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○トンデモ話検出キット

惑星科学者であるカール・セーガン博士が自著「人はなぜエセ科学に騙されるのか」の中で説明しているチェックリストです。 このキットを使いますとトンデモ話をある程度検出することができ、トンデモ話に騙されず、かえってそれを楽しむことができます。

  1. 裏付けを取れ。

    「事実」が出されたら、独立な裏付けをできるだけ沢山取るようにしよう。

  2. 議論のマナ板に乗せろ。

    証拠が出されたら、様々な観点を持つ人達にしっかりした根拠のある議論をしてもらおう。

  3. 権威主義に陥るな。

    権威の言うことだからといって当てにしないこと。 権威はこれまでも間違いを犯してきたし、今後も犯すかもしれない。 科学に権威はいない、せいぜい専門家がいるだけだ。

  4. 仮説は複数立てろ。

    仮説はひとつだけでなくいくつも立てること。 まだ説明のつかないことがあるなら、それが説明できそうな仮説をありったけ考え出そう。 次にこうやって得られた仮説を片っ端から反証していく方法を考えよう。 そうしてふるいにかけられてなお残った仮説は、単なる思い付きの仮説に比べて正しい答えを与えてくれる見込みがずっと高いはずだ。

  5. 身びいきをするな。

    自分が出した仮説だからといって、あまり執着しないこと。 仮説を出すことは知識を手に入れるための一里塚にすぎない。 なぜそのアイデアが好きなのかを自問し、他のアイデアと公平に比較して、そのアイデアを捨てるべき理由がないか探してみよう。

  6. 定量化しろ。

    尺度があって数値を出すことができれば、いくつもの仮説の中からひとつを選び出すことができる。 曖昧で定性的なものには色々な説明が付けられがちだ。

  7. 弱点をたたき出せ。

    論証が鎖のようにつながっていたら、鎖の輪のひとつひとつがきちんと機能しているかどうかをチェックすること。

  8. オッカムのかみそり。

    データを同じくらいうまく説明する仮説が2つあるなら、より単純な仮説を選べ。

  9. 反証可能性。

    仮説が出されたら、少なくとも原理的には反証可能かどうかを問うこと。仮説は原理的に検証できるものでなければならない。 例えば「我々の宇宙とその内部の一切は、もっと大きな宇宙の中の1個の素粒子にすぎない」という仮説は、この宇宙の外からの情報が得られなければ(そしてそんな情報が得られたとしたら、その瞬間にそれは我々の宇宙の一部ということになる)反証も検証もできない。 こういった仮説には大した価値はない。

○トンデモ話でっち上げキット

トンデモ話検出キットを逆に利用すると、「トンデモ話でっち上げキット」ができます。 これは電波系の人や似非科学者や詐欺師や政治家がよく利用するキットで、僕もたまに利用するので(^^;)、一部修正して紹介しましょう。

