玄関マンガと映画の部屋作品紹介コーナーお気に入りの映画

題名をクリックしても、残念ながら映画は観れません。(^^;)

○「ガタカ(GATTACA)」(アンドリュー・ニコル脚本/監督、アメリカ、1997年)

遺伝子工学が高度に発達した近未来を舞台にした、しみじみと心に残るSF映画の秀作です。 古き良き時代のSF映画のような美術デザインと、SFXやCGをほとんど使わず、地味ながら緊張感漂うスタイリッシュな映像は、何となくSF映画の名作「2001年宇宙の旅」を連想させるようなところがあります。

脚本と監督を担当しているアンドリュー・ニコルは、「トゥルーマン・ショー」の脚本で注目され、この作品で初の監督をしました。 アイルランド出身のせいか、ヨーロッパ映画のように静かで淡々とした中に、初監督作品らしい熱意が感じられます。

純粋にSF作品として観ると設定とストーリー展開にやや無理があり、突っ込みどころもけっこうありますが(^^;)、それを補って余りあるニコル監督のセンスと熱意、そしてマイケル・ナイマンの静かで叙情的な音楽がしみじみとした感動を与えてくれます。

SFXを駆使した派手なSF映画に食傷気味な人には、特にお勧めしたい作品です。(^^)v

○「リトル・ダンサー(Billy Elliot)」(スティーブン・ダルドリー監督、イギリス、2000年)

観よう観ようと思っていて、区長の仕事のため今まで観れなかった作品のひとつで、期待にたがわぬ、いや期待以上のデキでした。(^^)v

ありがちな、陳腐と言ってもよいストーリーを現代風にひとひねりしつつ、子供の成長と父親との関係といったイギリスの伝統的なテーマについては、真摯に真正面から堂々と描ききっていて、さわやかな感動を与えてくれます。 何よりも、初監督作品らしい熱気が画面から感じられるところが実にいいです。

”現代風ひとひねり(^^;)”のひとつとして、主人公ビリーの親友が実はオカマで、女装したり、オカマであることをビリーにカミングアウトしたりするんですが、その少年が妙に色っぽくて可愛いんですよ。 残念ながら僕にはそのケはなく、どちらかと言えば「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」のメリンダ・キンナマンのように少女が男装するほうが好みなんですが、そのケのある人にはお勧めかも。(^^;)

それにしても、監督1作目とは思えないダルドリー監督の演出の見事さには持って生まれたセンスを感じます。 この監督はこれから注目したいですね。

○「ジャッカルの日(The Day of the Jackal)」(フレッド・ジンネマン監督、イギリス/フランス、1973年)

フォーサイスの出世作である同名小説を映画化した、スリルとサスペンスあふれる傑作です。 フォーサイスは、以前、ド・ゴール番の記者だったので、ド・ゴール暗殺計画という設定と細かい描写にリアリティがあり、実際の映像を効果的に交えたジンネマン監督のリアルで緊迫感ある演出とあいまって、ド・ゴールは暗殺されないとわかっていてもけっこうハラハラドキドキさせられます。

この作品の成功はジャッカル役のエドワード・フォックスに負うところが大きく、冷徹なプロの殺し屋を抑えた演技で見事に演じきっています。 またジャッカルを追い詰めるルベル警視役のミッシェル・ロンスダールも、コロンボ警部を思わせる味のある演技で好演していて見ごたえがあります。

後に、ハリウッドがこの作品をリメイクして「ジャッカル」(マイケル・ケイトン・ジョーンズ監督、1997年)を作りましたが、はっきり言ってデキの悪いモノマネの見本のような作品でした。(^^;)

○「Mr.レディ Mr.マダム(La Cage aux folles)」(エドゥアール・モリナロ監督、フランス/イタリア、1978年)

パリで大ロングランを記録したジャン・ポワレ作の舞台喜劇を映画化した、フランスらしい粋で洒落たコメディです。 夫婦愛をテーマにしたコメディですが、それがゲイクラブを経営するゲイの中年夫婦であるところが、何とも可笑しくて哀しくて実にいい味を出しています。

残念ながら僕にはそのケはありませんが(^^;)、愛し合っているがゆえの色々な悲喜劇というものは、異性間・同性間にかかわらず古今東西普遍的なものであり、そのケがあろうがなかろうが違和感無くこの作品を楽しむことができると思います。

