13.5 名義尺度の平行線検定法
(1) D50を用いた効力比
生物検定法における効力比は2つの物質が同じ反応をする時の用量の比として求めます。
そのため標準検体のD50が1mgで未知検体のD50が0.5mgなら、「未知検体の1mgは標準検体の2mgに相当する」ことになり効力比は2になります。
これは効力比を求める簡便な方法ですが、反応が50%の時に限定されるという欠点があります。
そこで反応が計量尺度の時と同様に用量反応率関数を利用して平行線検定を行えば、反応率とは無関係に普遍的な効力比を求めることができます。
(→13.2 平行線検定法)
(2) 用量−プロビット直線を利用した平行線検定法
反応が名義尺度の時の平行線検定法は、D50を推定する手法と同様に色々な手法があります。
まず理論的に最も合理的な用量−プロビット直線を利用した手法について説明しましょう。
反応が計量尺度の時と同様に2×3点法のデザインを用い、標準検体Sの用量を250mg/kg、300mg/kg、360mg/kgの3用量、未知検体Uの用量を300mg/kg、360mg/kg、440mg/kgの3用量とし、各用量に15匹のマウスを無作為に割り付けて反応を観察したところ表13.5.1のようになったとします。
表13.5.1 名義尺度の時の2×3点法試験のデータ
薬物 | 用量 | 反応数 | 非反応数 | 計 | 反応率(%) |
標準検体S | 250mg/kg | 4 | 11 | 15 | 26.7 |
300mg/kg | 7 | 8 | 15 | 46.7 |
360mg/kg | 11 | 4 | 15 | 73.3 |
未知検体U | 300mg/kg | 3 | 12 | 15 | 20.0 |
360mg/kg | 5 | 10 | 15 | 33.3 |
440mg/kg | 9 | 6 | 15 | 60.0 |
このデータについて標準検体Sと未知検体Uごとに対数用量反応率曲線を求め、それをグラフ化すると図13.5.1のようになります。
○標準検体S
対数用量−プロビット直線:y=-14.523 + 7.869x
対数用量反応率率曲線:p=Φ(-14.523+7.869x-5) … 図13.5.1の青色の曲線
回帰の検定:χβS2=6.42825(p=0.0112319)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFS2=0.0423078(p=0.837034)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
寄与率:r2=0.993462(99.3%)
D50=102.481=302.695mg/kg
○未知検体U
対数用量−プロビット直線:y=-12.395 + 6.66399x
対数用量反応率率曲線:p=Φ(-12.395+6.66399x-5) … 図13.5.1の赤色の曲線
回帰の検定:χβU2=5.05237(p=0.0245923)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFU2=0.0697892(p=0.791644)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
寄与率:r2=0.986375(98.6%)
D50=102.6103=407.664mg/kg
このデータにプロビット法による平行線検定法を適用すると次のようになります。
(注1)
表13.5.2 プロビット法による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | 6.56216 | 1 | 6.56216 |
S:ズレ | 0.0418299 | 1 | 0.0418299 |
U:回帰 | 4.93384 | 1 | 4.93384 |
U:ズレ | 0.0712042 | 1 | 0.0712042 |
|
共通回帰 | 11.4172 | 1 | 11.4172 |
ズレ合計 | 0.113034 | 2 | 0.113034 |
非平行性 | 0.0787469 | 1 | 0.0787469 |
全体 | 11.609 | 4 | |
○標準検体S
回帰の検定:χβS2=6.56216(p=0.010417)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFS2=0.0418299(p=0.837944)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=-14.4982 + 7.85893x
平行な対数用量−プロビット直線:y=-12.9722 + 7.24304x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(-12.9722+7.24304x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=102.4813=302.901mg/kg
○未知検体U
回帰の検定:χβU2=4.93384(p=0.0263358)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFU2=0.0712042(p=0.789591)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=-12.3731 + 6.65554x
平行な対数用量−プロビット直線:y=-13.881 + 7.24304x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(-13.881+7.24304x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=102.60677=404.364mg/kg
○共通回帰の検定:χβc2=11.4172(p=0.00072)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.113034(p=0.94505)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.0787469(p=0.779003)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○効力比(U/S):R=0.74908 (log(R)=-0.125472)