  1. 対人論証…議論の内容ではなく論争相手を攻撃すること
    例:ダレソレ氏は{女|子供|黒人|ユダヤ人|韓国人|北朝鮮人|中国人|イラン人|外国人|イスラム教徒|原理主義者等々}だから、氏がナニナニについてどう言おうとまともに取り合う必要はない。 (あるいはナニナニを理解できるはずがない)
  2. 権威主義…議論の内容ではなく権威を振りかざして論争すること
    例:ダレソレ氏はナニナニの権威だから、氏の言うことに間違いはない。
    例:ナニナニの権威であるダレソレ氏によると…… (マスコミが好んで使う手法)
    例:ノーベル賞を受賞した科学者が推薦する健康食品! (詐欺師が好んで使う手法)
    例:テロの首謀者はビンラディンだという決定的な証拠をアメリカ政府は持っている。 しかしその証拠は極秘ルートで入手したので公開することはできない。 (これは次の御神託式論証にも関係する)
  3. 御神託式論証または論点回避…そうじゃないと具合が悪い式の論証、または答えが始めから決まっている議論
    例:神は確かに存在して、罪と報いを我々に割り振っておられる。 さもなければ社会は今よりももっと無法で危険なものになり、無政府状態にさえなっていたかもしれない。
    例:{教育改革|不良債権処理|特殊法人処理}なくして構造改革なし。
    例:凶悪な犯罪を抑制するために死刑制度を存続すべきである。 (しかし、死刑制度の導入と凶悪犯罪の発生率低下の因果関係は証明されていない)
  4. 無知に訴える…虚偽と証明されないものは真実だ、または真実と証明されないものは虚偽だという主張
    例:{UFOが地球に飛来している|ネッシーがいる}という確固たる証拠はないが、{UFOが地球に飛来していない|ネッシーがいない}という証拠もない。 したがって{UFO|ネッシー}は存在する。
    例:科学者は超能力は存在しないと主張しているが、それを証明できないでいる。 したがって超能力は存在する。 (ある事項が存在するという証明は比較的容易だが、存在しないという証明は非常に難しい)
    例:ナスカの地上絵を宇宙人が描いたのでないとすれば、一体、誰が描いたというのだ? (現在では描いた人達も描き方も解明されているが、欧米人は自分達の文明が一番進んでいると思い込んでいるので、少し以前は(今でも?(^^;))、欧米人世界以外の世界で発見された古代遺跡は神か宇宙人が造ったものだとしか考えられなかった)
    例:{宇宙|地球}には無数の{世界|国}があるかもしれないが、{地球|我が国}よりも文明が進んでいる{世界|国}はひとつも知られていない。 したがって、我々はやはり{宇宙|世界}の中心である。
  5. 手前勝手な議論…苦し紛れの議論
    例:問「ひとりの女が命令に背いて、リンゴを食べるようひとりの男をそそのかしたくらいのことで、慈悲深い神が後世の人々を苦しめるようなことをなさるだろうか?」
    答「あなたは自由意思という難解な教義を理解していない」 (この種の反論は権威主義と組み合わせて使われることが多い)
    例:旧ソ連で平均寿命が短くなったのは共産主義の失敗のせいである。 一方、アメリカの乳児死亡率は先進諸国の中で一番高いが、これには複雑な要因があり、決して資本主義の失敗のせいではない。
    例:相対性理論や量子力学は難解すぎて理解できない。 自然はもっと単純明快なはずだから、これらの理論は間違っているに違いない。
    例:日本が生んだ天才音楽家! (本当は、たまたま日本に生まれた天才音楽家!(^^;) 天才は環境とは無関係に生まれつき才能を持っているからこそ天才である)
  6. 観測結果の寄り好み…都合の良い場合ばかりを数える、またはアタリを数えてハズレを忘れる
    例:この売り場で売られた宝クジの中から当たりクジが2本も出た。 だからこの売り場の宝クジは当たりやすい。 (宝クジが沢山売れる売り場ほど当たりクジも沢山売れるから、その売り場から当たりクジが何本も出ることになる。 しかし外れクジも同じように沢山売れるから、その売り場から外れクジも沢山出る。 結局のところ宝クジの当たりやすさ、つまり1枚の宝クジが当たる確率はどの売り場でも同じである。(^^;))
    例:バクチに勝った時は家族にお土産を買ってやって自慢するが、負けた時は黙っている。
    例:自分の県から首相が沢山出たことは自慢するが、凶悪犯が沢山出たことは黙っている。
    例:この町の住人の10人に1人は外国人だと言われているが、そんなはずはない。 現に私には100人の知り合いがいるが、その中に外国人は1人もいない。
  7. 統計の誤解…統計学に関する無知や誤解に基づく議論
    例:アイゼンハワー大統領は「アメリカ人の半数は平均以下の知能しか持たない」と知らされて、驚きと警戒の念を表明した。
    例:理科の成績は男の平均値よりも女の平均値の方が悪い。 したがって女は科学者には向かない。 (集団の平均値と集団全体との混同、あるいは集団の平均値と個体のデータとの混同)
