玄関雑学の部屋雑学コーナー統計学入門

12.9 時系列共分散分析

(1) 単純な時系列共分散分析

周期回帰分析と同様に、周期共分散分析も周期関数を一般的な関数にして一般化することができます。 その手法を時系列共分散分析(time series analysis of covariance)と呼ぶことにしましょう。 例として表12.6.1の平均値に最も簡単な一次関数つまり直線を用いた時系列共分散分析を適用すると次のようになります。 (注1)

表12.9.1 時系列共分散分析表
要因平方和自由度平均平方和(分散)F値
群差30.8802130.88020.13273
共通回帰2167.1412167.149.31489
修正群差30.8802130.88020.13273
全体回帰2167.1412167.149.31489
非平行性1145.1611145.164.92215
残差10236.844232.654
全体13579.947
○A群
群別時系列回帰式:y=109.66 + 1.6763t
共通時系列回帰式:y=117.775 + 0.970688t
群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.288(28.8%)
○B群
群別時系列回帰式:y=127.493 + 0.265072t
共通時系列回帰式:y=119.379 + 0.970688t
群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.035(3.5%)
○群差:2群の24時間平均値の差の検定
FA=0.13273(p=0.7174)<F(1,44,0.05)=4.062 … 有意水準5%で有意ではない
○共通回帰:2群の時系列回帰直線が平行と仮定した時の回帰の検定
Fβc=9.31489(p=0.0038)>F(1,44,0.05)=2.062 … 有意水準5%で有意
○修正群差:2群の時系列回帰直線が平行と仮定した時の24時間平均値の差の検定(レベルの検定)
FAA=0.13273(p=0.7174)<F(1,44,0.05)=4.062 … 有意水準5%で有意ではない
○全体回帰:2群を合わせて時系列回帰式を計算した時の回帰の検定
FβT=9.31489(p=0.0038)>F(1,44,0.05)=2.062 … 有意水準5%で有意
○非平行性:2群の時系列回帰直線が平行かどうかの検定(パターンの検定)
FD=4.92215(p=0.0317)>F(1,44,0.05)=2.062 … 有意水準5%で有意
図12.9.1 A群とB群の時系列回帰直線

表12.9.1および図12.9.1と第6節の表12.6.2および図12.6.1を比較すると、時系列回帰直線の適合度が低いため残差分散が大きくなり、検定結果の有意確率が大きくなっています。 表12.6.1のデータは日内変動を検討するためのものなので、適合度が低いのは致し方ありません。 この手法を用いると、時系列で繰り返し測定された血圧の平均的なレベルと時間的なトレンドを分離して群間比較することができます。 そのため繰り返し測定データの評価方法のひとつとして利用することができます。 (→4.3 繰り返しのある多標本・多時期の計量値 (5) 繰り返し測定データの評価方法)

(2) 二元配置型時系列共分散分析

次に表12.6.1を被験者と時期を要因にした二元配置型データと捉えて、直線を用いた二元配置型時系列共分散分析を適用すると次のようになります。 (注2)

表12.9.2 二元配置型時系列共分散分析表
要因平方和自由度平均平方和(分散)F値
群差74.1125174.11250.384155
個体残差578.7713192.924
個体652.8834163.2211.437
全体回帰3957.0313957.0334.8286
非平行性2748.3712748.3724.1904
ズレ合計22733.144516.6624.5475
残差7839.469113.614
全体37930.8119
○A群
群別時系列回帰式:y=109.66 + 1.6763t
共通時系列回帰式:y=119.397 + 0.829565t
平均値の変動に対する群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.288(28.8%)
○B群
群別時系列回帰式:y=127.493 + 0.265072t
共通時系列回帰式:y=121.002 + 0.829565t
平均値の変動に対する群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.035(3.5%)
○群差=修正群差:2群の24時間平均値の差の検定(レベルの検定)
FA=0.384155(p=0.5793)<F(1,3,0.05)=10.128 … 有意水準5%で有意ではない
○個体:被験者ごとの24時間平均値の差の検定
FSUB=1.43662(p=0.2312)<F(4,69,0.05)=2.505 … 有意水準5%で有意ではない
○全体回帰=共通回帰:2群を合わせて時系列回帰式を計算した時の回帰の検定
FβT=34.8286(p=1.214×10-7)>F(1,69,0.05)=3.980 … 有意水準5%で有意
○非平行性:2群の時系列回帰直線が平行かどうかの検定(パターンの検定)
FD=24.1904(p=5.686×10-6)>F(1,69,0.05)=3.980 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計:2群の時間ごとの平均値と時系列回帰直線のズレの検定
FLOF=4.5475(p=1.076×10-8)>F(44,69,0.05)=1.552 … 有意水準5%で有意