95%信頼区間:RL=0.573214 (log(RL)=-0.241683)
RU=0.898816 (log(RU)=-0.0463292)
○修正切片の差の検定:χac2=7.27451(p=0.0070)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
95%信頼区間=-0.908795±0.660408
→ δL=-1.5692 δU=-0.248387
(3) 平行線検定法の結果の解釈
反応が名義尺度の時の平行線検定法の結果の解釈方法と注意点は、計量尺度の平行線検定法とほぼ同様です。
ただしプロビット法では検体ごとに平行な対数用量−プロビット直線について最尤法によるプロビット分析を行い、その結果を利用して平行線検定法を行います。
最尤法は繰り返し計算によって近似解を求める手法であり、どの対数用量−プロビット直線を近似の対象にするかによって解が微妙に異なります。
そのため最初に記載した検体ごとにプロビット分析を行った時の結果と比較すると、検体ごとの対数用量−プロビット直線つまり群別対数用量−プロビット直線は微妙に異なり、回帰とズレの検定結果も微妙に異なります。
またこの手法では検体ごとにプロビット分析を行うので、検体差と修正検体差を直接求めることはできません。
そのため表13.5.2の分散分析表に検体差と修正検体差の要因はなく、用量の要因もありません。
そしてUのズレと共通回帰の間に隙間があるのはSの回帰〜Uのズレまでの平方和および自由度を合計したものと、共通回帰〜非平行性を合計したものの平方和および自由度が等しくなることを表しています。
修正検体差を直接求めることはできませんが、効力比を求める計算原理を応用して、修正検体差に相当する平行な対数用量−プロビット直線の切片の差について検定と推定を行うことができます。
それが上記の結果中の「修正切片の差の検定」とその95%信頼区間です。
この検定結果が有意の時はSとUの平行な対数用量−プロビット直線の切片が異なっていて、効力比が1ではないと解釈できます。
切片の差はプロビットの差であり、正規偏位(NED:normal deviate)の差に相当します。
そのためコーヘンの効果量(effect size、Cohenb's D)と同様に解釈することができます。
このデータでは修正切片の差が-0.908795ですから標準偏差程度の差があることになり、けっこう大きな差――Sの反応率が50%の時、Uの反応率は約20%になることに相当――と考えられます。
このことは図13.5.1のグラフで用量300mg/kgの時のSの反応率が約50%であるのに対して、同じ用量の時のUの反応率は約20%であることを見れば納得できるでしょう。
この修正切片の差-0.908795を平行な対数用量−プロビット直線の回帰係数7.24304で割ると、対数効力比-0.125472になります。
そのため修正切片の差の信頼区間を回帰係数で割ることによって、対数効力比の信頼区間を間接的に求めることができます。
ただし修正切片の差の信頼区間と効力比の信頼区間は計算原理が異なるので、修正切片の差の信頼区間から間接的に求めた効力比の信頼区間と、効力比から直接求めた信頼区間が一致するとは限りません。
効力比の信頼区間は効力比から直接求めた値の方が正確です。
この手法で求めた効力比が意味を持つのは次のような条件を満足している時です。
表13.5.2の結果はこれらの条件を満足していることがわかります。
- 非平行性の検定結果が有意ではなく、2群の群別対数用量反応率曲線がほぼ平行
- 共通回帰の検定結果が有意で、かつズレ合計の検定結果が有意ではなく、対数用量反応率関係をプロビット曲線で近似できる。
(4) 実用量を用いた平行線検定法
計量値尺度の平行線検定法と同様に、名義尺度の平行線検定法も実用量を用いて解析することができます。
例えば表13.5.1に実用量を用いたプロビット法による平行線検定法を適用すると次のようになります。
表13.5.3 実用量による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | 6.707 | 1 | 6.707 |
S:ズレ | 0.004333 | 1 | 0.004333 |
U:回帰 | 4.862 | 1 | 4.862 |
U:ズレ | 0.02142 | 1 | 0.02142 |
|
共通回帰 | 11.2 | 1 | 11.2 |
ズレ合計 | 0.02576 | 2 | 0.02576 |
非平行性 | 0.3694 | 1 | 0.3694 |
全体 | 11.59 | 4 | |
○標準検体S
回帰の検定:χβS2=6.707(p=0.009601)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFS2=0.004333(p=0.9475)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=1.55 + 0.01128x
平行な対数用量−プロビット直線:y=2.172 + 0.009229x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(2.172+0.009229x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=306.5mg/kg
○未知検体U
回帰の検定:χβU2=4.862(p=0.02746)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFU2=0.02142(p=0.8836)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=1.779 + 0.007857x