    例:短距離走の世界記録はアメリカの選手が保持している。 したがってアメリカ人は世界で一番足が速い。 (最大値と集団全体との混同)
    例:コインを3回投げたら3回とも表が出た。 次はそろそろ裏が出る番だ。
  8. 雨乞い3タ論法…因果関係のこじつけ
    例:雨乞いをした、雨が降った、雨乞いが効いた。 (全く同じ気象条件で雨乞いをしない時、つまり対照実験と比較しない限り雨乞いが効いたかどうかはわからない)
    例:予言者が「今年、日本列島で地震が起こる」という予言をした、地震が起こった、予言が当たった。 (日本列島では地震は1日に数百回以上起こっていて、その中で有感地震は日に数回、震度3以上の大きなものは月に数回起こっている)
    例:女が選挙権を得るまで核兵器は存在しなかった。 ゆえに女に選挙権を与えたのは間違いである。
  9. 相関と因果関係の混同または原因と結果の取り違え…雨乞い3タ論法の親戚
    例:夏場はアルコールの消費量と砂糖の消費量の間に正の相関がある。 したがって、夏場は酒のつまみとして甘いお菓子を好むようだ。 (実際には、暑い夏はビールの消費量と清涼飲料水の消費量がどちらも増加するので、見かけ上、アルコールの消費量と砂糖の消費量の間に正の相関が生じる)
    例:癌患者の数と看護師の数には正の相関がある。 したがって、癌を減らすには看護師を減らせば良い。 (癌患者は看病や治療に手間がかかり、そのために看護師の数が増加するのであって、その逆ではない)
    例:大学以下の教育しか受けてない層と比べると、大学卒業者には同性愛者が多い。 したがって教育は人を同性愛者にする。
    例:白人のノーベル賞受賞者は黒人や黄色人種よりも多い。 したがって白人は他の人種よりも優れている。
  10. 虚偽の二分法…中間の可能性の排除
    例:我々と一緒に戦わない国は悪の枢軸国側の国であり、我々の敵だ。
    例:問題を解決する気がない者は、問題を引き起こしている側の人間だ。
    例:愛国者でないものは非国民だ。
  11. 危険な坂道…「ブレーキが効かない」ともいい虚偽の二分法の親戚、両方ひっくるめて「極論」ともいう
    例:{マンガ|アニメ|テレビ}ばかり見ている子供はバカになる。
    例:TVゲームばかりやっている子供はろくな大人にならない。
    例:学生の理科系離れが進むと我が国の将来は絶望的だ。
    例:男子は家庭科を選択してもしなくてもかまわないが、女子が家庭科を選択しなくなると我が国の将来は大変なことになる。
  12. 証拠隠し…真理の半面しか語らない
    例:夫が会社で働いてお金を稼ぎ、妻はそのお金で養われているのだから、妻は夫の命令に従うのが当然だ。 (この論理の欠陥は家庭をひとつの会社と考え、夫を営業のような外勤職、妻を人事や総務のような内勤職と考えるとわかりやすい。 外勤職が利益を上げるためには内勤職のサポートが必要不可欠であり、両者は対等な関係のはずである)
    例:この町に外国人が沢山住むようになって犯罪の数が増加した。 だから外国人をこの町から排除すべきだ。 (しかし外国人が沢山住むようになって国際交流と異国文化に対する理解が進み、国際化が進んだ面には言及しない。 また犯罪数は人口にある程度比例することを考慮していない)
  13. 逃げ口上…故意に意味をぼかす
    例:「退却」を「転進」と言い換える
    例:「敗戦」を「終戦」と言い換える
    例:愛国心を煽り立て、「正義の戦い」または「テロへの報復」という名前で他の国に戦争を仕掛ける。 (民衆にとって唾棄すべきものとなった古い名前の制度に新しい名前をつけることは、政治家としての重要なテクニックである)
  14. わら人形…「架空の論敵に吠える」ともいう
    例:環境保護論者は人間よりもトキやカブトガニの方を大切にしている。
    例:科学者という連中は生物は単なる偶然でひょっこり出来上がったと考えている。
  15. 関係のない話をする…前提とつながらない不合理な結論を出す
    例:神は偉大なるがゆえに、我が国は栄える。

以上の「トンデモ話でっち上げキット」をうまく使いますと、トンデモ話をもっともらしくでっち上げることができます。 また例として挙げたものはかなり極端なものですので、すぐに欠陥がわかると思いますが、これに類する議論はそれと気づかずに日常生活で行っていると思います。

そのことを考えますと、科学的な議論をするためには、冷静かつ客観的な観察に基づいて細心の注意を払いながら粘り強く丹念な思考をする必要があることがわかると思います。 それをするにはある程度の努力と訓練が必要で、一朝一夕にはいきません。 それに対して似非科学はイメージと思い込み(^^;)だけで議論できます。 そのことが、科学よりも似非科学が世にはびこる大きな要因のような気がします。