単純な時系列共分散分析の結果と比較すると、群別時系列回帰式と寄与率は同じですが、回帰と非平行性の分散比が非常に大きくなっています。 そしてこの手法では残差からズレ合計を分離して検定することができます。 また表12.9.2と第6節の表12.6.3を比較すると、全体回帰と非平行性とズレ合計以外は同じであることがわかります。 この手法は周期回帰曲線の代わりに直線を当てはめただけなので、変わるのは回帰に関係した部分だけなのです。

(3) 一元配置型時系列共分散分析

次は表12.6.1を測定時点ごとに独立した被験者で測定された一元配置型データと捉えて、直線を用いた一元配置型時系列共分散分析を適用すると次のようになります。 (注3)

表12.9.3 一元配置型時系列共分散分析表
要因平方和自由度平均平方和(分散)F値
群差74.1125174.11250.634
共通回帰3957.0313957.0333.8442
修正群差74.1125174.11250.634
全体回帰3957.0313957.0333.8442
非平行性2748.3712748.3723.5067
ズレ合計22733.144516.6624.41897
時期29512.647627.9285.37063
残差8418.1772116.919
全体37930.8119
○A群
群別時系列回帰式:y=109.66 + 1.6763t
共通時系列回帰式:y=119.397 + 0.829565t
平均値の変動に対する群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.288(28.8%)
○B群
群別時系列回帰式:y=127.493 + 0.265072t
共通時系列回帰式:y=121.002 + 0.829565t
平均値の変動に対する群別時系列回帰式の寄与率:r2=0.035(3.5%)
○群差:2群の24時間平均値の差の検定
FA=0.634(p=0.4286)<F(1,72,0.05)=3.974 … 有意水準5%で有意ではない
○共通回帰:2群の時系列回帰曲線が平行と仮定した時の回帰の検定
Fβc=33.8442(p=1.526×10-7)>F(1,72,0.05)=3.974 … 有意水準5%で有意
○修正群差:2群の時系列回帰曲線が平行と仮定した時の24時間平均値の差の検定(レベルの検定)
FAA=0.634(p=0.4286)<F(1,72,0.05)=3.974 … 有意水準5%で有意ではない
○全体回帰:2群を合わせて時系列回帰式を計算した時の回帰の検定
FβT=33.8442(p=1.526×10-7)>F(1,72,0.05)=3.974 … 有意水準5%で有意
○非平行性:2群の時系列回帰直線が平行かどうかの検定(パターンの検定)
 FD=23.5067(p=6.958×10-6)>F(1,72,0.05)=3.974 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計:2群の時間ごとの平均値と時系列回帰直線のズレの検定
FLOF=4.41897(p=1.255×10-8)>F(44,72,0.05)=1.545 … 有意水準5%で有意
○時期:平均値の時期変動の検定
FP=5.37063(p=1.120×10-10)>F(47,72,0.05)=1.535 … 有意水準5%で有意

二元配置型時系列共分散分析の結果と比較すると、群別および共通時系列回帰式と寄与率は同じですが、回帰の分散比も非平行性の分散比もズレの分散比も少し小さくなっています。 そして表12.9.3と第6節の表12.6.4を比較すると、共通および全体回帰と非平行性とズレ合計以外は同じであることがわかります。 この手法は周期回帰曲線の代わりに直線を当てはめただけなので、変わるのは回帰に関係した部分だけなのです。

ちなみにこの手法と同じ原理を用い、時期の代わりに用量を用いたものが用量反応解析で用いられる平行線検定法です。 平行線検定法については第13章で説明します。 (→13.2 平行線検定法)


(注1) 表12.6.1の群ごとの平均値を一般化すると次のようになります。 時期t1〜t(pi)は全ての群で同一でもかまいませんし、群ごとに異なっていてもかまいません。

表12.9.4 時系列共分散分析の
一般的データ
時期平均
t1tjt(pi)
1y11y1jy1(p1)m1.
:::::
iyi1yijyi(pi)mi.
:::::
aya1yajya(pa)ma.
全体m.1m.jm.(pi)mT
※piは群ごとに異なっていても良い

時系列共分散分析ではデータyijに対して次のような時系列回帰モデルを当てはめて考えます。 これは重回帰モデルに相当し、直線を用いた時系列共分散分析では説明変数をひとつにして、x1=tとします。 2番目以降の説明変数に第2節の(注1)で説明した周期成分を入れてx2=cos(ω1t)、x3=sin(ω1t)、…、x2m=cos(ωmt)、x2m+1=sin(ωmt)とすると、時間的なトレンドと周期変動を組み合わせた時系列回帰モデルになります。 そのような時系列回帰モデルは、例えば長期間に渡る血圧の変動をトレンドと日内変動に分離して分析する時などに用いることができます。