平行な対数用量−プロビット直線:y=1.267 + 0.009229x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(1.267+0.009229x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=404.5mg/kg
○共通回帰の検定:χβc2=11.2(p=0.0008181)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.02576(p=0.9872)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.3694(p=0.5433)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○同一反応時時の用量差(S-U):d=-98.01
95%信頼区間:dL=-189.8 dU=-35.68
○修正切片の差の検定:χac2=7.155(p=0.007474)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
95%信頼区間=-0.9045±0.6627
→ δL=-1.567 δU=-0.2418
この結果は対数用量を用いた時の結果と大きくは違っていません。
これは用量の間隔が比較的小さく、対数スケールと実数スケールが大きく異なっていないからです。
このことは図13.5.1のグラフの横軸を見ると納得できると思います。
この横軸は対数スケールで描いてありますが、数字の間隔が実数スケールとあまり変わりません。
そして計量尺度の平行線検定法と同様に、実用量の場合は用量に基づいた効力比という考え方ができないので用量差よりも修正切片の差を効力差の指標にする方がわかりやすいでしょう。
(5) 用量反応率直線による平行線検定法
第4節で説明したように、プロビット分析は計算が複雑なのでコクラン・アーミテージの傾向分析やロジット分析などの簡便な近似法が開発されています。
これらの近似手法を利用すると、プロビット法による平行線検定法の近似解析をすることができます。
そこで最も簡便で結果の解釈が容易な傾向分析を利用して、用量反応率直線による平行線検定法を行ってみましょう。
表13.5.1のデータに用量反応率直線による平行線検定法を適用すると次のようになります。
(注2)
表13.5.4 用量反応率直線による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | 6.53656 | 1 | 6.53656 |
S:ズレ | 0.0444664 | 1 | 0.0444664 |
U:回帰 | 5.15559 | 1 | 5.15559 |
U:ズレ | 0.138524 | 1 | 0.138524 |
|
共通回帰 | 11.5775 | 1 | 11.5775 |
ズレ合計 | 0.18299 | 2 | 0.18299 |
非平行性 | 0.114611 | 1 | 0.114611 |
全体 | 11.8751 | 4 | |
○標準検体S
回帰の検定:χβS2=6.53656(p=0.0105679)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFS2=0.0444664(p=0.832988)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−反応率直線:p=-6.81076 + 2.94683x
平行な対数用量−反応率直線:p=-6.10051 + 2.6601x
平行な対数用量−反応率直線によるD50=102.4813=302.899mg/kg
○未知検体U
回帰の検定:χβU2=5.15559(p=0.0231716)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFU2=0.138524(p=0.709753)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−反応率直線:y=-5.80413 + 2.41579x
平行な対数用量−反応率直線:y=-6.42931 + 2.6601x
平行な対数用量−反応率直線によるD50=102.60491=402.629mg/kg
○共通回帰の検定:χβc2=11.5775(p=0.00067)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.18299(p=0.912566)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.114611(p=0.734954)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○効力比(U/S):R=0.752303 (log(R)=-0.123607)
95%信頼区間:RL=0.569368 (log(RL)=-0.244607)
RU=0.903463 (log(RU)=-0.0440896)
○修正切片の差の検定:χac2=7.27072(p=0.0070)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
95%信頼区間=-0.328807±0.239002
→ δL=-0.567809 δU=-0.0898057
この結果はプロビット法による平行線検定法の結果とよく似ています。
図13.5.1のSとUの対数用量反応率曲線はかなり直線的ですから、これらの曲線を直線で近似してもそれほど誤差はないことが上記の結果からも納得できると思います。
そしてこの場合の目的変数は反応率そのもののため、結果が解釈しやすいと思います。
例えば修正切片の差が-0.328807ということから、Sの反応率よりもUの反応率の方が30%ほど小さいことが容易に理解できます。
この手法でも実用量による平行線検定法を行うことができます。
表13.5.1のデータに実用量による平行線検定法を適用すると次のようになります。
表13.5.5 実用量による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | 6.57516 | 1 | 6.57516 |
