらも、病人には逆らわない方が良いので、とりあえず傘を持ち、車で中学校に向かう。 まあ、行けば何とかなるだろう。

途中、ところどころで帰宅中の中学生に出会う。 皆、一様に同じ制服を着て、同じカバンを下げ、同じ様な髪型をしているので、誰が誰やらほとんど区別がつかない。 我が娘はいずこにおわすなりや? 仕方がないから、女子中学生の近くを通るたびに車を止め、傘の下の顔を覗き込む。

何じゃこのスケベオジンは!? と言わんばかりの表情で冷たく見返されたり、車のナンバープレートを確認しているようなそぶりを見せる者もいるが、 もし警察に通報されても、一応、申し開きが立つから大丈夫だ、と自分に言い聞かせて難行苦行を続ける。

全く軍隊じゃあるまいし、日本の学校はどうしてこんなに個性を押し殺した格好を無理矢理生徒に押し付けるのか、理解に苦しむ。 雨の日に、車で傘を届ける哀れな父親の身にもなってみろってんだ!

幸いなことに、中学校付近で、4人ほどかたまって歩いている女子中学生の群れの中に娘を見つける。 一緒に歩いていた娘の親友も乗せ、1人ずつ家まで送り届けながら、最後に我が家に帰還。 すでに6時になろうとしていた。

○午後6時〜8時 夕食とその片付け

子供達に手伝わせて夕食の準備をする。夕食のメニューは、

これを見た上の娘、なにィー、手作りの物がひとっつも無いじゃない!? などと文句を言う。 えーい、うるさいわいッ! 緊急事態だからしゃーないだろーがぁ〜! メシが食べられるだけ有り難いと思え、いーか、ソマリアの子供達なんてなぁ……などと言いかけたが、誰も聞いてないのでやめた。

子供とはいえ、3人で作るとさすがに早い。 カミさんも一緒に今日初めて食事らしい食事をする。 食事中、上の娘から、あたりがえらく散らかっているが、掃除はちゃんとしたのかと詰問され、掃除をしていないことに気付く。

そーかぁ、どうも何か忘れてるような気がしてしょーがなかったのはそのせいかぁ! これでやっとすっきりしたわい。 しかし、いくら乱暴者とはいえさすがは女の子、掃除に気が付くとはエライ!……などと感心している場合ではなかったが、笑ってゴマ化す。

しかし娘は追求の手をゆるめず、今日は雨だったからいーけど、もし晴れてたら布団も干さなきゃならなかったのだと鋭く指摘。 布団を干すなどという作業は全くの考慮外だったので、さすがに笑ってゴマ化すことができず、仕方なく居直る。 部屋が少々汚れていよーが、布団が少々湿っていよーが、その程度のことで死ぬようなことはないから、心配するなと言うと、皆から見放されたような視線を浴びた。

○午後8時〜10時 入浴

夕食後、風呂を沸かし、下の娘、上の娘、僕と順番に入浴する。 タオル、バスタオル、着替えの下着、パジャマ、ガウンなど、各自、洗濯物の中から自分の物は自分で探し出す。 部屋の中に干してある洗濯物はまだ乾いていなかったが、幸いと言おうか不幸にもと言おうか、パジャマを洗濯し忘れていたりしたので、何とか無事に着替えることができた。

○午後10時〜午前12時 1日の整理とパソコン通信

入浴後、子供達が明日の準備をしている間、少し自由な時間ができたので、今日のことを草の根ネットのボードにアップしようと思い付き、1日の作業内容をまとめ始める。 途中、子供達の就眠準備やら、カミさんの世話やらで中断しながら、半分ほどまとめたところでとうとうダウン。 こんなバカなこと始めなきゃ良かったと後悔しつつ、それでもせっかくまとめたのだからと、午前12時頃、草の根ネットにアクセスし、まとめた分だけアップ。

残りは明日アップするかもと書いたが、こんなに疲れていて、果たしてできるかどうか……いや、他ならぬ僕のことだから、やっぱりアップするだろうなぁ。 こうなると、我ながら、ほとんどパソ通の霊か何かに取りつかれているとしか思えない。

アップ終了後、ようやくホッと一息つく。 それから明日の朝の用意として、炊飯器のセットをしたり、ストーブのセットをしたりしながら、明日の予定を考える。 カミさんの熱は徐々に下がっているものの、まだ少し心配だし、僕も今日の家事労働で過労ぎみだから、明日も出社しないでおこうか……などとボンヤリ考えていて、 ふと、朝起きた時は喉が痛く、咳も少し出ていたのに、今は喉もほとんど痛まず、咳も出ないことに気が付く。

こんなに無茶ばかりしていて、どうして風邪をひかないんだ…!?

それにしても、今日は本当に大変な1日だった。 自分では、けっこう家事を手伝う方だと思い込んでいたが、いつの間にか夫婦で役割分担ができてしまっていて、生活の中でわからない部分が増えてきている。 こんなことでは男の自立はおぼつかないなあ……などと反省しつつ、

○午前1時頃 ようやく就眠。

1993年3月15日 一日専業主夫・荻須友則記す