玄関マンガと映画の部屋作品紹介コーナーお気に入りの映画

題名をクリックしても、残念ながら映画は観れません。(^^;)

○「掘る女 縄文人の落とし物」(松本貴子監督、日本、2022年)

縄文遺跡の発掘調査に携わる女性達を3年間にわたって記録した、土臭くてラブリーな傑作ドキュメンタリー映画です。 古墳の発掘調査体験をしたことがあるカミさんと僕は、この映画に登場するチャーミングな女性達にムチャクチャ共感しました!(^O^)/

多くの学問分野と同様に考古学も圧倒的に男性優位の世界です。 しかし発掘調査をする作業員は女性が多く、考古学の専門家である調査員の中には女性も少数ながら存在します。 そして縄文時代のほとんどの土器や土偶は女性が造ったものなので、女性から見て魅力的なのは当然です。

縄文時代は乳幼児の半数ほどが死亡し、妊産婦が死亡するのも珍しくなく、15歳以上の成人の平均余命が15年ほどしかありませんでした。 そのためコミュニティを維持するために、女性は平均余命15年の間に4人以上の子供を命がけで産む必要がありました。 そんな厳しい世界で生きていた縄文女性達は、切実な願いを込めて土偶を造り、懸命に安産祈願をしたと思いますし、それはコミュニティにとっても最大の重要事項だったはずです。

でもユーモラスな土偶や過剰に装飾した土器を見ればわかるように、切実な願いを込めながらも土偶や土器を必要以上に飾り立てる感性は、実用性を度外視してまでスマホを飾り立てる現代の女性にも共通する気がします。 縄文遺跡を発掘する女性達は、そんな縄文女性達の想いと感性を本能的に感じ取っているのではないかと思います。

乳幼児死亡率が1%未満で、妊産婦が死亡するのは極めて稀で、女性が平均余命60年の間に2人以下しか子供を産まない世界で暮らす、出産経験も産婆経験も無い男性の考古学者達が土偶に込めた縄文女性達の切実な想いをよく理解できないのは無理もないでしょう。 そのため彼等が土偶を”謎の遺物”扱いしたり、男性視線の現代受けする説を唱えたりしているのは致し方ない気がします。

本作に登場するような縄文女性達の想いと感性を本能的に感じ取れる女性調査員がもっと増えれば、縄文時代の理解がもっともっと深くなると思います。

○「ヒロシマへの誓い ――サーロー節子とともに――(the VOW from HIROSHIMA)」(スーザン・ストリックラー監督、アメリカ、2019年)

ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)を代表して、自らの被爆体験を語り、核兵器禁止条約(TPNW:Treaty on Prohibition of Nuclear Weapons)を成立させた立役者であるサーロー節子氏の原点を探った良質なドキュメンタリー映画です!(^o^)/

本作のプロデューサーである竹内道氏は広島日赤病院初代院長・竹内釼(けん)先生の孫であり、被爆二世であると同時に、サーロー節子氏が在籍した広島女学院の後輩でもあります。 本作を観て、お嬢様育ちの可愛らしい女性だったサーロー節子氏――怒られるのを覚悟で書きますが、実に可愛くて、夫のサーロー氏が彼女に一目惚れした気持ちがよくわかります(^^;)――が、過酷な体験をすることによって社会問題に目覚め、世界を股にかけた逞しい社会活動家に成長する様子にいたく感服しました。

それと同時にサーロー節子氏と竹内道氏の故郷であり、唯一の被爆国である日本と、サーロー節子氏が在住するカナダと、竹内道氏が在住するアメリカが、いまだに核兵器禁止条約を批准していないことに対してあらためて強い憤りを覚えました。p(~~;)

○「沖縄スパイ戦史」(三上智恵・大矢英代共同監督、日本、2018年)

第2次世界大戦末期、多数の犠牲者を出した沖縄戦の裏側で行われた秘密戦の実体を、長期かつ緻密な取材で明らかにしたドキュメンタリー映画の力作です!(^o^)/

「軍隊は民間人を守らず、民間人を犠牲にして軍隊自体と国家中枢(権力者)を守る」ということは、軍人家系の末裔で、典型的な軍国青年だったオヤジさんから軍隊と戦争の話を聞いて育った僕にとっては、かなり前から周知の事実でした。 本作は緻密な取材によってその事実を明らかにしていますが、僕にとっては、その事実に疎い人が世間には多いということがむしろ意外です。

軍隊というものは、最初はたいてい自衛のために組織され、すぐに権力者によって他国を侵略するために利用され、そのうちに軍隊を存続させるためだけの「戦争のための戦争」を自ら作り出して、際限なく戦争を繰り返すという、まるで癌のようなタチの悪い性質(^^;)を持っています。 破壊と人殺しをするための殺人マシーンとして育てられた軍人という種族は、平和な時には全くの役立たずであり、破壊と殺人以外には自らの存在意義を見出すことができないのです。

それと同様に官僚というものは、最初はたいてい国民のための仕事を行うために組織され、すぐに権力者によって国民を支配するために利用され、そのうちに官僚組織を存続させるためだけの「仕事のための仕事」を自ら作り出して、際限なく無意味な仕事を繰り返すという、まるで寄生虫のようなタチの悪い性質(^^;)を持っています。

そしてそれらを統合する国家というものは、最下層の庶民の犠牲の上に立って、ただ国家という組織それ自体を存続させることのみを唯一の目的とした非人間的な存在という性質を持っています。 この非人間的な性質は、国家という組織に限らず、会社など広く組織というもの一般が持っている本質的な特徴であるような気がします。

この性質ゆえに組織は、往々にして、その構成要素である個人の意思を単純に総合したものとは全く別の意思を持つことがあります。 しかしそういった個人の意思と集団の意思のズレは、他でもない個人の本音と建前のズレ、そして良心と利己心のズレを反映したものであり、人間の持つこうした本質的な矛盾がまた、組織の持つ非人間性や矛盾の源になっているように思われます。

○「百円の恋」(武正晴監督、日本、2014年)

いやぁ〜、とにかく安藤サクラがすごいっっ!!p(*o*)

安藤サクラの非凡な演技力と役に没頭する集中力には定評がありますが、本作の彼女には神々しいほどの凄みがあります。 白石加代子を別格とすれば、彼女は今や日本最高の憑依型女優と言っても良いと思います。

ストーリーとしては、「ロッキー」のエイドリアンが一念発起してボクシングを始め、引退したロッキーを尻目に試合をするといった内容です。 でも本作を観終わった後は、ストーリーなど二の次に思えてしまうほど、安藤サクラに憑依したヒロイン・斉藤一子のファイト姿が強烈に印象に残ります。 僕はボクサー・ICHIKOにすっかり惚れ込み、彼女の次の試合があったら是非とも観戦したいと半ば本気で思ってしまったほどです。

こんなものすごいヒロインを演じ切ることのできる女優は、今の日本映画界には安藤サクラしかいないと思うので、当然、彼女を一子役に想定した、当て書きの脚本だろうと思っていました。 ところが意外なことに脚本が先にあり、それに惚れ込んだ彼女がオーディションを受けて一子役を勝ち取ったとのことでした。

観終わった後で、”やり場のないやる気(^^;)”がムラムラとわき起こって無性に走りたくなる、年の始めに観るにはうってつけの快作です!v(^_-)