玄関雑学の部屋雑学コーナー統計学入門

(5) 内服1コンパートメントモデル(経口投与1コンパートメントモデル)

用量q0を吸収部位に投与し、瞬時に溶けて徐々に血液区画に分布して、徐々に体外に排出されるモデル。 (注1)

表14.3.3 内服後の血中濃度データ(溶解時間補正後)
時間(hr)0.070.320.570.721.071.572.072.573.574.575.57
血中濃度 8.792021.31710.76.463.722.471.170.640.41
図14.2.1 内服1コンパートメントモデルの模式図
図14.2.2 内服1コンパートメントモデル関数(実数単位) 図14.2.3 内服1コンパートメントモデル関数(対数単位)
Cc(t) = A{exp(-αt) - exp(-βt)} = A exp(-αt) - A exp(-βt) (α > β)
q0 = 100  f = 1(100%)と仮定する
○ka > keの時
  α = ka = 4.51507   β = ke = 1.26678   
○ka < keの時
  α = ke = 4.51507   β = ka=1.26678   
  ClT = keVc = 3.67932
  

溶解時間t0が無視できない時は内服1コンパートメントラグタイムモデルになります。 このモデルは時間をT=t-t0とした内服1コンパートメントモデルになります。 表14.3.3は、実は溶解時間t0を0.43時間として、実際の内服時間からt0を引いた時間を内服時間にした溶解時間補正後の表です。 実際の内服時間とその時の血中濃度は表14.3.4のようになります。 内服薬は溶解時間が無視できないものが多いので、たいていはラグタイムモデルの方がうまく当てはまります(注2)

表14.3.4 内服後の血中濃度データ
時間(hr)0.50.7511.151.522.53456
血中濃度 8.792021.31710.76.463.722.471.170.640.41
図14.3.9 内服1コンパートメントラグタイムモデルの血中濃度関数
C(T) = A{exp(-βT) - exp(-αT)} (T = t-t0、α > β)
q0 = 100  f = 1(100%)と仮定する
○ka > keの時
  α = ka = 4.73036   β = ke = 1.24946   
○ka < keの時
  α = ke = 4.73036   β = ka = 1.24946   
t0 = 0.434433     
  ClT = ke Vc = 3.67453

(注1) 内服1コンパートメントモデルの微分方程式は次のようになります。 ラグタイムモデルの場合はtをT=t-t0で置き換えるだけです。

… (1)
… (2)

表14.3.3の血中濃度を対数変換して0.57〜5.57時間をβ相と考え、皮むき法によってパラメーターA、α、βを求めると次のようになります。

A = 29.0514  α = 11.9501  β = 0.796733

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、70回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。

推定値:A = 47.8567  α = 4.51507  β = 1.26678
標準誤差:A = 8.7045  α = 0.691313  β = 0.147046

(注2) 表14.3.4のデータにラグタイムモデルを当てはめる時は、t0として適当な値を指定し、表14.3.3と同じように皮むき法によってA、α、βを求めることができます。 しかしここでは表14.3.3の結果を参考にして、次のような初期値を指定してみます。

初期値:t0 = 0.4  A = 50  α = 5  β = 1

これらの値を初期値としてガウス・ニュートン法でパラメーターを求めると、80回以上の反復計算の結果、次のような値に収束します。 表14.3.3の結果がt0を0.43時間に固定した時のものであるのに対して、この結果はt0もパラメーターにした時のものなのでパラメーターの値がわずかに異なっています。

推定値:t0 = 0.434433  A = 46.2086  α = 4.73036  β = 1.24946
標準誤差:t0 = 0.015266  A = 10.9626  α = 1.20898  β = 0.172692