S:ズレ | 0.0058637 | 1 | 0.0058637 |
U:回帰 | 5.2328 | 1 | 5.2328 |
U:ズレ | 0.0613218 | 1 | 0.0613218 |
|
共通回帰 | 11.3773 | 1 | 11.3773 |
ズレ合計 | 0.0671855 | 2 | 0.0671855 |
非平行性 | 0.430651 | 1 | 0.430651 |
全体 | 11.8751 | 4 | |
○標準検体S
回帰の検定:χβS2=6.57516(p=0.0103411)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFS2=0.0058637(p=0.938962)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−反応率直線:p=-0.8 + 0.00424908x
平行な対数用量−反応率直線:p=-0.537448 + 0.00338353x
平行な対数用量−反応率直線によるD50=306.617mg/kg
○未知検体U
回帰の検定:χβU2=5.2328(p=0.0221649)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFU2=0.0613218(p=0.804419)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−反応率直線:y=-0.679279 + 0.00288288x
平行な対数用量−反応率直線:y=-0.86285 + 0.00338353x
平行な対数用量−反応率直線によるD50=402.789mg/kg
○共通回帰の検定:χβc2=11.3773(p=0.000743)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.0671855(p=0.966965)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.430651(p=0.51167)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○同一反応時時の用量差(S-U):d=-96.1722
95%信頼区間:dL=-192.217 dU=-33.6072
○修正切片の差の検定:χac2=7.14841(p=0.00750307)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
95%信頼区間=-0.325401±0.238541
→ δL=-0.563942 δU=-0.0868604
この結果もプロビット法による平行線検定法の結果とよく似ていて、対数用量を用いた結果ともよく似ています。
これらの結果から、用量反応率関係が直線的な時はプロビット法による平行線検定法の代わりに用量−反応率直線による平行線検定法を用いても大きな誤差はないことがわかると思います。
反応が計量尺度の時の平行線検定法は、どんな場合も用量反応関係を直線で近似します。
それと同様に反応が名義尺度の時の平行線検定法も、大抵の場合は用量反応率関係を直線で近似してもかまわないと思います。
(6) 平行線検定法による共分散分析
計量尺度の平行線検定法と同様に、名義尺度の平行線検定法も用量反応関係に関する共分散分析として利用することができます。
例えばある薬剤の4用量(プラセボ含む)を男女別に層別無作為割り付けして効果を観測したところ、表13.5.6のようになったとします。
表13.5.6 男女別用量有効率データ
性別 | 用量(mg) | 有効 | 無効 | 計 | 有効率(%) | 補正有効率(%) |
男 | 0(プラセボ) | 9 | 20 | 29 | 31.0 | 0 |
10 | 12 | 18 | 30 | 40 | 13 |
20 | 14 | 16 | 30 | 46.7 | 22.7 |
30 | 18 | 11 | 29 | 62.1 | 45 |
女 | 0(プラセボ) | 5 | 22 | 27 | 18.5 | 0 |
10 | 8 | 20 | 28 | 28.6 | 12.3 |
20 | 10 | 18 | 28 | 35.7 | 21.1 |
30 | 12 | 15 | 27 | 44.4 | 31.8 |
このデータにプロビット法による平行線検定法を適用すると次のようになります。
この場合はプラセボ群つまり用量0の群に有効例があるので、アボット(Abbott)の式を利用して補正有効率を求めてこれを反応率として用い、プラセボ群を除外して平行線検定法を適用します。
(→13.4 プロビット分析 (注1))
表13.5.7 プロビット法による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
男:回帰 | 2.38969 | 1 | 2.38969 |
男:ズレ | 0.242561 | 1 | 0.242561 |
女:回帰 | 1.06167 | 1 | 1.06167 |
女:ズレ | 0.0292853 | 1 | 0.0292853 |
|
共通回帰 | 3.30315 | 1 | 3.30315 |
ズレ合計 | 0.271846 | 2 | 0.271846 |
非平行性 | 0.148211 | 1 | 0.148211 |
全体 | 3.72321 | 4 | |
○男
回帰の検定:χβM2=2.38969(p=0.122138)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
ズレの検定:χLOFM2=0.242561(p=0.622363)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=1.50774 + 2.23082x
平行な対数用量−プロビット直線:y=2.03992 + 1.83358x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(2.03992+1.83358x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=101.61437=41.1499mg