この作品が評判になったので、例によってハリウッドが真似をしてリメイク版「バードケージ」(マイク・ニコルズ監督、1996年)を作りました。 しかし、こういった粋でエスプリにあふれた作品はやはりハリウッドではダメで、ほとんどオリジナルどおりのリメイクなのに、色々な意味で薄い作品になってしまっています。

○「山の郵便配達(那山 那人 那狗)」(フォ・ジェンチイ監督、中国、1999年)

原題の「那山 那人 那狗」は「あの山、あの人、あの犬」ということで、初老の郵便配達夫がひとり息子にその仕事を引き継ぐために、愛犬を連れ、息子と一緒に山の村々を訪ね歩いて郵便を配達して回るというただそれだけのストーリーを、美しい自然を背景にして淡々と、そして詩情豊かに描いています。 ゆったりとした時間の流れ、美しく悠久の自然、純朴で人懐っこい人々、暖かい心のふれあい、思いやりと信頼、家族の絆……何となく、忘れかけていたものを思い出させてくれるような、しみじみと心に残るいい作品です。

父親役のトン・ルゥジュンは「紅いコーリャン」で”羅漢おじさん”役をやっていたベテラン俳優で、控えめながら存在感のある渋い演技で実にいい味を出しています。 この人は、「大地の子」や「變臉〜この櫂に手をそえて」でおなじみの名優ヂュー・シュイ(朱旭)と並んで、お気に入りの中国俳優になりました。

今、アジア映画、特に中国映画が世界から注目されていますが、この作品や「紅いコーリャン」などを観ますと、それも当然のような気がします。

○「紅いコーリャン(紅高梁)」(チャン・イーモウ監督、中国、1987年)

今や中国を代表する映画監督チャン・イーモウのデビュー作かつ出世作です。 この作品は、ベルリン国際映画祭金熊賞(グランプリ)を受賞して中国映画の水準の高さを世界に知らしめた名作で、中国映画の「羅生門」と言われています。 カメラマン出身だけにイーモウ監督は映像感覚に優れていて、第二次大戦前後の中国の素朴な村の風俗と日本軍の残虐な蛮行を、美しく迫力ある映像で描いています。

チャン・イーモウ監督の作品は、実は後年の「初恋のきた道」の方を先に見て、その詩情あふれる映像美と、昔の日本映画のような素朴な暖かさに惹かれたのですが、この作品の迫力ある映像美と熱気には圧倒されてしまいました。 このほとばしるような熱気は、やはりデビュー作ならではのものでしょう。

この映画で、美しく可憐で、同時に激しく逞しいヒロインを演じたコン・リーは世界的な女優になりました。 「初恋のきた道」のヒロイン役チャン・ツィイーは「第2のコン・リー」と言われているそうですが、確かにイメージがよく似ていて、イーモウ監督の女性の好みがわかる気がします。

○「ニュー・シネマ・パラダイス(Nuovo cinema Paradiso)」(ジュゼッペ・トルナトーレ監督、イタリア・フランス、1988年)

映画好きの少年と映写技師との交流を通して、映画と時代の変貌を映画への限りない愛を込めて描いたノスタルジックで心温まる秀作です。 トルナトーレ監督のデビュー作であり、彼の映画へのオマージュとも言えるこの作品は、単独映画館公開のロングラン記録を作るほどヒットし、カンヌ映画祭審査員特別賞とアカデミー外国映画賞を受賞しましたのでご存知の方も多いと思います。

ハリウッド映画のような派手さはありませんが、職人気質の映画技師を人間味溢れる演技で渋く演じるフィリップ・ノワレと、映画好きの少年を素直に好演するサルバトーレ・カシオ少年がいい味を出していますし、淡々とした描写の中にトルナトーレ監督の映画に対する深い愛情が感じられ、しみじみと心に残ります。 中でもラストの印象的なラッシュシーンは、僕のような古い映画ファンにとっては涙が出るほどたまらないもので、観終わった後もほんわかとした暖かい余韻に酔いしれてしまいます。

古き良き映画のファンには是非お薦めしたい作品です。

○「マイライフ・アズ・ア・ドッグ(Mitt liv som hund)」(ラッセ・ハルストレム監督、スウェーデン、1985年)

1950年代末のスウェーデンの田舎を舞台として、思春期を迎えたばかりの少年が周囲の人達との触れ合いを通して成長する姿を、50年代末の風俗と共に描いた愛すべき好編です。

