玄関雑学の部屋雑学コーナー統計学入門

(3) 静注1コンパートメント持続注入モデル(点滴静注1コンパートメントモデル)

用量q0をtif時間の間に一定速度で持続静注し、血液区画に分布して、徐々に体外に排出されるモデル。 (注1)

表14.3.2 持続静注後の血中濃度データ(tif=0.5)
時間(hr)00.1670.50.667 0.83311.523
血中濃度 00.5171.1750.6580.47 0.3990.3070.2890.213
図14.3.5 静注1コンパートメント持続注入モデルの模式図 図14.3.6 静注1コンパートメント持続注入モデルの血中濃度関数
○t ≦ tifの時

○t > tifの時(T = t-tif)
C(t) = C(tif) exp(-αT) = A{exp(-αT) - exp(-αt)}
q0 = 100     
ke = 1.7297     AUC(∞) = A・tif = 0.910459
  tmax = tif = 0.5   Cmax = C(tif) = C(0.5) = 1.0541   ClT = ke Vd = 109.835

tif→∞で定常状態になった時の血中濃度をCSSとすると、これはt≦tifの時の血中濃度関数を利用して次のようになります。

CSS = C(∞) = A{1 - exp(-α・∞)} = A

参考までに、ほぼ定常状態になるまでの時間t*を求めてみましょう。 ほぼ定常状態の時の血中濃度C(t*)とCSSの相対誤差をεとすると、次のようにt*はεとkeだけに依存します。

CSS - C(t*) = A - A{1 - exp(-αt*)} = A exp(-αt*) = A ε
∴-ke t* = ln(ε)   
○ε = 0.01つまりC(t*)がCSSの99%の時をほぼ定常状態とした時
… 半減期の約7倍弱
○ε = 0.05つまりC(t*)がCSSの95%の時をほぼ定常状態とした時
… 半減期の約4倍強

(注1) 静注1コンパートメント持続注入モデルの微分方程式は次のようになります。

○t ≦ tifの時

○t > tifの時

表14.3.2のデータの0.5〜3時間の血中濃度を対数変換し、T=t-0.5として直線回帰によってパラメーターAとαを求めると次のようになります。

ln{C(t)} = ln{C(tif)} - αT
C(tif) = 0.5248182 = A{1 - exp(-αt)} → A = 2.16661  α = 0.554751

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、20回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:A = 1.82092  α = 1.7297
標準誤差:A = 0.248396  α = 0.432883