玄関小説とエッセイの部屋作品紹介コーナーお気に入りの本−その他

題名をクリックしても、残念ながら本の内容は読めません。(^^;)

○「理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!」西浦博・川端裕人、中央公論社、2020年

帯のアオリ文句にあるように、”8割おじさん”こと西浦博先生が「科学者の社会的使命とは何か?」と自らに問いながら走り抜いた半年間の貴重な記録であり、責任を科学者に転嫁して保身に走る政治家達と、何事も事無かれ主義の官僚達と果敢に切り結び、世間の矢面に立って自ら火中の栗を拾い続ける科学者達の貴重な記録でもあります。 世間からどんなに罵られようと、医学研究者としての使命感に突き動かされて行動する科学者達の、腹の据わった覚悟にムチャクチャ感動してしまいました。

製薬企業の新薬開発プロジェクトや、厚労省の班研究や、AMED(日本医療研究開発機構)の統合プロジェクト等にデータ解析屋として関わった僕は、(これほど過酷ではありませんが(^^;))西浦先生と似たような仕事を経験しました。

データ解析屋は裏方ですから、表に出ることはめったにありません。 ところが図らずも表舞台に引っ張り出されてしまった西浦先生は、それならばと、従来の父権主義的――paternalism、強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためだとして、本人の意志は問わずに介入・干渉・支援すること――な政策決定ではなく、意思決定支援――risk informed decision、対策として考えられる全ての選択肢について、そのベネフィットとリスクの情報を全て公開した上で、政府または国民が主体的に意思決定するのを支援すること――による政策決定に挑戦しました。 その結果、脅迫状が届いたり、殺害予告を受けたりしながらも、果敢に挑戦し続け、現在も最良の方法を模索し続けられています。

COVID-19と科学コミュニケーションに関心がある、全ての人に読んでいただきたい本です。(^o^)/

○「ネルソンさん、あなたは人を殺しましたか? ベトナム帰還兵が語る『ほんとうの戦争』」アレン・ネルソン、講談社

○「戦場で心が壊れて─元海兵隊員の証言」アレン・ネルソン、新日本出版社

ベトナム帰還兵が「ほんとうの戦争は無慈悲で残虐で愚かで、そして無意味です」と語り、殺し合うことの悲惨さと命の尊さを訴えた2冊の名著です。 前著は講談社「シリーズ・子供達の未来のために」の中の一冊であり、子供向けなのに対して、後著は大人向けの続編といった感じです。

著者のアフリカ系アメリカ人であるアレン・ネルソン氏は、貧困と人種差別から抜け出すために18歳で海兵隊に志願し、19歳でベトナム戦争の最前線で戦います。 そして除隊後、戦争によるPTSD(心的外傷後ストレス障害)に長い間苦しみ、それを克服する過程で非暴力に目覚め、日米両国で精力的に平和活動を行いました。

後著の中でネルソン氏が、

「私には、日本の国全体がPTSDにかかっていて、侵略の記憶を政治家や大人が語れず、学校でも教科書でも、教えないような状態にあるように思えます。 私の経験から言うと、そういう状態ではいつまでたってもPTSDを克服することはできないと思います」

と語る言葉は、非常に重くかつ印象的です。 そしてネルソン氏がPTSDを克服する過程で目覚めた非暴力の理念と、日本の憲法第九条の理念が同じであることに感銘を受け、「PTSDを克服するためには、この理念に基づいて行動するべきだ」と力説します。

ネルソン氏が語る「ほんとうの戦争」は、軍人家系に生まれて軍人になり、第2次世界大戦の敗戦後は満州難民になった親父さんが、折りに触れて話してくれた内容と大変よく似ています。 ネルソン氏と同様に、親父さんがPTSDを克服するために自分が行った非道な行為を目をそらさずに見つめ、「ほんとうの戦争」について語ってくれたのかどうかはわかりません。 でも息子としては、親父さんが「ほんとうの戦争」について語ってくれたことに感謝しています。

○「いつかロロサエの森で」南風島渉、コモンズ

「映画カンタ!ティモール上映会・広田奈津子監督×しばやん講演会」で購入した、東ティモール本です。 著者の南風島渉氏は報道写真記者であり、「カンタ!ティモール」にも登場します。

本書を読むと「カンタ!ティモール」の背景がよくわかり、東ティモール問題をより多面的かつ立体的に把握することができると思います。 そして東ティモール問題に対する日本政府の悪辣な非道ぶりと、欧米諸国に根強く残る植民地主義についても知ることができ、「政府とマスコミの言うことを信用してはいけない」という当たり前のことをあらためて実感することができます。

そして何よりも、こういった問題に無関心でいるのは、虐殺や弾圧やレイプといった非人道的な行為に間接的に手を貸すのに他ならないということを、はっきりと自覚させてくれます。 本書を映画「カンタ!ティモール」とセットでお薦めします。v(^_-)