玄関マンガと映画の部屋作品紹介コーナー思い出の虫干し

○平成元年以後(1989年以降)

…そして平成元年(1989年)2月9日、敬愛してやまない手塚治虫先生が、束の間の地上体験を終えて帰天されました。 それによって、少なくとも僕の心の中ではひとつの時代が確実に終わりを告げたのです。

手塚治虫という希有な存在と同じ時代・同じ国に生まれ、その作品をリアルタイムに楽しむことができたのは、まさに僥倖と言うほかありません。 彼によって創り出された新しいマンガが、彼に影響された幾多の才能によって大きく育っていき、やがてひとつの文化として花開くまで、その真っただ中にいて──残念ながら、送り手として参加することはできなかったものの──成長を共にすることができたのは本当に得難い体験でした。

このマンガという新しい文化をいつまでも楽しみながら見守り、でき得ることなら、ずっと未来でもう一度手塚先生と同じ時代・同じ国に生まれ変わり、描き忘れていかれた多くの作品をリアルタイムに楽しみたいと念じています。


今回は、とりあえず昭和30年(1955年)から平成元年(1989年)までの作品を中心に虫干ししました。 それ以後の作品や、色々な都合で紹介できなかった作品を作者と題名だけ挙げておきますと……

手塚治虫の全作品、永島慎二の全作品、星野之宣のほぼ全作品、バロン吉元「どん亀野郎」、村野守美「草笛の頃」、つげ義春「ほんやら洞のべんさん」、佐々木マキ「うみべのまち」、水木しげる「テレビくん」「河童の三平」、永井豪「バイオレンスジャック」、小池一夫原作・神江里見絵「ヒモ」、赤瀬川原平「櫻画報大全」、岡田史子「ガラス玉」、青柳裕介「いきぬき」、楠勝平「おせん」、 岡崎京子「ROCK」「リバーズ・エッジ」「ヘルタースケルター」、猫十字社「県立御陀仏高校」、坂田靖子「エレファントマン・ライフ」、池田さとみ「B/W(ブラックアンドホワイト)」、高橋留美子「人魚の森」「人魚の傷」、高口里純「花のあすか組」、さべあのま「ミス・ブロディの青春」、細川知栄子「王家の紋章」、立原あゆみ「潮騒がきこえる」、岡野玲子「ファンシーダンス」、 けらえいこ「セキララ結婚生活」「たたかうお嫁さま」、青木光恵「えっちもの」「女の子がすき!」、みつはしちかこ「ハーイ、あっこです!」、内田春菊「南くんの恋人」、赤星たみこ「花束」、やまだ紫「しんきらり」、近藤ようこ「見晴らしガ丘にて」、杉浦日向子「ゑひもせす」、佐々木倫子「動物のお医者さん」、岸香里「天使のたまご」、 車田正美「リングにかけろ」、谷口ジロー「犬を飼う」、藤島康介「ああっ女神さまっ」、寺島優原作・藤原カムイ絵「雷火」、田島昭宇「魍魎戦記・摩陀羅」、藤田和日郎「うしおととら」、高田裕三「3×3EYES」、前田俊夫「うろつき童子」、奥浩哉「変『HEN』」、富樫良博「幽★遊★白★書」、井上雄彦「SLAM DUNK」、かわぐちかいじ「沈黙の艦隊」、岩明均「寄生獣」、上條淳士「TO-Y」、一色伸幸原作・山本直樹絵「僕等はみんな生きている」、村上もとか「龍(ロン)」、一丸「おかみさん」、 古谷実「行け!稲中卓球部」、唐沢なをき「カスミ伝」「カスミ伝S」、青木雄二「ナニワ金融道」、金成陽三郎原作・さとうふみや絵「金田一少年の事件簿」、士郎正宗「攻殻機動隊」、あさりよしとお「宇宙家族カールビンソン」、望月峯太郎「バタアシ金魚」「ドラゴンヘッド」、松本大洋「ZERO」「花男」「鉄コン筋クリート」「ピンポン」、その他これから描かれる多くの作品。

最後に、だらだらとしたオジサンの思い出話に根気良く付き合っていただいた方々と、今まで出会った数多くの素晴らしい作品に心から感謝したいと思います。 どうもありがとうございました。

5回目の手塚治虫忌にちなんで  1994年2月9日 杉本典夫