○群別時系列回帰モデル:群ごとに計算した時系列回帰式

:群別時系列回帰式による推定値 (i=1,…,a、j=1,…,pi)
b0i:Ai群の定数、群によって異なる (i=1,…,a)
bki:Ai群の偏回帰係数、群によって異なる (k=1,…,q、i=1,…,a)
○共通時系列回帰モデル:各群の時系列回帰直線が平行と仮定して計算した時系列回帰式

:共通時系列回帰式による推定値 (i=1,…,a、j=1,…,pi)
bc0i:Ai群の定数、群によって異なる (i=1,…,a)   bck:全群共通の偏回帰係数 (k=1,…,q)
○全体時系列回帰モデル:全群を合わせて計算した時系列回帰式

:全体時系列回帰式による推定値 (j=1,…,pi)
bT0:全体の定数  bTk:全体の偏回帰係数 (k=1,…,q)

以上の時系列回帰モデルに共分散分析の原理を適用します。 まず3通りの時系列回帰モデルによる推定値を用いてデータyijを3通りに分解し、その基本式に対応する平方和と自由度を求めると次のようになります。

群別時系列回帰:
全体時系列回帰:
共通時系列回帰:
○全体変動:(yij - mT)
総例数:   平方和:
自由度:φT=N - 1
○群別回帰変動:
平方和:

        
i=[i'i]-1i'i
     

dxjki=xjk - mx.ki   
自由度:
○共通回帰変動:
平方和:


  
自由度:φbc=q
○全体回帰変動:
平方和:
     
  
自由度:φbT=q
○群差変動:(mi. - mT)
平方和:   自由度:φA=a - 1
○修正群差変動:
平方和:   自由度:φAA=a - 1
○非平行性変動:
平方和:   自由度:
○残差変動:
平方和:   自由度:

表12.6.1のA群とB群の平均値について、x1=tだけを入れた時系列回帰式を用いて実際に計算してみましょう。

○A群の群別時系列回帰式
     
○B群の群別時系列回帰式
     
  
ST=821533 - 48×129.742≒13579.9   φT=48 - 1=47
bc1=2300-1×2232.58≒0.970688
Sbc=0.970688×2232.58≒2167.14  φbc=1

S1y=2232.58  SbT=0.970688×2232.58≒2167.14  φbT=1
SA=24×128.9382 + 24×130.5422 - 48×129.742≒30.8802   φA=1
SAA=30.8802 + 2167.14 - 2167.14=30.8802   φAA=1
SD=3312.3029 - 2167.14≒1145.16  φD=2 - 1=1
SR=13579.9 - 30.8802 - 2167.14 - 1145.16≒10236.8   φR=48 - 2×(1+1)=44

これらの統計量を用いて表12.9.1の時系列共分散分析表を作成することができます。

(注2) 二元配置型時系列共分散分析を適用する一般的データは第6節(注3)の表12.6.7と同じであり、基本式も同様に記述することができます。 この手法では説明変数に時期だけでなく他の項目も入れることにより、それらを共変数にした共分散分析を行うことができます。 例えば年齢などの背景因子を入れると、背景因子で補正して時期変動を群間比較することができます。

表12.9.5 二元配置型時系列共分散分析の一般的データ
被験者時期平均
t1tjtp
11y111y1j1y1p1m1.1
:::::
n1y11(n1)y1j(n1)y1p(n1)m1.(n1)
平均m11.m1j.m1p.m1..
::::::
i1yi11yij1yip1mi.1
:::::
niyi1(n1)yij(n1)yip(n1)mi.(n1)
平均mi1.mij.mip.mi..
::::::
a1ya11yaj1yap1ma.1
:::::
naya1(na)yaj(na)yap(na)ma.(na)
平均ma1.maj.map.ma..
全体Nm.1.m.j.m.p.mT
被験者と時期の二元配置:
群と時期の二元配置:
群別時系列回帰:
全体時系列回帰:
○全体変動:(yijl - mT)
総例数:   平方和:   自由度:φT=Np - 1
○被験者変動:(mi.l - mT)
平方和:   自由度:φSUB=N - 1
○時期変動:(m.j. - mT)
平方和:   自由度:φP=p - 1
○被験者×時期変動:{yijl - (mi.l + m.j. - mT)}
平方和:
自由度:φS×PT - φSUB - φPSUB×φP=(N-1)(p-1)
○群差変動:(mi.. - mT)
平方和:   自由度:φA=a - 1
○被験者残差変動:(mi.l - mi..)
平方和:   自由度:φSRSUB - φA=N - a
○群−時期変動:(mij. - mT)
平方和:   自由度:φAP=ap - 1
○群×時期変動:{mij. - (mi.. + m.j. - mT)}
平方和:
自由度:φA×PAP - φA - φPA×φP=(a-1)(p-1)
○残差=被験者残差×時期変動:{yijl - (mi.l + mij. - mi..)}
平方和:
自由度:φRSR×PT - φSUB - φPA×PSR×φP=(N-a)(p-1)
○群別回帰変動:
平方和:
自由度:
○群別時期変動:(mij. - mi..)
平方和:   自由度:
○群別ズレの変動:
平方和:
自由度:
○全体時回帰変動=共通回帰変動:
平方和:
     
