空間を歪ませることによって遠く離れた2つの地点を隣接させ、瞬時に膨大な距離を飛び越える超光速宇宙航法のことで、簡単に言えば宇宙船のテレポーテイション(瞬間移動)です。 光速度を超える運動はできないということと、宇宙は何万光年もの広さがあるということが常識となってしまった現在、恒星世界を舞台にしたSF(特にスペースオペラの類)では必要不可欠になった技術のひとつで、宇宙戦艦ヤマトもエンタープライズ号もこのワープ航法を行うことができます。
ワープ航法の原理としては、空間を歪ませる以外にも、ハイパースペース(超空間または亜空間)やワームホール(時空の虫食い穴)を利用するものがあります。 ハイパースペースを利用したワープ航法は、例えばポール・プロイスの「天国の門」と「地獄の門」(ともに早川書房)に登場します。 この作品では、二重ブラックホールによってできたハイパースペースを利用してワープを行います。 ワームホールを利用したワープ航法は、例えばジョー・ホールドマンの「終りなき戦い」(早川書房)に登場します。 作品中ではブラックホールのようなコラプサーというものを利用するため、「コラプサー・ジャンプ」という名前で呼ばれます。
空間の歪曲もワームホールも、アインシュタインの一般相対論から理論的に導かれたものですが、残念ながら実際にはワープ航法に利用することは不可能のようです。 遠く離れた2つの地点を隣接させるほど空間を歪ませるには、膨大な質量が必要になります。 それほどの質量を小さな宇宙船によって作り出すことはまず不可能ですし、よしんばできたとしても、そんなものが近くにあれば、恐ろしく強大な潮汐力によって宇宙船はバラバラの原子にまで分解されてしまうでしょう。
ワームホールは時空多様体が多重連結である場合、つまり時空の2点を結ぶ世界線がスムーズに1本にできない構造になっている場合に発生する、時空のトンネルのようなものです。 最も簡単なワームホールは「アインシュタイン・ローゼン橋」と呼ばれるもので、一方の端がブラックホール、他方の端がホワイトホールのような構造をしています。 このワームホールは時空多様体の創造時、すなわち宇宙ができる時にしか作り出すことができず、しかも内部は強烈な潮汐力に満ちているため、もしあったとしても、ワープに利用することはできないでしょう。 まあ、宇宙規模でのゴミ捨て場としてなら利用できるかもしれません。
また重力の量子論的な効果が重要になってくる、プランク長(1.61×10のマイナス35乗メートル)程度の時空構造の研究から、ホイーラーはアインシュタイン・ローゼン橋とは別のワームホールを理論的に予想しました。 ホイーラーという人は、難解な科学現象に一般受けする名前を付ける名人として定評があります。 ブラックホール、ホワイトホール、そしてワームホールなどは以前から理論的に予測されていて、一部の科学者には知られていましたが、この人の実に直観的な命名によって広く一般人にまで知られるようになりました。
ホイーラーのワームホールは非常に小さくて(直径が10のマイナス35乗メートル程度)不安定な上、ワームホール内部での時間の遅れのため、ワームホールを通り抜けるのに必要な時間が、外部の正常な宇宙空間を移動するのに必要な時間と同じか、それ以上になることがわかっています。 これでは、とてもワープに利用できそうもありません。 ちなみに、プランク長サイズのワームホールは別の宇宙とつながっている可能性もあり、そのようなワームホールのことを「ベビーユニバース」と呼ぶこともあります。 ベビーユニバースについては、宇宙全体がプランク長程度だった時の問題とからめて、最近、ホーキング博士が盛んに論じています。
ワームホールは理論的にはあっても不思議ではない存在ですが、重力レンズ効果などと違って、その存在はまだ確認されていません。 なお、ワープについては「SFはどこまで実現するか」(ロバート・L・フォワード著、講談社ブルーバックス)に詳しい解説がありますから、興味のある人は読んでみてください。
天体が自分の重力によって潰れ、限りなく収縮する現象です。 重力崩壊の結果できるのがブラックホールで、崩壊中に多量の重力波を放出します。 恒星は水素を燃料とした核融合反応によって燃えていますが、燃料が無くなるにしたがって、重力により収縮します。 その場合、星の質量によって最終的な形態は異なります。
まず星の質量が太陽の4倍以下の場合は、量子論的な効果である「縮退圧力」と重力がつりあうところまで収縮して白色矮星となり、やがて輝きを失って高密度の暗い星になります。 電子や陽子のようなフェルミオン(スピンが半整数の粒子)は、同じ状態に重なって存在することはできず、密度が上がると激しく運動します。 これが縮退圧力です。 縮退圧力を越えて密度を上げますと、電子が陽子に吸収されて中性子になるなどの反応が起こり、通常の物質とは異なった縮退物質となります。 白色矮星の一部も縮退物質でできていて、角砂糖1粒ぐらいの大きさで1トン以上もの質量があります。
星の質量が太陽の4倍から8倍までの場合は、縮退圧力を越えて収縮します。 すると新たな核融合反応が起こり、大爆発を起こして全てが吹き飛んでしまいます。これが超新星爆発です。