○女
回帰の検定:χβF2=1.06167(p=0.302834)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
ズレの検定:χLOFF2=0.0292853(p=0.864122)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=2.3562 + 1.45383x
平行な対数用量−プロビット直線:y=1.8455 + 1.83358x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(1.8455+1.83358x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=101.7204=52.5291mg
○共通回帰の検定:χβc2=3.30315(p=0.0691474)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.271846(p=0.87291)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.148211(p=0.700251)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○効力比(女/男):R=0.783374 (log(R)=-0.106031)
95%信頼区間:RL=0.335369 (log(RL)=-0.474478)
RU=1.82985 (log(RU)=0.262416)
○修正切片の差の検定:χac2=0.348461(p=0.554986)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
95%信頼区間=-0.194417±0.645512
→ δL=-0.839929 δU=0.451096
以上のように検定結果はどれも有意ではなく、効力比も修正切片の差も大きいとはいえません。
そのため用量反応率関係があるかどうか、用量反応率関係に性差があるかどうかはっきりしません。
そこで次は実用量による平行線検定法を適用してみましょう。
表13.5.6のデータは実用量が等間隔になっていて、プラセボ群の有効率が比較的高くなっています。
このようなデータには実用量による平行線検定法の方が適していることが多いのです。
実用量を用いる時は本来の有効率を反応率として用い、プラセボ群も含めて平行線検定法を適用します。
表13.5.8 実用量による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
男:回帰 | 5.82 | 1 | 5.82 |
男:ズレ | 0.1833 | 2 | 0.1833 |
女:回帰 | 4.48 | 1 | 4.48 |
女:ズレ | 0.05854 | 2 | 0.05854 |
|
共通回帰 | 10.29 | 1 | 10.29 |
ズレ合計 | 0.2418 | 4 | 0.2418 |
非平行性 | 0.007039 | 1 | 0.007039 |
全体 | 10.54 | 6 | |
○男
回帰の検定:χβM2=5.82(p=0.01585)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFM2=0.1833(p=0.9124)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=4.481 + 0.02575x
平行な対数用量−プロビット直線:y=4.49 + 0.02514x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(4.49+0.02514x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=20.27mg
○女
回帰の検定:χβF2=4.48(p=0.0343)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
ズレの検定:χLOFF2=0.05854(p=0.9712)<χ2(2,0.05)=5.991 … 有意水準5%で有意ではない
群別対数用量−プロビット直線:y=4.143 + 0.02443x
平行な対数用量−プロビット直線:y=4.132 + 0.02514x
平行な対数用量反応率曲線:p=Φ(z)=Φ(y-5)=Φ(4.132+0.02514x-5)
平行な対数用量反応率曲線によるD50=34.54mg
○共通回帰の検定:χβc2=10.29(p=0.001336)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
○ズレ合計の検定:χLOF2=0.2418(p=0.9933)<χ2(4,0.05)=9.488 … 有意水準5%で有意ではない
○非平行性の検定:χDISP2=0.007039(p=0.9331)<χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意ではない
○同一反応時時の用量差(男-女):d=-14.26
95%信頼区間:dL=-43.73 dU=-0.8158
○修正切片の差の検定:χac2=4.316(p=0.03776)>χ2(1,0.05)=3.841 … 有意水準5%で有意
95%信頼区間=-0.3586±0.3383
→ δL=-0.6977 δU=-0.02028
以上のように実用量を用いるとプロビット曲線で近似できる用量反応率関係があり、それに性差はほとんどないと解釈できる結果になります。
そして有効率には性差があり、男よりも女の方が10%ほど低い――プロビット単位で-0.3586の差は、男の有効率が50%の時、女の有効率は約36%になることに相当――こともわかります。
表13.5.6のようなデータについて、有効/無効を群分類扱いし、用量を順序データ扱いして拡張マンテル検定を適用することがたまにあるようです。