ご存知のように、「犬のような生活(dog's life)」といえば英語で「惨めな生活」という意味です。 この作品の邦題もそれを踏まえていて、母の病気のために田舎に預けられた主人公の少年が自分の境遇を惨めに思うことに由来しています。 でも、心が洗われるような美しい自然と、ちょっと変わってはいるものの心優しい人達に囲まれてのんびりと暮らす彼の生活は、会社の仕事と地元の行事に追いまくられている僕から見ますと、犬のように惨めな生活というよりも猫のように羨ましい生活といいたいくらいです。

などというボヤキはさて置き(^^;)、ヨーロッパ映画の例に漏れずこの作品も子役の使い方が巧みで、しかも子供らしくて愛らしい子役が多いので嬉しくなります。 特に、男の子になりたかったボーイッシュな少女サガ役のメリンダ・キンナマンは、やたらと僕好みで可愛らしく、今、一番のお気に入りです。 この娘を見たいがために、ビデオに録画した後、続けざまに2回も繰り返して観てしまいました。(^^;)v

○「冒険者たち(Les Aventuriers)」(ロベール・アンリコ監督、フランス、1967年)

アンリコ監督の名を一躍有名にした、甘酸っぱくてほろ苦く、そして哀しくて切ない青春アクション映画の傑作です。 夢を追い求める2人の男の友情、マドンナ的女性レティシアとの微妙な三角関係、そして冒険、ロマン、アクションと色々な要素が詰まった作品ですが、見終わった後にいつまでも余韻として残るのは、レティシアの少年のように澄んだ瞳と無邪気な笑顔、美しい海にぽっかりと浮かぶ不思議な城砦の島、そしてフランソワ・ド・ルーベの甘く切ないテーマ曲です。

レティシアを演じるジョアンナ・シムスカはあまり好みのタイプではありませんが、この作品の彼女は新鮮な魅力に溢れていて、リノ・バンチェラ、アラン・ドロンといった大スターの影を薄くしてしまうほどキラキラと輝いています。 また口笛をフューチャーしたド・ルーベの甘く切ないテーマ曲は、この作品のムードを決定的にしてしまうほど印象的で、いつまでも耳に残ります。

ド・ルーベの音楽はアンリコ監督の作風と実にマッチしていて、ジョアンナ・シムスカを再び起用して多感な年頃の少女の揺れ動く心理を描いた「若草の萌えるころ」や、リノ・バンチェラとブリジット・バルドーという2大スターの競演で、映画女優に憧れる男の恋と冒険を描いた「ラムの大通り」でも見事な効果を上げています。

この作品を観たのは随分昔のことですが、今でもド・ルーベのテーマ曲を口笛で吹くたびに、レティシアの澄んだ瞳と無邪気な笑顔が瞼に浮かんで胸がキュンとします。

○「スニーカーズ(Sneakers)」(フィル・アルデン・ロビンソン監督、アメリカ、1992年)

ビルに仕掛けられたセキュリティ・システムをチェックするハイテク集団スニーカーズの活躍を描いた、スリルとサスペンスとユーモアあふれるハイテク娯楽映画です。 それぞれ違った特技を持つスペシャリスト達がチームを組み、力を合わせて目的を達成するという話は、昔からひとつのジャンルのようなものになっていて、例えば映画「黄金の七人」シリーズや、懐かしの傑作テレビドラマシリーズ「スパイ大作戦」等々、例を挙げれば枚挙にいとまがありません。 この作品もその流れをくむもので、このコンピュータ時代に出るべくして出たスペシャリスト集団映画と言えるでしょう。

登場するスペシャリスト達は元天才ハッカーのリーダーを中心に、若き天才ハッカー、元CIAの盗聴プロ、陰謀オタクの不法侵入マニア、全盲で暗号解読の天才と、さすがに個性に溢れていて、彼等や敵役を演じる俳優達もロバート・レッドフォード、リバー・フェニックス、シドニー・ポアチエ、ダン・エイクロイド、そしてベン・キングスレーと、やはり一癖あるメンバーが揃っています。

興味深いのは、これら個性的な登場人物の中の何人かは実在のコンピュータ界の有名人をモデルにしているらしいことと、セキュリティ・システムのチェックを商売にしているハイテク集団が実在し、それがスニーカーズのモデルになっているということです。 このあたり、何となく往年のTVドラマ「ザ・ガードマン」を連想させます。