星の質量が太陽の8倍から30倍の場合は、星の中心部に中性子のコアができます。 このコアは原子核と同じような状態であり、核力によってそれ以上収縮しない非常に固い物質ですから、「ハードコア」と呼ばれています。 重力によって収縮してきた物質は、このハードコアにぶつかって跳ね返されます。 この時、跳ね返りの衝撃波によって超新星爆発を起こし、後にハードコアだけが残ります。 こうして残ったハードコアが中性子星です。 中性子星は極度に圧縮された物質ですから、角砂糖1粒ぐらいの大きさで1ギガトン(1000000t)以上もの質量があります。
星の質量が太陽の30倍以上の場合は核力ですら重力を支えきれず、重力崩壊を起こして無限に収縮します。 そして星の半径がシュバルツシルド半径よりも小さくなったところで、ブラックホールとなります。
この重力崩壊をネタにしたSFアニメとして、庵野秀明監督のOVA「トップをねらえ!」(全6話)があります。 この遊び心いっぱいのハチャメチャアニメは、荒唐無稽な科学考証と、典型的なご都合主義的ストーリー展開にもかかわらず、やたらとパワフルで、観る者を引きずり込むようなムンムンとした熱気に満ちています。 タイトルからしてスポ根テニスマンガ「エースをねらえ!」のパロディであることからもわかりますように、ドジで泣き虫のヒロインと憧れのお姉様、それにお定まりのニヒルな鬼コーチを中心として、スポ根アニメ、学園少女アニメ、巨大変身ロボットアニメ、宇宙戦艦アニメなどを次々とパロディしまくり、随所にスタッフの楽屋オチ的お遊びが溢れているくせに、妙にシリアスで不思議に感動的です。
また美樹本晴彦のキャラクターデザインによる美少女達も可愛く、適度なチラリズムのサービスもあり、話と話の間に挿入される、”努力と根性”のハチャメチャ『お勉強コーナー』もけっこう楽しめ、さすがは”オタキング”岡田斗司夫のGAINAXが制作しただけのことはある、ユニークな傑作です。 興味のある人は、ぜひ一度ご覧ください。
「地球外知的生命の探索」のことで、天文学、地学、物理学、生物学、化学など、自然科学のほとんど全ての領域を含んだ学際的な科学です。 SETIの最初の試みは、1960年に開始された有名な「オズマ計画」です。 オズマ計画はアメリカ国立電波天文台(NRAO)のフランク・ドレークが中心となって行ったもので、地球外知的生命からの通信を電波望遠鏡によって組織的に探索しようとするものでした。
この計画では地球に比較的近く、太陽に似た2つの恒星、エリダヌス座ε星とクジラ座τ星に電波望遠鏡を向け、中性水素原子の出す21cmの波長(宇宙で一番普遍的だと思われる周波数、マジック周波数と呼ばれます)の電波を探索しました。 この計画のことは、当時小学生だった僕もマンガ雑誌の記事で読んで知っていて(^.^;)、胸をワクワクさせたことを覚えています。
残念ながら、オズマ計画は具体的な成果を出せずに終わりましたが、その後も、派手ではないもののSETIの試みは絶え間なく続けられています。 また宇宙人からの信号を探索するだけでなく、人類の側から宇宙人にメッセージを送る試みもなされています。 1972年に打ち上げられたパイオニア10号と、翌1973年のパイオニア11号に宇宙人へのメッセージを刻んだ銘板が搭載され、1977年のボイジャー探査機に地球の音や映像を納めたレコード盤が搭載されたのは有名ですし、1974年にはプエルト・リコのアレシボ電波望遠鏡から、2進数にコード化された「アレシボ・メッセージ」が送信されています。
SETIには莫大な費用がかかる上、何となく雲をつかむような話で、実用的ではないためこれを専門とする科学者はあまり多くありませんし、日本には皆無と言ってもいいくらいです。 しかし、これほど好奇心を刺激するテーマはめったにありません。 我々はどこから来たのか、そしてどこへ行くのか、さらに我々は何者か、何をなすべきなのかといった、人類の過去・未来・現在のあり方に関わる、極めて根元的なテーマと言ってよいでしょう。
それでは、宇宙人が存在する確率はどの程度あるのでしょうか? 銀河系の中に人類と交信可能な宇宙人がどれくらい存在しているかを見積もるものとして、有名な「ドレークの式」があります。 この式は、1960年にグリーンバンク天文台で行われた「地球外知的生命に関するグリーンバンク会議」で、ドレークによって提唱されたものです。
このように式そのものは単純ですが、各因子の値を正確に見積もることは難しく、この式の評価は非常に困難です。 例えばR=10、fp=0.5〜1、ne=1、fl=1、fi=1、fc=1、L=1〜1千万としますと、N=5個〜1億個となり非常に大きな幅があります。 しかしまあ実用的な面はさておき、各因子に色々な値を代入し、宇宙人についてあれこれ夢想するにはなかなか面白い式だと思います。
SFの分野では、ウェルズの「宇宙戦争」以来、宇宙人との接触は古典的なテーマの1つで、SETIが関係する作品もたくさんあります。 SF映画ではキューブリックの名作「2001年宇宙の旅」や、スピルバーグの意欲作「未知との遭遇」あたりがメジャーでしょう。 SF小説では、SETIを行っていた電波望遠鏡が恒星タウ・ケチから女性のすすり泣くような声の信号を捕らえるという、非常に印象的なプロローグで始まる、ポール・プロイスの「天国の門」(早川書房)、自らもSETIを専門とする科学者で、アレシボ・メッセージに重要な貢献をしたカール・セーガンの処女作、「コンタクト」(新潮文庫)などが有名です。
「コンタクト」は科学者セーガンが書いただけあって、物語的な面では少々物足りないものの、科学的な面ではしっかりとした考察がなされています。 ただ僕が一番印象に残ったのは、日本に招かれた科学者達が日本料理を食べるシーンでした。(^^;)