しかし拡張マンテル検定は2群の順位平均値に関する共分散分析に相当する手法であり、群分類には誤差がなく、順序データに誤差があるという前提で組み立てられた手法です。
そのため誤差のある有効/無効を群分類扱いし、誤差のない用量を順序データ扱いするのは非合理です。
しかも用量を順序データ扱いするので用量反応関係を特定の関数(プロビット曲線等)で近似して定量的に評価することはできず、特定の関数とのズレを評価することもできません。
(→4.4 繰り返しのある多標本・多時期の計数値、5.3 計数値の相関分析と回帰分析 (注3))
せっかく名義尺度の平行線検定法という合理的な手法があるのですから、表13.5.6のようなデータにはこの手法を適用することを強くお勧めします。
(7) 安全域と最適用量
薬理学分野では有効性と安全性の兼ね合いから、LD50とED50を用いた安全域(margin of safety)という値が用いられます。
この値はLD0とED100を用いたエールリッヒ(Ehrlich)の治療指数(TI:Therapeutic Index)という値が元になっています。
しかしLD0やED100を合理的に求める方法がないため、仕方なくこの値を用いているのです。
Sを対数変換すると用量メタメタ−の間隔になり、「安全域」という意味がはっきりします。
これは有効性の用量−プロビット直線と有害性の用量−プロビット直線が平行なら、有効性と有害性の反応率が同じ時の用量比になります。
しかし一般には両者の用量−プロビット直線は平行にならず、有害性の方が傾きが大きい、つまり有害性の閾用量は個体によって違いが少ないとされています。
そのため推定精度は多少悪くなるものの、LD10とED90あたりを用いた方が現実的な意味は大きくなるでしょう。
T=
LD
10
ED
90
log(T)=log(LD10) - log(ED90)
1から有害性の反応率を引いた値を安全率と考えれば、安全性の用量反応率曲線を描くことができます。
それは有害性の用量反応率曲線を上下ひっくり返したグラフになります。
そして有効性と安全性の用量反応率曲線を合成し、有用性の用量反応率曲線つまり用量有用性曲線を作ることができます。
それはS字状のシグモイド曲線ではなく、正規分布のようなベル型の曲線になります。
この曲線において、有効性と有害性の用量−プロビット直線の傾きが同じなら、反応率が最大になる時の用量はlog(LD50)とlog(ED50)の平均値を指数変換した値つまりLD50とED50の幾何平均になります。
有効性と安全性を同等に扱う時はこの値付近を最適用量にします。
しかしどちらかに重きを置いた時——普通は安全性に重きを置く——は、それに応じて前後にずれます。
→
薬物の用量反応率関係がシグモイド曲線にならず、ベル型になる時があります。
個体閾用量分布を累積したものが用量反応率関係になるなら、用量反応率関係は必然的に単調増加のシグモイド型になるはずなのでベル型になるのは理屈に合いません。
そのような時は見かけ上は1つの反応ですが、ちょうど有効性と安全性のように生体内で2つ以上の相反する作用が起きていて、それらが複合した結果を1つの反応として観測していると考えると理屈に合います。
もしそれらの相反する作用に対する薬物の閾用量が異なれば、実際に観測される用量反応率関係がベル型になっても不思議ではありません。
そのような時は用量反応率関係を直接求めることはできません。
1つ1つの作用を別々に観測できるような実験を考案し、それぞれの用量反応率曲線を求めて、それを合成して用量反応率曲線を求める必要があります。
薬物の有用性は有効性と安全性を同時に考慮した複合的な概念です。
そこで薬物の用量有用性曲線を求め、それに基いて最適用量を決めるためには有効性と安全性をそれぞれ個別に評価し、それらを合成して総合的に評価する必要があります。
新薬開発における安全性評価のための第1相試験と、有効性評価のための第2相試験はそのために工夫された段階的試験方法です。
(注1) 表13.5.1を一般化すると次のようになります。
表13.5.9 プロビット法による平行線検定法の一般的データ
薬物 | 用量 | 対数用量 | 反応個体数 | 非反応個体数 | 総個体数 | 反応率 |
標準検体S | D1S | x1S | r1S | n1S-r1S | n1S | p1S |
: | : | : | : | : | : |
DiS | xiS | riS | niS-riS | niS | piS |
: | : | : | : | : | : |
DaS | xaS | raS | naS-raS | naS | paS |
未知検体U | D1U | x1U | r1U | n1U-r1U | n1U | p1U |
: | : | : | : | : | : |
DiU | xiU | riU | niU-riU | niU | piU |
: | : | : | : | : | : |
DaU | xaU | raU | naU-raU | naU | paU |
プロビット法による平行線検定法では、反応率pikの実用プロビットyikを次のように3通りに分解して考えます。
基本式:
:全体回帰式による推定値 (k=S,U)
:共通回帰式による推定値 (k=S,U)
:検体別回帰式による推定値 (k=S,U)
これらの基本式に基いて回帰式のパラメーターを最尤法で求めることは、プロビット分析と同様に、実用プロビットを用いた重み付け最小2乗法によって回帰式のパラメーターを近似的に求めることに相当します。
そして平行線検定法では共通回帰式を正確に求めることが重要なので、実用プロビットは観測反応率、共通回帰式のパラメーター、期待プロビットと期待反応確率から求めます。
共通回帰式のパラメーター初期値は、例えば観測プロビットと対数用量との単純な回帰分析から求めます。
(→13.4 プロビット分析 (注1))
観測プロビット:Y
ik=Φ
-1(p
ik) + 5 (k=S,U)
Φ
-1(p):標準正規分布Φ(z)の逆関数
観測反応率:p
ik (k=S,U)
期待プロビット=共通回帰式による推定値:
(k=S,U)
期待反応確率:
(k=S,U)
実用プロビット:
(k=S,U)
重み:
(k=S,U)
収束条件:
<ε=0.01〜0.0001
