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8.韓国の解析結果

日本の次に中国と韓国のCOVID-19のデータを解析してみました。 これら2国は流行がほぼ終息しているので、簡易モデルを当てはめるのに都合が良いからです。 中国についてはすでに色々な研究者が解析結果を公表しているので省略して、韓国の解析結果について説明しましょう。

現在までのところ、韓国には主に2つの流行があるようです。 1つ目は2020年1月20日に始まり、約60日後の3月下旬に収束しかかっていた流行です。 3月下旬までのデータを用いてこの流行に簡易モデルを当てはめたところ、始まってから約80日後の4月上旬に累積感染者数約1.7人/1万人(実数にして8,400人)に収束すると予想されました。

ところが3月下旬に新しい小規模な流行が始まり、それが現在は収束しつつあります。 簡易モデルをマルチタイプ型流行モデルに拡張して、4月20日までのデータを用いて解析したところ、2つ目の流行は始まってから約25日後の4月下旬に累積感染者数約0.4人/1万人(実数にして約2,300人)で収束すると予想されました。 そして2つの流行を合わせて、4月下旬に累積感染者数約2.1人/1万人(実数にして約10,700人)にほぼ収束すると予想されました。

2つ目の流行は、1つ目の流行がほぼ終息して緊張状態が緩んだことと、外国からの帰国者が多数いて、その中に感染者がいたことが原因ではないかと考えられているようです。 薬剤で言えばリバウンドに相当するほぼ終息後のこの小規模な流行は、今後、どこの国でも発生する可能性が高いと思います。

韓国はSARSや新型インフルエンザの感染予防の経験に基づいて、以前から遺伝子検査体制を整備していました。 そのためCOVID-19の場合も欧米と同じようなローラー作戦を取りました。 そして幸か不幸か中国との間に北朝鮮という緩衝地帯があるので、半島でありながら島国のような環境です。 そのため空港と港での検疫を徹底すれば、国境封鎖と同じような感染予防効果があります。 そしてそれと同時に、少しでも感染の疑いのある人がいれば迅速に検査して、偽陽性の人が多少含まれていようと仔細かまわず隔離措置を行ったようです。

その作戦が成功し、人口密度が高いにもかかわらず流行が広がるスピードを緩めて、ほぼ収束時の累積感染者数を約2.1人/1万人(実数にして約10,700人)に抑えています。