  
自由度:φbTbc=q
○非平行性変動:
平方和:
自由度:

表12.6.1のデータについて、x1=tだけを入れた時系列回帰式を用いて実際に計算してみましょう。

ST=2062810 - 120×129.92≒37930.8   φT=120 - 1=119
SSUB=2025532 - 120×129.92≒652.883   φSUB=5 - 1=4
SP=5×409340 - 120×129.92≒21821.2   φP=24 - 1=23
SS×P=37930.8 - 652.883 - 21821.2=15456.72   φS×P=4×(24-1)=92
SA=2024953 - 120×129.92≒74.1125   φA=2 - 1=1
SSR=652.883 - 74.1125=578.771  φSR=5 - 2=3
SAP=2054392 - 120×129.92≒29512.6   φAP=2×24 - 1=47
SA×P=29512.6 - 74.1125 - 21821.2=7617.287   φA×P=(2-1)×(24-1)=23
SR=SSR×P=37930.8-652.883 - 21821.2 - 7617.287=7839.4
φRSR×P=(5-2)×(24-1)=69
○A群の群別時系列回帰式
     
○B群の群別時系列回帰式
     
  
  
  

S1yT=4770  SbT=0.829565×4770≒3957.03  φbT=1
SD=6705.4 - 3957.03=2748.37   φD=1×(2-1)=1

これらの統計量を用いて表12.9.2の周期共分散分析表を作成することができます。

(注3) 一元配置型時系列共分散分析の一般的データは、表12.9.5において各群の被験者が測定時期ごとに独立したものになります。 そのため群ごとに時期t1〜tpが必ずしも同一ではなく、被験者数niも測定時期ごとに必ずしも同一ではなくなります。 したがって単純な時系列共分散分析と同様に、全体回帰変動と共通回帰変動が同一になるとは限らず、群差と修正群差も同一になるとは限りません。 この手法ではデータを次のように分解し、その基本式に対する平方和と自由度を求めます。

時期の一元配置:(yijl - mT)=(mij. - mT) + (yijl - mij.)
群別時系列回帰:
全体時系列回帰:
共通時系列回帰:
○全体変動:(yijl - mT)
総例数:   平方和:
自由度:φT=N - 1
○時期変動:(mij. - mT)
平方和:
自由度:φP=P - 1   
○残差変動:(yijl - mij.)
平方和:   自由度:φRT - φP=N - P
○群差変動:(mi.. - mT)
平方和:   自由度:φA=a - 1
○群別時系列回帰変動:
平方和:
        
i=[i'i]-1i'i
     
dxjki=nij(xjk-mx.ki)   
  自由度:
○群別ズレの変動:
平方和:
自由度:
○全体回帰変動:
平方和:
     
  自由度:φbT=q
○共通回帰変動:
平方和:


  自由度:φbc=q
○修正群差変動:
平方和:   自由度:φAA=a-1
○非平行性変動:
平方和:
自由度:

表12.6.1のデータについてx1=tだけを入れた時系列回帰式を用いて実際に計算すると、群別時系列化回帰式と共通時系列回帰式は(注2)と同じ値になり、群差と修正群差の平方和と自由度は(注2)の群差の平方和と自由度と同じ値になり、共通回帰と全体回帰の平方和と自由度は(注2)の全体回帰の平方和と自由度と同じ値になり、非平行性とズレ合計と全体の平方和と自由度は(注2)と同じ値になります。 これは表12.6.1のデータが同じ被験者について繰り返し測定したものであり、時期ごとの例数が揃っているからです。

時期と残差の平方和と自由度は次のような値になり、これは一元配置分散分析独自の値です。 これらの統計量と(注2)の統計量を用いて、表12.9.3の周期共分散分析表を作成することができます。

SP=2054393.8 - 120 × 129.92=29512.6   φP=48 - 1=47
SR=37930.8 - 29512.6=8418.2  φR=120 - 48=72