:(l+1)回目とl回目の期待プロビット (k=S,U)
実用プロビットを用いた重み付け最小2乗による平行線検定法の計算は、反応が計量尺度の時の平行線検定法に準じて次のように行います。
(→13.2 平行線検定法 (注1))
○標準検体S:
S
LOFS=S
yyS - S
βS=χ
LOFS2
φ
yS=aS - 1 φ
βS=1
φ
LOFS=φ
yS - φ
βS=aS - 2
a
S=m
yS - b
Sm
xS
○未知検体U:
S
LOFU=S
yyU - S
βU=χ
LOFU2
φ
yU=aU - 1 φ
βU=1
φ
LOFU=φ
yU - φ
βU=aU - 2
a
U=m
yU - b
Um
xU
○共通回帰:
φ
βc=1
a
ck=m
yk - b
cm
xk (k=S,U)
○ズレ合計:S
LOF=S
LOFS + S
LOFU=χ
LOF2
φ
LOF=φ
LOFS + φ
LOFU=(aS + aU) - 4
○非平行性:S
DISP=(S
βS+S
βU) - S
βc=χ
DISP2
φ
DISP=(φ
βS + φ
βU) - φ
βc=1
○全体:N=N
S + N
U
S
yy=S
yyS + S
yyU
φ
y=φ
yS + φ
yU=(aS + aU) - 2
○効力比:ρ=R=10
M
100(1-α)%信頼区間 下限:ρ
L=10
μL
上限:ρ
U=10
μU
g≒0の時:
○修正切片の差:δ=a
cU - a
cS
φ
ac=1
100(1-α)%信頼区間:
→ 下限:
上限:
※σ
2≒1
ズレ合計が大きい時は
とする時もある
表13.5.10 プロビット法による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | SβS | φβS | χβS2 |
S:ズレ | SLOFS | φLOFS | χLOFS2 |
U:回帰 | SβU | φβU | χβU2 |
U:ズレ | SLOFU | φLOFU | χLOFU2 |
|
共通回帰 | Sβc | φβc | χβc2 |
ズレ合計 | SLOF | φLOF | χLOF2 |
非平行性 | SDISP | φDISP | χDISP2 |
全体 | Syy | φy | |
○S:回帰の検定
帰無仮説 H0:Sの用量−プロビット直線の傾きが0である(βS=0)
χβS2>χ2(φβS,α)の時、有意水準100α%で有意
○S:ズレの検定
帰無仮説 H0:Sの用量−プロビット直線と反応率の変動が一致している
χLOFS2>χ2(φLOFS,α)の時、有意水準100α%で有意
○U:回帰の検定
帰無仮説 H0:Uの用量−プロビット直線の傾きが0である(βU=0)
χβU2>χ2(φβU,α)の時、有意水準100α%で有意
○U:ズレの検定
帰無仮説 H0:Uの用量−プロビット直線と反応率の変動が一致している
χLOFU2>χ2(φLOFU,α)の時、有意水準100α%で有意
○共通回帰の検定
帰無仮説 H0:平行な用量−プロビット直線の傾きが0である(βc=0)
χβc2>χ2(φβc,α)の時、有意水準100α%で有意
○ズレ合計の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−プロビット直線と反応率の変動が一致している
χLOF2>χ2(φLOF,α)の時、有意水準100α%で有意
○非平行性の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−プロビット直線の傾きが一致している
χDISP2>χ2(φDISP,α)の時、有意水準100α%で有意
○修正切片の差の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−プロビット直線の切片が一致している
χac2>χ2(φac,α)の時、有意水準100α%で有意
用量が0の群の観測反応率p0が0よりも大きい時は、アボットの式によって観測反応率と重みを補正します。
補正観測反応率:
… p
i=p
0 + p
i*(1 - p
0)と考える
補正重み:
実用量を用いた平行線検定法はxとして用量そのものを用いるだけで、計算式は変わりません。
ただし効力比Rは求めず、Mを同一反応の時の用量差として用います。
でも実用量の場合は修正切片の差を効力差の指標にした方が良いので、用量差はあまり重要ではなくなります。
表13.5.1のデータについて、対数用量を用いて実際に計算してみましょう。
実用量を用いた平行線検定法に興味のある人は自分で計算してみてください。
観測プロビット:Y
1S=Φ
-1(0.266667) + 5=4.37707
Y
2S=Φ
-1(0.466667) + 5=4.91635
Y
3S=Φ
-1(0.733333) + 5=5.62293
Y
1U=Φ
-1(0.2) + 5=4.15383
Y
2U=Φ
-1(0.333333) + 5=4.56927
Y
3U=Φ
-1(0.6) + 5=5.25335
対数用量と観測プロビットの回帰分析:m
xS=2.47712
m
yS=4.97212
S
xxS=0.0125393 S
yyS=0.780738
S
xyS=0.0986481
m
xU=2.55896 m
yU=4.66033
S
xxU=0.0138437 S
yyU=0.6119168
S
xyU=0.0914266
a
cS0=4.97212 - 7.20444×2.47712=-12.8742
a
cU0=4.66033 - 7.20444×2.55896=-13.7755
期待プロビット初期値:
実用プロビット初期値:
対数用量と実用プロビットの重み付け回帰分析:N
S=26.4944
m
xS=2.47772 m
yS=4.97404
S
xxS=0.106248 S
yyS=6.60399
S
xyS=0.834993
N
U=25.342 m
xU=2.56664 m
yU=4.70929
S
xxU=0.111383
S
yyU=5.00504 S
xyU=0.741313
a
cS1=4.97404 - 7.24304×2.47772=-12.9722
a
cU1=4.70929 - 7.24304×2.56664=-13.881
期待プロビット1回目:
期待プロビット初期値と期待プロビット1回目の差の最大値が0.01よりも小さいので、ここで計算を終了します。
そして次のような統計量を求めると表13.5.2の分散分析表を作成することができます。
S
LOFS=6.60399 - 6.56216=0.04183=χ
LOFS2
φ
yS=3 - 1=2 φ
βS=1
φ
LOFS=3 - 2=1
S
LOFU=5.00504 - 4.93384=0.07120=χ
LOFU2
φ
yU=3 - 1=2 φ
βU=1
φ
LOFU=3 - 2=1
S
xx*=0.106248 + 0.111383=0.217631
S
xy*=0.834993 + 0.741313=1.576306
φ
βc=1
S
LOF=0.04183 + 0.07120=0.11303=χ
LOF2
φ
LOF=6 - 4=2
S
DISP=(6.56216 + 4.93384) - 11.4172=0.0788=χ
DISP2
φ
DISP=1
N=26.4944 + 25.342=51.8364 S
yy=6.60399 + 5.00504=11.60903
φ
y=6 - 2=4
R=10
-0.125472=0.74908
1-g=0.663539
m
xS - m
xU=2.47772 - 2.56664=-0.08892
M-g(m
xS-m
xU)=-0.125472 - 0.336473×(-0.08892)=-0.0955529
ρ
L=10
-0.241683=0.573214
ρ
U=10
-0.0463292=0.898816
δ=-13.881 - (-12.9772)=-0.9088
(注2) 傾向分析を利用した用量反応率直線による平行線検定法は、目的変数yikとして反応率(または補正反応率)pikを用いた重み付け最小2乗による平行線検定法であり、プロビット法による平行線検定法に準じて次のように行います。
(→5.3 計数値の相関分析と回帰分析 (注4))
○標準検体S
※Sの群別用量−反応率直線の傾きつまり回帰係数が0という帰無仮説の下に、反応率p
iSが全て同一と仮定し、その値をp
iSの平均値p
Sで推定してSに共通する重みw
Sを求める。
S
LOFS=S
yyS - S
βS=χ
LOFS2
φ
yS=aS - 1 φ
βS=1
φ
LOFS=φ
yS - φ
βS=aS - 2
a
S=m
yS - b
Sm
xS=p
S - b
Sm
xS
○未知検体U
※Uの群別用量−反応率直線の傾きつまり回帰係数が0という帰無仮説の下に、反応率p
iUが全て同一と仮定し、その値をp
iUの平均値p
Uで推定してUに共通する重みw
Uを求める。
S
LOFU=S
yyU - S
βU=χ
LOFU2
φ
yU=aU - 1 φ
βU=1
φ
LOFU=φ
yU - φ
βU=aU - 2
a
U=m
yU - b
Um
xU=p
U - b
Um
xU
○共通回帰:
φ
βc=1
a
ck=p
k - b
cm
xk (k=S,U)
○ズレ合計:S
LOF=S
LOFS + S
LOFU=χ
LOF2
φ
LOF=φ
LOFS + φ
LOFU=(aS + aU) - 4
○非平行性:S
DISP=(S
βS+S
βU) - S
βc=χ
DISP2
φ
DISP=(φ
βS + φ
βU) - φ
βc=1
○全体:N=N
S + N
U
S
yy=S
yyS + S
yyU
φ
y=φ
yS + φ
yU=(aS + aU) - 2
○効力比:ρ=R=10
M
100(1-α)%信頼区間 下限:ρ
L=10
μL
上限:ρ
U=10
μU
g≒0の時:
○修正切片の差:δ=a
cU - a
cS
φ
ac=1
100(1-α)%信頼区間:
→ 下限:
上限:
※σ
2≒1
ズレ合計が大きい時は
とする時もある
表13.5.11 用量反応率直線による
平行線検定法の分散分析表
要因 | 平方和 | 自由度 | χ2値 |
S:回帰 | SβS | φβS | χβS2 |
S:ズレ | SLOFS | φLOFS | χLOFS2 |
U:回帰 | SβU | φβU | χβU2 |
U:ズレ | SLOFU | φLOFU | χLOFU2 |
|
共通回帰 | Sβc | φβc | χβc2 |
ズレ合計 | SLOF | φLOF | χLOF2 |
非平行性 | SDISP | φDISP | χDISP2 |
全体 | Syy | φy | |
○S:回帰の検定
帰無仮説 H0:Sの用量−反応率直線の傾きが0である(βS=0)
χβS2>χ2(φβS,α)の時、有意水準100α%で有意
○S:ズレの検定
帰無仮説 H0:Sの用量−反応率直線と反応率の変動が一致している
χLOFS2>χ2(φLOFS,α)の時、有意水準100α%で有意
○U:回帰の検定
帰無仮説 H0:Uの用量−反応率直線の傾きが0である(βU=0)
χβU2>χ2(φβU,α)の時、有意水準100α%で有意
○U:ズレの検定
帰無仮説 H0:Uの用量−反応率直線と反応率の変動が一致している
χLOFU2>χ2(φLOFU,α)の時、有意水準100α%で有意
○共通回帰の検定
帰無仮説 H0:平行な用量−反応率直線の傾きが0である(βc=0)
χβc2>χ2(φβc,α)の時、有意水準100α%で有意
○ズレ合計の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−反応率直線と反応率の変動が一致している
χLOF2>χ2(φLOF,α)の時、有意水準100α%で有意
○非平行性の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−反応率直線の傾きが一致している
χDISP2>χ2(φDISP,α)の時、有意水準100α%で有意
○修正切片の差の検定
帰無仮説 H0:SとUの用量−反応率直線の切片が一致している
χac2>χ2(φac,α)の時、有意水準100α%で有意
プロビット法と同様に、実用量を用いた平行線検定法はxとして用量そのものを用いるだけで計算式は変わりません。
そして効力比Rは求めずにMを用量差として用い、Mよりも修正切片の差を効力差の指標にした方が良いこともプロビット法と同様です。